国民的な課題ともなっている "アルツハイマー病治療" について、今朝の報道番組( NHK総合「おはよう日本」)は、この "最新動向" について3点ほどを伝えていた。
(1) 早期発見のため<鼻の粘膜からアミロイドβを採取>する試み、
(2) <アミロイドβの蓄積を防ぐ物質の研究>と<血液脳関門>という脳血管機能の特殊性、
(3) そして、アミロイドβの蓄積を抑止する<脳にあるILEIというたんぱく質>について、である。
なお、<脳にあるILEIというたんぱく質>については以下を参照。
◆ 参照 当誌過去の "アルツハイマー抑制タンパク質<ILEI>" 関連記事
○ <脳内のタンパク質「ILEI(アイレイ)」がアルツハイマー病の原因物質の生成を妨げ、発症を抑制する効果があることを滋賀医科大分子神経科学研究センターの西村正樹准教授らの研究グループが発見し、4日、英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」の電子版に発表した。副作用リスクの少ない治療薬の開発が期待できるという......同グループは、アルツハイマー病の患者の脳では正常な脳よりILEIが減っている点に着目。培養細胞でILEIを増やすと、分泌されるAβが約30%減ることが判明した。別のタンパク質の分解は正常に進み、副作用の危険性が抑えられた......> ( アルツハイマー抑制タンパク質"ILEI"を発見(滋賀医科大)!副作用回避!治療薬に期待!/当誌 2014.06.06 )
さて、今回注目する下記引用サイト記事 : アルツハイマー病治療・新たな可能性 ( NHK総合[おはよう日本] )/JCC/2014.08.12 - 07:07 および 笠間 睦 は、冒頭の "TV 報道番組"(と以前の放送) の内容概略を伝えてくれているので引用させていただいた。
<認知症の治療に新たな可能性を開く最新の研究/ 認知症の約7割を占めるのがアルツハイマー病/ アミロイドβ この物質は症状がでる約25年前から蓄積を続け発症する 発症前にアミロイドβを発見し治療をはじめようと各国の研究者たちが動き出している/ 早期発見の新たな取り組み......滋賀医科大学・遠山育夫教授は注目したのは鼻の粘膜からアミロイドβを採取し病気になる可能性を調べようとしている/ 現在アルツハイマー病を診断するには脳の画像を撮影したり、脊髄へ注射をしたりする必要があり高額の費用がかかり体の負担も大きいのが現状/ しかし、この綿棒をつかう方法なら誰でも受けられる/ この検査はリスクの高い人を見つけて専門機関に受診させることが狙いとしている/ 国立長寿医療研究センター(愛知・大府)ではアミロイドβの蓄積を防ぐ研究......アミロイドβ同士が結合する仕組みを解明。その結合を化合物で防ぎ分解することにした (薬物が血液脳関門(blood-brain barrier;BBB)を通過できないという課題に取り組み、BBBを通過して脳に移行する薬剤を発見)/ 滋賀医科大学・西村正樹教授は脳にあるILEIというたんぱく質によってアミロイドβが発症しないことが分かった> とある。
【 引用サイト記事 】
アルツハイマー病治療・新たな可能性 ( NHK総合[おはよう日本] )/JCC/2014.08.12 - 07:07
認知症の治療に新たな可能性を開く最新の研究について。
認知症の約7割を占めるのがアルツハイマー病。
これまで根本的な治療薬がなかったが、先月、新たな検査方法の臨床試験が始まり、治療薬の開発の実用化の一歩となっている。
アルツハイマー病の要因となっているのが脳にあるたんぱく質・アミロイドβ。
この物質は症状がでる約25年前から蓄積を続け発症することが分かった。
発症前にアミロイドβを発見し治療をはじめようと各国の研究者たちが動き出している。早期発見の新たな取り組みを紹介。
滋賀医科大学・遠山育夫教授は注目したのは鼻の粘膜からアミロイドβを採取し病気になる可能性を調べようとしている。
現在アルツハイマー病を診断するには脳の画像を撮影したり、脊髄へ注射をしたりする必要があり高額の費用がかかり体の負担も大きいのが現状。
しかし、この綿棒をつかう方法なら誰でも受けられるとしている。
臨床試験は健康な人とアルツハイマー病の患者計50人を呼びかけ病気の診断基準を作るとしている。
