昨今の "再生医療技術" の進展にはめざましいものがある。 つい先日、当誌ではその分野の一動向である 外傷性脳損傷患者の機能回復へ 再生医療で治験実施/神戸新聞NEXT/2018.02.12 に注目したばかりだ。
◆ 参照 当誌過去の "再生医療 脳" 関連記事
(1) < 交通事故やスポーツなどで脳が傷つき、手や足にまひが残る「外傷性脳損傷」の患者の運動機能回復を目指す再生医療の臨床試験(治験)が、全国5カ所の大学病院で行われている。頭部に小さな穴を開け、脳に幹細胞を注入する方法。脳梗塞患者を対象に同じ幹細胞を脳に注入した米国での治験では、動かなかった腕が上がるようになるなどの報告もある。近畿では唯一、大阪大学病院(大阪府吹田市)で実施されており、治験参加者の募集が間もなく締め切られる。 (山路 進) ......> ( "外傷性脳損傷"患者の運動機能回復へ 再生医療の治験実施!脳損傷分に"幹細胞"注入!/当誌 2018.02.13 )
(2) < "現場主義" という意味深長な言葉を思い起こすが、生物の体内メカニズムにも、"一大事件" が発生した場合には、その "現場近辺" に "鍵となる要因" が自然発生している( c.f. 免疫機能 )という現象が伴うかのようである......> ( "脳梗塞で死んだ細胞"を再生!事件現場(?)の"iSC細胞"で!兵庫医科大、定説覆す!/当誌 2017.01.07 )
今回注目する下記引用サイト記事 : 脳神経学の大発見!「iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)」の移植で「死んだ神経細胞」が再生した!/HEALTH PRESS/2017.01.09 は、昨今の当分野の報道の流れからすれば、やや「振り返る」かたちとなるのだが、上記の関連記事 (2) にある「iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)」を補足的に解説している。 <死んだ神経細胞は再生しない――。それが脳神経学の常識だった。 しかし、兵庫医科大学 先端医学研究所の松山知弘教授、中込隆之准教授らの研究グループは、2009年に脳梗塞の組織の中に神経細胞をつくる細胞があることを発見し、この度、この細胞を培養・移植すると「死んだ神経細胞が再生した」とする基礎研究の成果を発表した(神戸新聞NEXT2016年1月5日)> と報じている。
<......この細胞再生の発見は、「死んだ神経細胞は再生しない」という定説を根底から覆した。研究グループによれば、2年後に臨床試験に入る計画だ。細胞再生研究の成果を見てみよう――。 細胞再生の常識を根底から覆した新発見 細胞再生といえば、iPS細胞を思い出す人が多いだろう。人間の皮膚などの体細胞に少数の因子を導入して細胞を培養すると、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(多分化能)と無限に増殖する能力(増殖能)をもつ多能性幹細胞に変化する。この人工多能性幹細胞がiPS細胞(induced pluripotent stem cell)だ。iPS細胞の作製に世界で初めて成功した京都大学の山中伸弥教授が命名し、ノーベル生理学・医学賞を授賞した。 体細胞が多能性幹細胞に変わることをリプログラミングと言う。 山中教授が見出した因子でリプログラミングを起こす技術は、再現性が高く容易なことから、iPS細胞は、病気の原因の解明、新薬の開発、細胞移植治療などの再生医療に新たな活路を拓いた。 つまり、 iPS細胞がもつ多分化能を活用すれば、様々な細胞を作り出せる。たとえば、糖尿病なら血糖値を調整する能力をもつ細胞を作れる、外傷を傷を負って神経が切断されたなら神経細胞を移植できる。さらに、難治性疾患の患者の体細胞からiPS細胞を作り、神経、心筋、肝臓、膵臓などの細胞に分化させ、患部の状態や機能の変化を探求すれば、病気の原因を解明につながる。 このように、iPS細胞が起こしたブレークスルーは、さまざまな多能性幹細胞の基礎研究を加速させている。