"大腸がん" の中でも "直腸がん" は、終生、"人工肛門" と "つき合い" 続けなければならないことに強い抵抗感が持たれ、そして恐れられてもいる。
ただ、近年では、"人工肛門" をつけずに日常生活が送れるまでに回復! を目指した "新しい手術法" も登場している、という。
◆ 参照 当誌過去の "大腸がん" 関連記事
○ <直腸がんと診断された患者Aさん......。がんは肛門に近い場所にできており、肛門まで切除して人工肛門をつけるのが標準的な治療/ 肛門の一部を残すISRという新しい手術法を採用/ 患者は人工肛門をつけずに日常生活を送れるまでに回復/ ISRでこれまで難しかった患者でも肛門を残せるようになった/ 早期の直腸がんだけでなく、ある程度進行して筋肉にまで入った段階でも直腸のすぐ近くなら適用できる/ 肛門の保存を希望する患者にはISRを施す病院も増えつつある/ 他の治療に比べて再発率が高くないこともわかってきた/ 排便機能の維持も実績があがっている> ( 直腸がん:"人工肛門"避け、手術しても"肛門機能"を残す新手法登場!高くない再発率!/当誌 2013.11.04 )
そして、今回注目する下記引用サイト記事 : 人工肛門回避の可能性拡大 直腸がんに究極の手術 括約筋を一部温存/47 NEWS 医療新世紀/2014.10.14 は、そうした "人工肛門回避の手術法/ISR" の実施施設が徐々に増えている現状を伝えている。
<大腸がん全体の4割を占める直腸がん。そのうち肛門に近い下部直腸がんの手術では直腸に加えて肛門も切除し、腹部に永久的な人工肛門(ストーマ)を設けなければならない場合がある。しかし手術後の生活への不安などから、人工肛門に対する患者の抵抗感は大きい。近年、肛門に極めて近い場所のがんでも排便機能を残せる"究極の肛門温存手術"が、一部の専門的な施設で行われるようになった。>
<▽ ISR
2年前の秋だった。スポーツジムで汗を流し、帰り際にトイレに入ると便器が血で染まった。福井県に住む女性Sさん(59)にとって、それは2度目の下血だった。
急きょ受診した自宅近くの胃腸科医院。肛門に指を挿入して調べる直腸診の結果などから、医師が思いがけない病名を口にした。直腸がんだ。
翌日、紹介状を持ち福井大病院 (同県永平寺町)へ。検査結果はやはり直腸がん。しかもがんは肛門にかなり近く、人工肛門が必要かもしれないという。「それだけは嫌」とSさんは泣いた。
Sさんのがんは「ステージⅡ」と呼ばれる段階で、がんが直腸壁の最も外側の層に及んでいたが、リンパ節への転移はなかった。執刀した山口明夫・第1外科教授が選択したのは「括約筋間直腸切除術(ISR)」と呼ばれる最新の手術方法。排便機能に重要な肛門括約筋の一部を残し、人工肛門を回避する。>
<▽ 90年代に開発
山口教授によると、そもそも直腸の手術は、大腸のほかの部位に比べて難しい。直腸は骨盤の奥にあり、ぼうこうや生殖器に囲まれているため、腹部を開いても見えにくい。周辺には排尿や性機能をつかさどる自律神経も集まっている。がんやリンパ節を取り除く際に神経を傷つけると、その後に大きな支障が出る。
昔は大半の下部直腸がんの患者に対し、肛門を含めて直腸を切除する「直腸切断術」が行われていた。直腸は長さ15センチ前後で、下部直腸に当たるのはその半分ほど。「歯状線」と呼ばれる直腸と肛門の境界を越えればわずか2センチ程度で肛門の出口に至るため、当時の技術では肛門だけ温存するのは無理だった。
流れは1980年代に変わった。自動吻合器という手術機器の登場で「低位前方切除術」と呼ばれる方法が広まった。がんが肛門出口から5センチ程度離れていれば、肛門を残したまま直腸を切除できるようになった。
さらに肛門温存の可能性を拡大したのがISRだ。90年代にオーストリアで開発され、日本では最近になって徐々に実施施設が増えてきた。>
<▽ 高い満足度
肛門には自分の意思では動かせない内肛門括約筋と、動かせる外肛門括約筋がある。ISRでは内括約筋を切除して外括約筋は残す。残った外括約筋を意識的に締めることで、排便機能はある程度維持できる。この方法により、肛門出口から2~3センチのがんも人工肛門をつくることなく切除できるようになった。
「便をためる力が弱くなり排便回数が増えることがあるが、患者さんの満足度は高い。局所再発率や生存率も直腸切断術と同程度。導入施設では人工肛門が下部直腸がんの約10%まで減った」と山口教授は解説する。
Sさんも「下痢の時は漏れてしまうこともあるが、人工肛門を避けられてうれしい」と話す。
