高齢化社会の進行にあって、"老化" によって引き起こされる様々な疾病の問題が否が応にもクローズアップしている。
その中でも、本来、病気から身を守るはずの "免疫システム" 自体までもが "老化" に至るという現象、"免疫老化" が懸念されてもいる。
以下のとおり、ヒトの "免疫システム" においては "T細胞" が有力な働きをしているわけだが、これらを供給している "胸腺" という臓器そのものが、加齢とともに退縮するとのことで、"免疫老化" という現象は避けられない推移と見なされてきた......。
◆ 参照 当誌過去の "胸腺" 関連記事
○ <日本では高齢化社会のさらなる進行により、免疫システムの老化が引き金となる慢性炎症疾患、がんや感染症などの疾患の増加が危惧されており、対策が急がれています/ 老化に伴って、特に獲得免疫の応答が低下・劣化します。この現象は「免疫老化」と呼ばれ、この免疫老化が、高齢者における慢性炎症疾患(関節リウマチなどの自己免疫疾患)や発がんの増加、易感染性の誘発、ワクチン効率の低下につながる....../ T細胞は胸腺でつくられますが、胸腺は加齢とともに退縮するので、老齢期においては新たなT細胞の供給が減少/ つまり、免疫老化の原因は主としてT細胞自身の過剰な分裂・増殖によって誘導される細胞老化だと考えられます> ( 免疫システムの老化を引き起こす仕組みを発見(愛媛大学)!迫り来る"免疫老化"の危惧!/当誌 2014.04.05 )
ところが、今回注目する下記引用サイト記事 : 世界で初めて臓器を自己再生させることに成功/Gingazine/2014.08.25 - 10:39 は、何と、上述の"胸腺" という臓器を、"世界で初めて自己再生させることに成功!" させたという研究成果について報じているのである。
<機能の衰えた胸腺を人工的に再生できれば、老齢に伴い胸腺が縮小し免疫機能が低下する症状を克服> できるのではないかと、大きな期待が寄せられているようだ。
<分裂・分化することでさまざまな細胞に成長する可能性を秘めた幹細胞から人工的に臓器を作り出す研究が進む中で、正常に機能するよう臓器を自己再生させることに世界で初めてイギリスの研究チームが成功しました。/ 世界初の臓器再生に成功したのはイギリス・エジンバラ大学の研究チームで、この成果はNature Cell Biologyで発表されています。/ エジンバラ大学Medical Research Council centreのクレア・ブラックバーン博士の研究チームは、マウス胚性線維芽細胞(MEF細胞)を遺伝的に改変してFOXN1タンパク質を発現させ免疫作用を持つ胸腺というリンパ器官の幹細胞様組織に導入することで、衰えた胸腺を再生させることに成功しました。この再生した胸腺はT細胞を作り出し正常な臓器として完全に機能したとのこと。/ 今回、エジンバラ大学の研究チームが作り出した胸腺は世界で初めて「正常に機能する」人工の臓器ということになります。/ 世界で初めて臓器を自己再生させることに成功したブラックバーン博士は「とてつもなくエキサイティングなことです」と感想を述べました。/ 胸腺は臓器の中では比較的単純な構造を持つものだと言えますが、この再生技術を他の臓器や人体で用いるためには、細胞の増殖プロセスを制御して癌細胞化することを防ぐ仕組みの開発などが必要であることから時間がかかるとのこと>。しかし、機能の衰えた胸腺を人工的に再生できれば、老齢に伴い胸腺が縮小し免疫機能が低下する症状を克服できたり、生まれながら胸腺が機能しない子どもが骨髄移植をせずに済んだりするため非常に大きな期待が寄せられています。/ ブラックバーン博士は今回の成果について、「非常にエキサイティングな進歩であり、再生医療の広い分野に応用できる可能性がある」と述べており、再生医学のさらなる進歩が期待できそうです。> とある。
世界で初めて臓器を自己再生させることに成功/Gingazine/2014.08.25 - 10:39
分裂・分化することでさまざまな細胞に成長する可能性を秘めた幹細胞から人工的に臓器を作り出す研究が進む中で、正常に機能するよう臓器を自己再生させることに世界で初めてイギリスの研究チームが成功しました。
An organized and functional thymus generated from FOXN1-reprogrammed fibroblasts : Nature Cell Biology : Nature Publishing Group
BBC News - Whole organ 'grown' in world first
世界初の臓器再生に成功したのはイギリス・エジンバラ大学の研究チームで、この成果はNature Cell Biologyで発表されています。エジンバラ大学Medical Research Council centreのクレア・ブラックバーン博士の研究チームは、マウス胚性線維芽細胞(MEF細胞)を遺伝的に改変してFOXN1タンパク質を発現させ免疫作用を持つ胸腺というリンパ器官の幹細胞様組織に導入することで、衰えた胸腺を再生させることに成功しました。この再生した胸腺はT細胞を作り出し正常な臓器として完全に機能したとのこと。
これまでもオーストリアの研究チームがES細胞や皮膚細胞を使って人間の脳細胞を増殖させ成長させることに成功するなど、幹細胞から人工的に臓器の細胞を作ることには成功していましたが、臓器を正常に機能させることはできていませんでした。そのため、今回、エジンバラ大学の研究チームが作り出した胸腺は世界で初めて「正常に機能する」人工の臓器ということになります。
世界で初めて臓器を自己再生させることに成功したブラックバーン博士は「とてつもなくエキサイティングなことです」と感想を述べました。
胸腺は臓器の中では比較的単純な構造を持つものだと言えますが、この再生技術を他の臓器や人体で用いるためには、細胞の増殖プロセスを制御して癌細胞化することを防ぐ仕組みの開発などが必要であることから時間がかかるとのこと>。しかし、機能の衰えた胸腺を人工的に再生できれば、老齢に伴い胸腺が縮小し免疫機能が低下する症状を克服できたり、生まれながら胸腺が機能しない子どもが骨髄移植をせずに済んだりするため非常に大きな期待が寄せられています。
ブラックバーン博士は今回の成果について、「非常にエキサイティングな進歩であり、再生医療の広い分野に応用できる可能性がある」と述べており、再生医学のさらなる進歩が期待できそうです。
確かに、臓器を、"世界で初めて自己再生させることに成功!"、という点も画期的であるには違いない。
だが、ヒトの "免疫老化" を宿命的なものとさせていた "胸腺" という臓器の衰え/消失を、"胸腺の自己再生!" によって覆すというブレイクスルーにはただただ驚くばかりである...... (2014.08.28)
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