"認知症治療薬開発" は、残念ながら現在、"踊り場にある" 、"困難な局面にある" と見られているようだ。
◆ 参照 当誌過去の "認知症治療薬開発" 関連記事
○ 師走のエーザイの株価急落原因は、難しいアルツハイマー新薬開発での芳しくない成績!/当誌 2018.02.07
今回注目する下記引用サイト記事 : 認知症治療薬開発は「2つの壁」を超えられるか 村上 和巳/Forbes JAPAN/2018.02.08 - 08:45 は、 <開発中の認知症治療薬の途中経過成績が不調だったことから昨年12月に株価急落の憂き目を見たエーザイ。その顛末は、「株価を急落させた、エーザイのアルツハイマー薬開発」に書いた。 そもそも日本では2011年7月を最後にアルツハイマー型認知症の新薬は登場していない。そして現在、アルツハイマー型認知症の新薬開発停滞は全世界共通の問題でもある。 ―― 中略 ―― なぜか。実はアルツハイマー型認知症の新薬開発にはいくつかの大きな壁が立ちはだかっている> と報じている。
<...... いまだ原因不明なアルツハイマー型認知症 まず、第1の壁として、アルツハイマー型認知症の原因が完全には特定されていないことがあげられる。現時点でその原因は、「アミロイドβ」や「タウ」と呼ばれるたんぱく質が脳内に異常蓄積し、神経細胞を死滅させることで起きると考えられている。だがその因果関係は明確なエビデンスが得られていない。 病気の進行とともに患者の脳内にこれらのたんぱく質の蓄積が進むため、「これが原因だろう」と推定されているに過ぎない。しかし、実は根本の原因は別にあり、こうしたたんぱく質の蓄積は、その結果併発的に起こっている可能性も否定できないのだ。 ―― 中略 ―― アルツハイマー型認知症では、高血圧症のような明確な指標がない。そもそも診断自体が、患者の物忘れの状況などの医師の問診に加えて、記憶テストや簡単な計算などで認知機能を測定する「認知症スケール」の合計点数で診断を下す。 治療薬の効果判定の一部も、この認知症スケールで評価している。血中成分濃度や血圧値のように、数値基準で測れない以上、他の病気と比べて診断や薬効評価にあいまいさが含まれることは避けられない。つまりアルツハイマー型認知症の新薬開発は、正体のわからない相手に効果のわからない手段で立ち向かう手探りの戦いなのだ。 臨床試験の参加者を見つけにくい 第2の壁は、既存の治療薬で得られたアルツハイマー型認知症の特性が関係している。 ―― 中略 ―― 前駆期の患者は、自分自身はおろか周囲も認知症であると気づかないことが多い。認知症を疑って病院へ診察に訪れることはまずないし、職場や自治体が行う健康診断でも見つけることが難しい。しかも、前述した診断手法ゆえにこうした患者でのアルツハイマー型認知症の診断難易度は上昇する。医師の問診でも、認知症スケールでも、もともと記憶や計算が苦手な人と、その力が低下した人の違いを見つけるのは、かなり難しいからだ。 それゆえに、医師も製薬会社も、治療効果が出しやすい臨床試験に適した人を見つけることが難しい。最終的に臨床試験の枠組みが決定しても、それから必要となる参加者が集まるまでに数年を要することもあるのだ。 運良く臨床試験参加者の募集に成功しても、その効果を調べる臨床試験にも、特有の問題がある。 一般に新薬の臨床試験では、参加者を2群に分け、新薬候補物質と、それに似せた薬効のない偽薬(プラセボ)をそれぞれ投与し、その効果の差を、統計学を使って明らかにする。 ところがアルツハイマー型認知症の場合、進行が緩やかなため、一般的に1年半程度で行われる臨床試験の期間中に、偽薬に比べて明確な効果を確認するのは、他の病気と比べてかなり難しいのだ。 しかも、効果の確認手段は、前述した曖昧さを含む認知症スケールを用いるため、偽薬と比べて明確な効果の差を評価しにくい。認知症スケールの結果は、対象者のその日の体調や気分によっても揺れが大きい。 これらをクリアするとしたら、より多くの患者でより長期間の臨床試験を行わねばならない。しかし、そのコストは極めて膨大なものになるし、製品化がいつまでも進まない。現状はそのような状態になっている。 患者を第一に考えれば、立ちはだかる2つの「壁」が、構造として高すぎるのではないかという考えもある。アルツハイマー型認知症の臨床試験のデザインを組み直し、新薬開発に対する公的支援などの枠組みも検討すべき時期に差し掛かっていると言えるかもしれない> とある。
認知症治療薬開発は「2つの壁」を超えられるか 村上 和巳/Forbes JAPAN/2018.02.08 - 08:45
