アルツハイマー病/パーキンソン病のような神経変性疾患が警戒されているのは、脳における "ニューロン(神経細胞)" は一度損傷を受けたり、死滅したりするならば、その部分を回復させたり、補ったりすることができないからだ。
だが、そうした "ニューロン(神経細胞)" の再生という課題に関しても、研究面では徐々に進展が図られているようだ。
◆ 参照 当誌過去の "脳の神経幹細胞とニューロン" 関連記事
○ <神経幹細胞は神経の様々な細胞を作るが、ニューロンを作る能力は徐々に衰え回復しない/ 衰えた神経幹細胞を若返らせ、脳などで情報を伝達するニューロン(神経細胞)を再び作り出させることに、慶応大と理化学研究所のチームが成功した/ 神経幹細胞はiPS細胞などで作れるが、そこからニューロンを効率的に作る手法がなく、認知症などの治療や薬づくりの壁になっていた/ マウスの神経幹細胞を使い、ニューロンを作り出す初期の状態で必要なマイクロRNA(リボ核酸)という分子を特定。衰えてニューロンを作らなくなった神経幹細胞でこの分子を働かせると、ニューロンを作る状態に戻った/ この分子を神経幹細胞が残っている海馬などで働かせられれば、記憶回復なども見込めるかもしれない> ( 認知症治療に!衰えた脳の神経幹細胞を若返らせ、"ニューロン"を再び作り出させるか?!/当誌 2014.01.16 )
今回注目する下記引用サイト記事 : 脳への「ニューロン幹細胞」移植に成功:パーキンソン病治療へ/WIRED/2014.08.14 - THU は、<死滅した脳細胞の置き換えができる可能性を示唆する> と評価される<脳への "ニューロン幹細胞" の移植> に成功! という研究成果を報じている。
"パーキンソン病" などを治療する道が開かれるとの期待が生まれている。
<マウスの脳に移植された脳細胞が、6カ月後には完全に機能的に統合されたことが確かめられた。この移植の成功は、死滅した脳細胞の置き換えができる可能性を示唆するもので、パーキンソン病のような神経変性疾患に治療の道が開けるかもしれない/ ルクセンブルグ大学の「Luxembourg Centre for Systems Biomedicine」の幹細胞研究チームが行ったこの実験では、ホストマウスの皮膚細胞をリプログラミングして「誘導ニューロン幹細胞」(induced neuronal stem cells)を作成し、これを脳に移植した/ 脳の海馬と皮質に移植されたこれらの細胞は、新たに形成されたシナプス(ニューロン間の神経活動に関わる接合部位)を介して、6カ月後には、元からある脳細胞と完全に機能的に統合されたという/ 誘導ニューロン幹細胞は、ホストの脳の中で、時間とともに、各種の脳細胞に変化した。具体的には、ニューロン(神経細胞)や、グリア細胞のひとつであるアストロサイト、さらにはオリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)へと変化した/ 移植された脳組織が長期にわたって生き続けるためには、既存の細胞ネットワークとの機能的統合が不可欠だ。移植された細胞は、いくつかの試験でも正常に活動した。マウス本体においても、好ましくない副次的影響は見られなかった/ 研究者チームの次の目標は、パーキンソン病患者の脳の中で死滅していく特定の種類のニューロン、つまり大脳の黒質内にあってドーパミンを分泌しているニューロンを置き換える方法を探すことだ。将来的には、これらのニューロンの移植によって、減少したドーパミンの分泌を回復できる可能性があり、パーキンソン病の有効な治療法になるかもしれない/ ただし、マウスを使った現在の研究から人間の臨床試験へ至るには、まだかなり長い道のりがあることは言うまでもない/ 研究論文は『Stem Cell Reports』に掲載されている> とある。
脳への「ニューロン幹細胞」移植に成功:パーキンソン病治療へ/WIRED/2014.08.14 - THU
マウス実験において、皮膚細胞をリプログラミングしてつくったニューロン幹細胞を脳に移植したところ、6カ月後には完全に機能するようになった。神経変性疾患に治療の道が開けるかもしれない。
TEXT BY OLIVIA SOLON
TTRANSLATION BY MAYUMI HIRAI/GALILEO
WIRED NEWS(UK)
image from Shutterstock
マウスの脳に移植された脳細胞が、6カ月後には完全に機能的に統合されたことが確かめられた。この移植の成功は、死滅した脳細胞の置き換えができる可能性を示唆するもので、パーキンソン病のような神経変性疾患に治療の道が開けるかもしれない。
ルクセンブルグ大学の「Luxembourg Centre for Systems Biomedicine」の幹細胞研究チームが行ったこの実験では、ホストマウスの皮膚細胞をリプログラミングして「誘導ニューロン幹細胞」(induced neuronal stem cells)を作成し、これを脳に移植した。
脳の海馬と皮質に移植されたこれらの細胞は、新たに形成されたシナプス(ニューロン間の神経活動に関わる接合部位)を介して、6カ月後には、元からある脳細胞と完全に機能的に統合されたという。
誘導ニューロン幹細胞は、ホストの脳の中で、時間とともに、各種の脳細胞に変化した。具体的には、ニューロン(神経細胞)や、グリア細胞のひとつであるアストロサイト、さらにはオリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)へと変化した。
移植された脳組織が長期にわたって生き続けるためには、既存の細胞ネットワークとの機能的統合が不可欠だ。移植された細胞は、いくつかの試験でも正常に活動した。マウス本体においても、好ましくない副次的影響は見られなかった。
研究者チームの次の目標は、パーキンソン病患者の脳の中で死滅していく特定の種類のニューロン、つまり大脳の黒質内にあってドーパミンを分泌しているニューロンを置き換える方法を探すことだ。将来的には、これらのニューロンの移植によって、減少したドーパミンの分泌を回復できる可能性があり、パーキンソン病の有効な治療法になるかもしれない。
ただし、マウスを使った現在の研究から人間の臨床試験へ至るには、まだかなり長い道のりがあることは言うまでもない。
研究論文は『Stem Cell Reports』に掲載されている。
脳の機能が "シナプス" に基づく "細胞ネットワーク" で構成されている事実は良く知られている。
この点に関して、"上記記事のニューロン移植" が、
<移植された脳組織が長期にわたって生き続けるためには、既存の細胞ネットワークとの機能的統合が不可欠だ。/脳の海馬と皮質に移植されたこれらの細胞は、新たに形成されたシナプス(ニューロン間の神経活動に関わる接合部位)を介して、6カ月後には、元からある脳細胞と完全に機能的に統合された。>
と述べられている点は、実に素晴らしいと思われた...... (2014.08.17)
コメントする