"心筋梗塞" などによって、心臓がダメージを受けると、大量の心筋細胞が破壊されることになるが、ヒトを含む哺乳類は失われた心筋細胞を元に戻す自己再生能力を持っていない。
そこで、"胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)の技術" を活用して、"体外で作製した「心筋細胞」を体内に移入する" ことによる「再生医療」に期待が託されている。
なお、こうした "iPS細胞" 活用のアプローチとは異なった、患者本来の心臓内細胞に "遺伝子" を投入して「心筋細胞」へと変化させる新しいアプローチがすでに成功している。
◆ 参照当誌過去の "心筋細胞作製" 関連記事
○ <心臓の心筋以外の細胞に五つの遺伝子を入れて、拍動する心筋細胞に変えることに、慶応大の家田真樹特任講師らが人で成功した。作製効率や安全性を高めて、心筋梗塞(こうそく)などでダメージを受けた心筋を補う治療法の開発につなげたいという/ 急性の心筋梗塞を起こしたマウスの心臓の中で、心筋以外の細胞を心筋細胞に変えることに成功/ 将来的に人でも、心筋梗塞などの患者の心臓に遺伝子をカテーテルで送りこみ、治療に使える可能性がある/ (大きなメリットとして)iPS(人工多能性幹)細胞を使わずに直接、心筋細胞ができれば、細胞移植の必要がなく、がん化のリスクも低い> ( iPS細胞を使わずに"心筋細胞"を作製!慶大成功!"心筋梗塞"治療に遺伝子治療から光!/当誌 2013.07.17 )
今回注目する下記引用サイト記事 : iPS経ず心筋細胞変化の効率が8倍に...慶応大研究チーム/yomiDr. ヨミドクター/2014.06.12 は、上記参照記事での研究の延長線に位置した "続編" としての成果だと理解される。
<皮膚や心臓に含まれる細胞を、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を経ずに効率良く心筋細胞に変化させることに成功したと、慶応大の家田真樹特任講師(循環器内科)らの研究チームが、欧州科学誌「EMBOジャーナル」電子版に11日、発表した。心筋梗塞で傷ついた心臓を再生させる医療の実現に一歩近づく成果/ 家田特任講師らは2010年、マウスの心臓に含まれる「線維芽細胞」に3種類の遺伝子を導入し、直接、心筋細胞に変化させることに成功/ 今回、この3遺伝子に特殊なRNA(リボ核酸)を加えると、心筋細胞に変化する効率が従来の1・2%から9・5%と約8倍になった。人間の細胞では、5種類の遺伝子で線維芽細胞が心筋細胞に変化することが知られている。この5種類に同じRNAを加えると、効率が約12倍に高まった/ iPS細胞からも心筋細胞はできるが、再生医療に用いるには、作った心筋細胞を移植する必要がある> とある。
再生医療における "心筋細胞" の "作製効率" は何故重視されるのであるのか?
理由は、"心筋梗塞、拡張型心筋症" などが重症化すると、一挙に "膨大な数(数億個!)" の "心筋細胞が失われる" からであり、治療タイミングの点からも、長期間を要する自然培養を待つ猶予が与えられていないから、と考えられている。
iPS経ず心筋細胞変化の効率が8倍に...慶応大研究チーム/yomiDr. ヨミドクター/2014.06.12
皮膚や心臓に含まれる細胞を、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を経ずに効率良く心筋細胞に変化させることに成功したと、慶応大の家田真樹特任講師(循環器内科)らの研究チームが、欧州科学誌「EMBOジャーナル」電子版に11日、発表した。心筋梗塞で傷ついた心臓を再生させる医療の実現に一歩近づく成果だ。
家田特任講師らは2010年、マウスの心臓に含まれる「線維芽細胞」に3種類の遺伝子を導入し、直接、心筋細胞に変化させることに成功した。今回、この3遺伝子に特殊なRNA(リボ核酸)を加えると、心筋細胞に変化する効率が従来の1・2%から9・5%と約8倍になった。人間の細胞では、5種類の遺伝子で線維芽細胞が心筋細胞に変化することが知られている。この5種類に同じRNAを加えると、効率が約12倍に高まったという。
iPS細胞からも心筋細胞はできるが、再生医療に用いるには、作った心筋細胞を移植する必要がある。
(2014年6月12日 読売新聞)
今回の上記記事の研究成果は、(1) 「線維芽細胞」を「心筋細胞」に変化させるのが "体内" であること(患者負担が小さい手術!)、(2) その "細胞変化効率" を格段に高めたこと であるに違いない。
これらの改善点こそが、心臓機能を取り戻す「再生医療」実現を促進させる、と期待されるわけである...... (2014.06.13)
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