様々な臓器の細胞が、"iPS細胞" を経由して作製されている今日だ。 と同時に、他方では "iPS細胞" 経由の作製に潜む問題点への懸念を回避するように、別のアプローチでの再生医療向け細胞の作製が試みられている。
◆ 参照 当誌過去の "神経細胞作製" 関連記事
○ <人の皮膚細胞に6種類の化合物を加えて、神経細胞に変化させることに成功。化合物で成功した例はなく、自分の細胞を移植するため、拒絶反応が起こりにくい> ( 人の皮膚細胞から神経細胞作製!化合物加え!拒絶反応が起こりにくい!(京都府立医大)/当誌 2014.00.00 )
今回注目する下記引用サイト記事 : 再生医療向け神経・心臓細胞、iPS使わず効率作製 東大など/日本経済新聞/2015.08.03 - 0:30 は、 <再生医療に使う神経や心臓の細胞を患者の皮膚からiPS細胞を介さずに効率よく作る研究が脚光を浴びている。京都府立医科大学はヒトの皮膚細胞に特殊な化学物質を与え、8割以上の確率で神経細胞に似た細胞に変えた。東京大学はマウスの皮膚細胞へ遺伝子を導入し、心筋の一種に育てた。iPS細胞を培養する手間が省け、これまで数カ月かかるとされた治療の準備期間が数週間に短縮できる可能性があるという> と報じている。
<再生医療に使う神経や心臓の細胞を患者の皮膚からiPS細胞を介さずに効率よく作る研究が脚光を浴びている。京都府立医科大学はヒトの皮膚細胞に特殊な化学物質を与え、8割以上の確率で神経細胞に似た細胞に変えた。東京大学はマウスの皮膚細胞へ遺伝子を導入し、心筋の一種に育てた。iPS細胞を培養する手間が省け、これまで数カ月かかるとされた治療の準備期間が数週間に短縮できる可能性があるという。再生医療の選択肢が広がりそうだ。 国内外で研究が進むのは「ダイレクト・リプログラミング」と呼ぶ技術。皮膚などから取った細胞の性質を化学物質や遺伝子で強引に書き換え、神経や肝臓といった別の細胞に変える。 再生医療では患者の皮膚などをiPS細胞に変え、時間をかけて移植用の細胞に育てる方法が有望視されている。ダイレクト・リプログラミングは目的の細胞を直接に作り、準備を含む治療期間の短縮に道を開く。がんになりにくく、拒絶反応を防げるとの期待もあったが、狙った細胞ができる効率が低かった。 京都府立医科大学のチームは、ヒトの皮膚の細胞に6種類の低分子化合物を与えて3週間培養し、最大で80%以上の確率で神経細胞のような細胞に変化させた。 ヒトの受精卵から様々な細胞ができるなかで、神経細胞になる運命をつかさどる遺伝子を制御する約20種類の化合物から、最適な6種類を選んだ。細胞の運命を決めるスイッチに6種類の化合物が作用し、皮膚細胞が神経細胞のような細胞に育ったとみている。 変化した細胞は軸索という突起が現れ、神経細胞同士をつなぐシナプスのような構造から、神経伝達物質が出ていた。神経の興奮や抑制を促すたんぱく質も見つけた。神経伝達物質を加えるなどして神経細胞かどうかを詳しく調べる計画だ。 化合物を使う同様の手法は従来もあったが、細胞が変化する確率が1%未満だった。今後は脊髄を損傷させたマウスで治療効果を確かめる。5~10年後の実用化を目指す。 東大の竹内純准教授らは、全身に血液を送り出す心臓の心室筋の細胞を、皮膚から作る実験にマウスで成功した。 胎児の背中にある線維芽細胞に4種類の遺伝子を入れて培養したところ、7日後には20%が心室筋の細胞に変わった。従来は3種類の遺伝子だけを導入していたが、ほかの種類の筋肉ができる問題があった。 今後は確率を40~50%に引き上げたうえ、5~6年後にはシート状の心筋を作って臨床研究に入りたい考えだ。将来は心筋梗塞を起こした心臓の治療につなげる。血液を受け入れる心房筋の作製研究も進める。> とある。
再生医療向け神経・心臓細胞、iPS使わず効率作製 東大など /日本経済新聞/2015.08.03 - 0:30
再生医療に使う神経や心臓の細胞を患者の皮膚からiPS細胞を介さずに効率よく作る研究が脚光を浴びている。京都府立医科大学はヒトの皮膚細胞に特殊な化学物質を与え、8割以上の確率で神経細胞に似た細胞に変えた。東京大学はマウスの皮膚細胞へ遺伝子を導入し、心筋の一種に育てた。iPS細胞を培養する手間が省け、これまで数カ月かかるとされた治療の準備期間が数週間に短縮できる可能性があるという。再生医療の選択肢が広がりそうだ。
国内外で研究が進むのは「ダイレクト・リプログラミング」と呼ぶ技術。皮膚などから取った細胞の性質を化学物質や遺伝子で強引に書き換え、神経や肝臓といった別の細胞に変える。
再生医療では患者の皮膚などをiPS細胞に変え、時間をかけて移植用の細胞に育てる方法が有望視されている。ダイレクト・リプログラミングは目的の細胞を直接に作り、準備を含む治療期間の短縮に道を開く。がんになりにくく、拒絶反応を防げるとの期待もあったが、狙った細胞ができる効率が低かった。
京都府立医科大学のチームは、ヒトの皮膚の細胞に6種類の低分子化合物を与えて3週間培養し、最大で80%以上の確率で神経細胞のような細胞に変化させた。
ヒトの受精卵から様々な細胞ができるなかで、神経細胞になる運命をつかさどる遺伝子を制御する約20種類の化合物から、最適な6種類を選んだ。細胞の運命を決めるスイッチに6種類の化合物が作用し、皮膚細胞が神経細胞のような細胞に育ったとみている。
変化した細胞は軸索という突起が現れ、神経細胞同士をつなぐシナプスのような構造から、神経伝達物質が出ていた。神経の興奮や抑制を促すたんぱく質も見つけた。神経伝達物質を加えるなどして神経細胞かどうかを詳しく調べる計画だ。
化合物を使う同様の手法は従来もあったが、細胞が変化する確率が1%未満だった。今後は脊髄を損傷させたマウスで治療効果を確かめる。5~10年後の実用化を目指す。
東大の竹内純准教授らは、全身に血液を送り出す心臓の心室筋の細胞を、皮膚から作る実験にマウスで成功した。
胎児の背中にある線維芽細胞に4種類の遺伝子を入れて培養したところ、7日後には20%が心室筋の細胞に変わった。従来は3種類の遺伝子だけを導入していたが、ほかの種類の筋肉ができる問題があった。
今後は確率を40~50%に引き上げたうえ、5~6年後にはシート状の心筋を作って臨床研究に入りたい考えだ。将来は心筋梗塞を起こした心臓の治療につなげる。血液を受け入れる心房筋の作製研究も進める。
もちろん、"iPS細胞を経由する細胞作製アプローチ" には多大な期待が託されているわけだが、"懸念される点(がん化可能性、拒絶反応、作製時間/コスト......)" も残されている。 再生医療にとっては、上記記事のような "iPS細胞を介さない有望な別な選択肢" も欠かせないに違いない...... (2015.08.05)
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