開発中の認知症治療薬の途中経過成績が不調だったことから昨年12月に株価急落の憂き目を見たエーザイ。その顛末は、「株価を急落させた、エーザイのアルツハイマー薬開発」に書いた。
そもそも日本では2011年7月を最後にアルツハイマー型認知症の新薬は登場していない。そして現在、アルツハイマー型認知症の新薬開発停滞は全世界共通の問題でもある。
―― 中略 ――なぜか。実はアルツハイマー型認知症の新薬開発にはいくつかの大きな壁が立ちはだかっている。
いまだ原因不明なアルツハイマー型認知症
まず、第1の壁として、アルツハイマー型認知症の原因が完全には特定されていないことがあげられる。現時点でその原因は、「アミロイドβ」や「タウ」と呼ばれるたんぱく質が脳内に異常蓄積し、神経細胞を死滅させることで起きると考えられている。だがその因果関係は明確なエビデンスが得られていない。
病気の進行とともに患者の脳内にこれらのたんぱく質の蓄積が進むため、「これが原因だろう」と推定されているに過ぎない。しかし、実は根本の原因は別にあり、こうしたたんぱく質の蓄積は、その結果併発的に起こっている可能性も否定できないのだ。
―― 中略 ―― アルツハイマー型認知症では、高血圧症のような明確な指標がない。そもそも診断自体が、患者の物忘れの状況などの医師の問診に加えて、記憶テストや簡単な計算などで認知機能を測定する「認知症スケール」の合計点数で診断を下す。治療薬の効果判定の一部も、この認知症スケールで評価している。血中成分濃度や血圧値のように、数値基準で測れない以上、他の病気と比べて診断や薬効評価にあいまいさが含まれることは避けられない。つまりアルツハイマー型認知症の新薬開発は、正体のわからない相手に効果のわからない手段で立ち向かう手探りの戦いなのだ。
臨床試験の参加者を見つけにくい
第2の壁は、既存の治療薬で得られたアルツハイマー型認知症の特性が関係している。
―― 中略 ―― 前駆期の患者は、自分自身はおろか周囲も認知症であると気づかないことが多い。認知症を疑って病院へ診察に訪れることはまずないし、職場や自治体が行う健康診断でも見つけることが難しい。しかも、前述した診断手法ゆえにこうした患者でのアルツハイマー型認知症の診断難易度は上昇する。医師の問診でも、認知症スケールでも、もともと記憶や計算が苦手な人と、その力が低下した人の違いを見つけるのは、かなり難しいからだ。それゆえに、医師も製薬会社も、治療効果が出しやすい臨床試験に適した人を見つけることが難しい。最終的に臨床試験の枠組みが決定しても、それから必要となる参加者が集まるまでに数年を要することもあるのだ。
運良く臨床試験参加者の募集に成功しても、その効果を調べる臨床試験にも、特有の問題がある。
一般に新薬の臨床試験では、参加者を2群に分け、新薬候補物質と、それに似せた薬効のない偽薬(プラセボ)をそれぞれ投与し、その効果の差を、統計学を使って明らかにする。
ところがアルツハイマー型認知症の場合、進行が緩やかなため、一般的に1年半程度で行われる臨床試験の期間中に、偽薬に比べて明確な効果を確認するのは、他の病気と比べてかなり難しいのだ。
しかも、効果の確認手段は、前述した曖昧さを含む認知症スケールを用いるため、偽薬と比べて明確な効果の差を評価しにくい。認知症スケールの結果は、対象者のその日の体調や気分によっても揺れが大きい。
これらをクリアするとしたら、より多くの患者でより長期間の臨床試験を行わねばならない。しかし、そのコストは極めて膨大なものになるし、製品化がいつまでも進まない。現状はそのような状態になっている。
患者を第一に考えれば、立ちはだかる2つの「壁」が、構造として高すぎるのではないかという考えもある。アルツハイマー型認知症の臨床試験のデザインを組み直し、新薬開発に対する公的支援などの枠組みも検討すべき時期に差し掛かっていると言えるかもしれない。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
上記記事では、"認知症治療薬開発" が停滞する理由として、"「2つの壁」(1)不十分な原因究明!(2)困難な臨床試験" が指摘されている。 そして、難問だと見受けられるこれらゆえに、<アルツハイマー型認知症の臨床試験のデザインを組み直し、新薬開発に対する公的支援などの枠組みも検討すべき時期に差し掛かっている> と述べられている...... (2018.02.08)
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