今回の松山教授らの研究も、その先駆けとなる成果なのだ。 脳梗塞の患者にiSC細胞を移植すると死んだ神経細胞が再生した 松山教授らは、2009年に脳梗塞の組織の中に神経細胞を作る細胞がある事実をマウスの実験でまず確認し、研究を重ねて来た。2015年には、血管の周囲の細胞が神経細胞に変化する多能性を獲得している事実も確認できた。脳梗塞は脳の血管が詰まり、脳の神経細胞が死滅する疾患だ。 発見された多能性幹細胞は、iPS細胞よりも多能性が低いとされるが、体内で自然に生まれる自家細胞だ。松山教授らは、重症の脳梗塞を起こした患者の脳でも多能性幹細胞の存在を確認し、iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)と名づけた。 iSC細胞の移植は、脳の再生も期待できるため、松山教授らは、既に培養したマウスのiSC細胞をマウスの脳に移植し、正常に機能している状態を確認した。2016年11月に、日本医療研究開発機構の支援を受けてスタートした基礎研究では、ヒトのiSC細胞をマウスに移植し、成果を確かめている。マウスで効果があれば、ヒトへの応用の道も開ける。 iSC細胞はもともとヒトの体内で作られことから、移植してもがん発症のリスクは低い。しかも、脳梗塞に罹った脳は、機能を再生するメカニズムが強いため、再生治療に新たなエビデンスが構築される可能性が高い。 骨髄細胞やhNT細胞でも、脳梗塞の再生治療が実現か! このような再生医療のポテンシャリティは限りなく大きいが、脳梗塞の再生医療の画期的なエポックはまだある。 脳梗塞は、脳の血管が閉塞し、血管が栄養を供給している脳細胞が破壊されて起きる。したがって、脳梗塞になった中心部分の脳細胞は保護できない。だが、急性期でも周辺部分に脳細胞の保護・再生が可能な領域(ペナンブラ)がある。この領域の治療を目的とする種々の細胞を用いた再生医療の研究が進んでいる。 1つは骨髄細胞による再生医療だ ―― 中略 ―― もう1つはhNT細胞による再生医療だ ―― 中略 ―― このように、種々の細胞を用いた再生療法の研究が進展しているが、多くは基礎研究の段階だ。基礎研究を積み重ね、安全性を確認しながら臨床応用を進めれば、脳梗塞だけでなく、パーキンソン病などの難疾患の再生治療も可能になる。期待しよう。(文=編集部)> とある。
脳神経学の大発見!「iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)」の移植で「死んだ神経細胞」が再生した!/HEALTH PRESS/2017.01.09
死んだ神経細胞は再生しない――。それが脳神経学の常識だった。
しかし、兵庫医科大学 先端医学研究所の松山知弘教授、中込隆之准教授らの研究グループは、2009年に脳梗塞の組織の中に神経細胞をつくる細胞があることを発見し、この度、この細胞を培養・移植すると「死んだ神経細胞が再生した」とする基礎研究の成果を発表した(神戸新聞NEXT2016年1月5日)。
この細胞再生の発見は、「死んだ神経細胞は再生しない」という定説を根底から覆した。研究グループによれば、2年後に臨床試験に入る計画だ。細胞再生研究の成果を見てみよう――。
細胞再生の常識を根底から覆した新発見
細胞再生といえば、iPS細胞を思い出す人が多いだろう。人間の皮膚などの体細胞に少数の因子を導入して細胞を培養すると、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(多分化能)と無限に増殖する能力(増殖能)をもつ多能性幹細胞に変化する。この人工多能性幹細胞がiPS細胞(induced pluripotent stem cell)だ。iPS細胞の作製に世界で初めて成功した京都大学の山中伸弥教授が命名し、ノーベル生理学・医学賞を授賞した。
体細胞が多能性幹細胞に変わることをリプログラミングと言う。 山中教授が見出した因子でリプログラミングを起こす技術は、再現性が高く容易なことから、iPS細胞は、病気の原因の解明、新薬の開発、細胞移植治療などの再生医療に新たな活路を拓いた。