この検査はリスクの高い人を見つけて専門機関に受診させることが狙いとしている。国立長寿医療研究センター(愛知・大府)ではアミロイドβの蓄積を防ぐ研究が進められている。
開発のリーダは認知症先進医療開発センター・柳澤勝彦センター長。
柳澤センター長はアミロイドβ同士が結合する仕組みを解明。その結合を化合物で防ぎ分解することにした。
作った化合物は300以上でようやく脳に届く化合物ができたとしている。滋賀医科大学・西村正樹教授は脳にあるILEIというたんぱく質によってアミロイドβが発症しないことが分かった。
臨床試験参加者のコメント。
脳内のアミロイドβの蓄積(2012MassachusettsMedicalSocietyより)、アミロイドβが大きくなる様子(撮影:大阪大学蛋白質研究所後藤祐児教授)、6月科学誌「ネイチャー」を紹介。
写真提供:岐阜大学医学部付属病院。
【 参照 Facebook 記事 】
2014年8月1日に放送されましたNHK総合の「ナビゲーション」におきましては、新たな疾患修飾治療(disease-modifying therapy;DMT)候補などの話題提供がなされました。放送内容を簡単に振り返ってみましょう。
1) 滋賀医科大学の遠山育夫教授
アミロイドβを鼻粘膜で採取=2016年の実用化を目指し、2014年7月に臨床試験(健常者とアルツハイマー病患者で合計50人)が始まった。
従来、アミロイドβの有無を調べるには、PETないしは髄液検査が必要であったが、高額な検査であること、患者への侵襲という課題があった。
脳のアミロイドβが嗅神経を介して鼻粘膜にこぼれており、鼻粘膜のアミロイドβは、綿棒で簡単に採取でき、透明→黄色に着色する度合いでアミロイドβが多さが分かります。どのレベルの着色が有意かを臨床試験で調べるのが目的です。2) 国立長寿医療研究センター・認知症先進医療開発センターの柳澤勝彦センター長、医薬化合物開発室長の河合昭好さんらは、薬物が血液脳関門(blood-brain barrier;BBB)を通過できないという課題に取り組み、BBBを通過して脳に移行する薬剤を発見した。2018年の臨床試験開始を目指している。
3) スタジオコメンテーターとして出演されました岐阜大学医学部の桑田一夫教授は、「先制医療では、病気を発症する前に治療を開始するので、病気のバイオマーカーの確立が重要! そういう観点からすると、遠山育夫教授の研究は重要です」とコメントされておりました。
http://www.gifu-u.ac.jp/news/news/2014/07/entry28-1767.html4) 最後に紹介されましたのが滋賀医科大学・西村正樹准教授らの研究成果でした。
西村正樹准教授らは、γセクレターゼ(http://apital.asahi.com/article/kasama/2013062800009.html)にILEI(アイレイ)が作用するとアミロイドβが作られないことを見出しました。この成果は、アミロイドβが産生されることを防ぐ物質が発見されたとして2014年6月4日付のNatureに掲載されました。
【Hasegawa H, Liu L, Tooyama I, Murayama S, Nishimura M:The FAM3 superfamily member ILEI ameliorates Alzheimer's disease-like pathology by destabilizing the penultimate amyloid-β precursor. Nat Commun. 2014 Jun 4;5:3917. doi: 10.1038/ncomms4917】
( Facebook 笠間 睦 )
"アルツハイマー病" は、<症状がでる約25年前から(アミロイドβの)蓄積を続け発症>するため、"発症を遅らせる!" ために、"蓄積の事実" を "早期発見" し、"治療を開始する" ことに大きな意味がある、と思われる。
その点から、<鼻の粘膜からアミロイドβを採取>するという試みは、コスト面から言っても、多大な意義が見込まれよう...... (2014.08.13)
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