肛門温存で再発の危険性が高い場合や、高齢で肛門機能自体が低下している場合は、ISRは用いられない。「最近は人工肛門の装具も発達し、生活に不自由はない。決して悲観するものではありません」と山口教授。
ISRは技術的に難しく、現状では実施できる施設が限られる。どう普及させるかが今後の課題だ。(共同通信 赤坂達也)> とある。
人工肛門回避の可能性拡大 直腸がんに究極の手術 括約筋を一部温存/47 NEWS 医療新世紀/2014.10.14
大腸がん全体の4割を占める直腸がん。そのうち肛門に近い下部直腸がんの手術では直腸に加えて肛門も切除し、腹部に永久的な人工肛門(ストーマ)を設けなければならない場合がある。しかし手術後の生活への不安などから、人工肛門に対する患者の抵抗感は大きい。近年、肛門に極めて近い場所のがんでも排便機能を残せる"究極の肛門温存手術"が、一部の専門的な施設で行われるようになった。
▽ ISR
2年前の秋だった。スポーツジムで汗を流し、帰り際にトイレに入ると便器が血で染まった。福井県に住む女性Sさん(59)にとって、それは2度目の下血だった。
急きょ受診した自宅近くの胃腸科医院。肛門に指を挿入して調べる直腸診の結果などから、医師が思いがけない病名を口にした。直腸がんだ。
翌日、紹介状を持ち福井大病院 (同県永平寺町)へ。検査結果はやはり直腸がん。しかもがんは肛門にかなり近く、人工肛門が必要かもしれないという。「それだけは嫌」とSさんは泣いた。
Sさんのがんは「ステージⅡ」と呼ばれる段階で、がんが直腸壁の最も外側の層に及んでいたが、リンパ節への転移はなかった。執刀した山口明夫・第1外科教授が選択したのは「括約筋間直腸切除術(ISR)」と呼ばれる最新の手術方法。排便機能に重要な肛門括約筋の一部を残し、人工肛門を回避する。▽ 90年代に開発
山口教授によると、そもそも直腸の手術は、大腸のほかの部位に比べて難しい。直腸は骨盤の奥にあり、ぼうこうや生殖器に囲まれているため、腹部を開いても見えにくい。周辺には排尿や性機能をつかさどる自律神経も集まっている。がんやリンパ節を取り除く際に神経を傷つけると、その後に大きな支障が出る。
昔は大半の下部直腸がんの患者に対し、肛門を含めて直腸を切除する「直腸切断術」が行われていた。直腸は長さ15センチ前後で、下部直腸に当たるのはその半分ほど。「歯状線」と呼ばれる直腸と肛門の境界を越えればわずか2センチ程度で肛門の出口に至るため、当時の技術では肛門だけ温存するのは無理だった。
流れは1980年代に変わった。自動吻合器という手術機器の登場で「低位前方切除術」と呼ばれる方法が広まった。がんが肛門出口から5センチ程度離れていれば、肛門を残したまま直腸を切除できるようになった。
さらに肛門温存の可能性を拡大したのがISRだ。90年代にオーストリアで開発され、日本では最近になって徐々に実施施設が増えてきた。▽ 高い満足度
肛門には自分の意思では動かせない内肛門括約筋と、動かせる外肛門括約筋がある。ISRでは内括約筋を切除して外括約筋は残す。残った外括約筋を意識的に締めることで、排便機能はある程度維持できる。この方法により、肛門出口から2~3センチのがんも人工肛門をつくることなく切除できるようになった。
「便をためる力が弱くなり排便回数が増えることがあるが、患者さんの満足度は高い。局所再発率や生存率も直腸切断術と同程度。導入施設では人工肛門が下部直腸がんの約10%まで減った」と山口教授は解説する。
Sさんも「下痢の時は漏れてしまうこともあるが、人工肛門を避けられてうれしい」と話す。
肛門温存で再発の危険性が高い場合や、高齢で肛門機能自体が低下している場合は、ISRは用いられない。「最近は人工肛門の装具も発達し、生活に不自由はない。決して悲観するものではありません」と山口教授。
ISRは技術的に難しく、現状では実施できる施設が限られる。どう普及させるかが今後の課題だ。(共同通信 赤坂達也)
"がん治療" において "QOL(生活の質)" の観点が重視され始めている昨今にあっては、医療技術進展のお陰もあり、"直腸がん" 手術で一般的だと見なされてきた "人工肛門" という選択が、かなり "相対化" されてきた模様である。もちろん、"再発・転移" のリスク回避が視野に収められてのことである点は言うまでもない...... (2014.10.21)
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