脳の血流には "特殊な機能" としての、"血液脳関門" という仕組みがある。( 末尾の◆ 参照記事 ) 脳細胞に害を及ぼす可能性のある物質にフィルターをかけて滲入を防ごうとする仕組みである。
ただ、特殊な治療にあっては、この仕組みを不都合だとすることもあるようだ。
今回注目する下記引用サイト記事 : 血管の壁越え脳に薬剤 神経疾患に応用期待/共同通信/2016.11.19 - 07:11 は、 <血液中の物質が脳に行かないよう遮る血管の壁を越え、中枢神経に薬剤を届ける技術を、兵庫県芦屋市の医薬品メーカー「JCRファーマ」が開発した。アルツハイマー病などさまざまな脳の神経疾患の治療薬に応用できる可能性があるという> と報じている。
<......新技術は「J―Brain Cargo(Jブレインカーゴ)」と名付けた。同社は、この技術を使い、特定の酵素が欠けているため細胞内の廃棄物を処理できず神経症状などを起こす難病「ムコ多糖症2型」の治療薬を作った。2017年3月にも臨床試験を始める予定だ> とある。
血管の壁越え脳に薬剤 神経疾患に応用期待/共同通信/2016.11.19 - 07:11
血液中の物質が脳に行かないよう遮る血管の壁を越え、中枢神経に薬剤を届ける技術を、兵庫県芦屋市の医薬品メーカー「JCRファーマ」が開発した。アルツハイマー病などさまざまな脳の神経疾患の治療薬に応用できる可能性があるという。
新技術は「J―Brain Cargo(Jブレインカーゴ)」と名付けた。同社は、この技術を使い、特定の酵素が欠けているため細胞内の廃棄物を処理できず神経症状などを起こす難病「ムコ多糖症2型」の治療薬を作った。2017年3月にも臨床試験を始める予定だ。
◆ 参照記事 <血液脳関門は、毛細血管の内皮細胞の間隔が極めて狭い、あるいは密着結合をしていることによる物理的な障壁であるが、これに加え、中枢神経組織の毛細血管内皮細胞自体が有する特殊な生理的機能、すなわち、グルコースをはじめとする必須内因性物質の取り込みと異物を排出する積極的なメカニズムが関与している。脂肪酸は脳関門を通れないため、脳は通常、脳関門を通過できる(脳細胞内に能動輸送されるのであって自由に通過できるわけではない)グルコースをエネルギー源としている[*]。グルコースが枯渇した場合、肝臓でアセチルCoAから生成されたケトン体も脳関門を通過でき[*]、脳関門通過後に再度アセチルCoAに戻されて脳細胞のミトコンドリアのTCAサイクルでエネルギーとして利用される[*]。血液脳関門の働きにより、中枢神経系の生化学的な恒常性は極めて高度に維持されている。
その一方で、アルコール、カフェイン、ニコチン、抗うつ薬も、脳内へ通過できる[*]。かつては分子量500を超える分子(多くの蛋白質など)や、脂溶性が低い荷電したイオンは脂質二重膜を透過できず、血液循環から中枢神経系の中に入ることができないとされていた(分子量閾値説)が[*]、近年の研究により、脳毛細血管内皮細胞の細胞膜に存在するタンパク質が、脳内から血管へ物質を積極的に排出していることが明らかにされている[*]。こうした毛細血管内皮細胞の機能はリンパ球やマクロファージや神経膠細胞から放出されるサイトカインによってコントロールされ得る。このため、脳炎や髄膜炎のときは血液脳関門の機能は低下する。また、膿瘍その他の感染巣形成や腫瘍といった、よりマクロなレベルの破壊を起こす疾患の存在によっても、血液脳関門は破綻する。
> ( 血液脳関門 - ウィキペディア )"血液脳関門" の機能には相応の根拠があるに違いなかろうが、"その壁" を、"通過させてしまう" ことに伴う "副作用" が、やはり気になると言えば気になる。...... (2016.11.21)
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