つまり、 iPS細胞がもつ多分化能を活用すれば、様々な細胞を作り出せる。たとえば、糖尿病なら血糖値を調整する能力をもつ細胞を作れる、外傷を傷を負って神経が切断されたなら神経細胞を移植できる。さらに、難治性疾患の患者の体細胞からiPS細胞を作り、神経、心筋、肝臓、膵臓などの細胞に分化させ、患部の状態や機能の変化を探求すれば、病気の原因を解明につながる。
このように、iPS細胞が起こしたブレークスルーは、さまざまな多能性幹細胞の基礎研究を加速させている。今回の松山教授らの研究も、その先駆けとなる成果なのだ。
脳梗塞の患者にiSC細胞を移植すると死んだ神経細胞が再生した
松山教授らは、2009年に脳梗塞の組織の中に神経細胞を作る細胞がある事実をマウスの実験でまず確認し、研究を重ねて来た。2015年には、血管の周囲の細胞が神経細胞に変化する多能性を獲得している事実も確認できた。脳梗塞は脳の血管が詰まり、脳の神経細胞が死滅する疾患だ。
発見された多能性幹細胞は、iPS細胞よりも多能性が低いとされるが、体内で自然に生まれる自家細胞だ。松山教授らは、重症の脳梗塞を起こした患者の脳でも多能性幹細胞の存在を確認し、iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)と名づけた。
iSC細胞の移植は、脳の再生も期待できるため、松山教授らは、既に培養したマウスのiSC細胞をマウスの脳に移植し、正常に機能している状態を確認した。2016年11月に、日本医療研究開発機構の支援を受けてスタートした基礎研究では、ヒトのiSC細胞をマウスに移植し、成果を確かめている。マウスで効果があれば、ヒトへの応用の道も開ける。
iSC細胞はもともとヒトの体内で作られことから、移植してもがん発症のリスクは低い。しかも、脳梗塞に罹った脳は、機能を再生するメカニズムが強いため、再生治療に新たなエビデンスが構築される可能性が高い。
骨髄細胞やhNT細胞でも、脳梗塞の再生治療が実現か!
このような再生医療のポテンシャリティは限りなく大きいが、脳梗塞の再生医療の画期的なエポックはまだある。
脳梗塞は、脳の血管が閉塞し、血管が栄養を供給している脳細胞が破壊されて起きる。したがって、脳梗塞になった中心部分の脳細胞は保護できない。だが、急性期でも周辺部分に脳細胞の保護・再生が可能な領域(ペナンブラ)がある。この領域の治療を目的とする種々の細胞を用いた再生医療の研究が進んでいる。
1つは骨髄細胞による再生医療だ
―― 中略 ――
もう1つはhNT細胞による再生医療だ
―― 中略 ――
このように、種々の細胞を用いた再生療法の研究が進展しているが、多くは基礎研究の段階だ。基礎研究を積み重ね、安全性を確認しながら臨床応用を進めれば、脳梗塞だけでなく、パーキンソン病などの難疾患の再生治療も可能になる。期待しよう。
(文=編集部)
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
上記記事で説明されている <発見された多能性幹細胞は、iPS細胞よりも多能性が低いとされるが、体内で自然に生まれる自家細胞だ。松山教授らは、重症の脳梗塞を起こした患者の脳でも多能性幹細胞の存在を確認し、iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)と名づけた> という "多能性幹細胞" の詳細が分からないため何とも言えないのであるが、治療用に脳に注入すると言われる <"健康な人の骨髄から採取した間葉系幹細胞">( 冒頭の関連記事(1) より ) と、冒頭の関連記事(2) で松山教授らが名づけた "iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)" とは、同じものと見なして差し支えないのであろうか。 この "幹細胞" が "主役" だと思われるだけに、その "厳密な正体" が気になるわけなのである...... (2018.02.21)
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