アルツハイマー病治療薬、安すぎて開発できず!?"国の資金を投じた医師主導の判断は?!

| | コメント(0) | トラックバック(0)

 アルツハイマー病に関する下記記事では、以下のような重要なポイント3点の浮上と、だとしても直面しているのっぴきならない現状が描き出されている。

(1) <タウの蓄積が可視化されることによりアルツハイマー病の診断や治療において「タウの方がアミロイド・ベータに比べて標的として望ましいことがはっきりしてきた」> という点。

(2) リアルなコスト視点の問題から、<アルツハイマー病は発症してからの治療より発症前の予防に研究の焦点が移っている。(開発費などが巨額なため)高価な抗体医薬は多くの人が利用する予防薬としては使えない」からだ> という点。

(3) そして予防医薬としては、何と、"既存薬" から有力な候補が複数挙がっている、という点。

 ところが、<既存薬をこれまでの用途とは異なる病気の治療に転用することを「ドラッグ・リポジショニング(既存薬再開発)」と呼ぶ。リファンピシンをアルツハイマー予防薬にリポジショニングするためにはアルツハイマー病を対象にした効果などをヒトで調べる臨床試験が必要だ> とあり、

 <しかし今のところ試験に乗り出そうという製薬会社はないという。リファンピシンは特許切れでだれでも製造できるため、コストとリスクを払って製薬会社が再開発しても元が取れない恐れがあるためだ> という点。
 なお、理解しがたいのは、次の点なのである。
 <製薬会社による臨床試験が難しいなら、国の資金を投じた医師主導の試験で効果や安全性を確認する手もあるはずだが、どちらの候補物質にも十分な資金が投じられている状況とはいえない>......。


 今回注目する下記引用サイト記事安すぎて開発できず アルツハイマー病治療薬の苦悩 科学記者の目 編集委員 滝順一/日本経済新聞/2018.02.04 - 06:30 は、以下のように、"国民的課題!" が、非常に残念な現状にあることを訴えている。

 安すぎて開発できず アルツハイマー病治療薬の苦悩 科学記者の目 編集委員 滝順一/日本経済新聞/2018.02.04 - 06:30

 アルツハイマー病患者の脳では2種類のたんぱく質が異常に蓄積していることがわかっている。その1つがアミロイド・ベータで脳に沈着して老人斑を作り、もう1つのタウは神経細胞内に凝集して神経細胞を殺してしまうアミロイド・ベータを標的にした治療薬の実用化が世界的に苦戦するなか、タウを狙った薬の開発に注目が集まるが、その先駆者たちは「薬の値段」の壁にぶつかっている

■マウスで記憶障害の改善効果を確認

 新しい診断薬を使うと、臨床症状に適合した場所タウの凝集がはっきり見える(提供は量子科学技術研究開発機構・放射線医学総合研究所)

 「タウたんぱく質の病変を可視化できる陽電子放射断層撮影(PET)用診断薬を世界に先駆けて実現する」と、量子科学技術研究開発機構・放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部の樋口真人チームリーダーは話す。

 タウは細胞内の物質輸送に関係するたんぱく質で、どんな細胞にも存在するが、アルツハイマー病をはじめいくつかの脳神経系の病気ではタウが過剰にリン酸化し細胞内に蓄積することがわかっている。糸くずがからみあったようなかたまり(神経原線維変化)となり細胞死を招く―― 中略 ――

 タウの蓄積が可視化されることによりアルツハイマー病の診断や治療において「タウの方がアミロイド・ベータに比べて標的として望ましいことがはっきりしてきた」と大阪市立大学の富山貴美准教授は言う。タウの蓄積場所臨床症状一致するからだ。例えば、記憶障害の患者では記憶に関連した海馬や側頭葉にタウの蓄積がみられ、言語障害では側頭葉、頭頂葉にみられる

 富山准教授はタウが過剰にリン酸化されて「タウオリゴマー(重合体)」をつくることが病変の端緒だとみて、タウのリン酸化を抑える抗体を帝人ファーマと共同開発した。「Ta1505」と名付けた抗体タウ病変を発症するマウスに投与すると、神経原線維変化を抑制し記憶障害を改善する効果があることを確かめた

 帝人は17年にこの抗体技術の開発・製造・販売権を製薬大手の米メルクに供与した。メルクが人間での臨床試験を実施し実用化に持ち込めるかが注目される


治療から予防へ 安価な既存薬の転用を目指すも...

 その後、富山准教授は安全性がすでに確認されている既存の医薬品や食品に含まれる成分からタウ病変に効く候補物質を探す方向に転じ、これまでにリファンピシンという抗生物質がマウスでの実験で認知機能の改善効果があることを見つけた

 アルツハイマー病は発症してからの治療より発症前の予防に研究の焦点が移っている。(開発費などが巨額なため)高価な抗体医薬は多くの人が利用する予防薬としては使えない」からだ

 リファンピシンは結核などに効く薬で値段も安くジェネリック医薬品として提供されている。富山准教授の狙いを満たす候補だ。肝障害の副作用があることがわかっているが、長期間の投与のためには経口投与を避け、経鼻投与で脳に到達するようにし肝臓に負担をかけないようにすればよいと考えられる

 既存薬をこれまでの用途とは異なる病気の治療に転用することを「ドラッグ・リポジショニング(既存薬再開発)」と呼ぶ。リファンピシンをアルツハイマー予防薬にリポジショニングするためにはアルツハイマー病を対象にした効果などをヒトで調べる臨床試験が必要だしかし今のところ試験に乗り出そうという製薬会社はないという。リファンピシンは特許切れでだれでも製造できるため、コストとリスクを払って製薬会社が再開発しても元が取れない恐れがあるためだ

 学習院大学の高島明彦教授はリン酸化したタウが凝集するプロセスを邪魔することにより神経原線維変化を抑制し神経細胞の死滅を妨げる薬を狙っている

 約6600もの化合物を試した結果、「イソプロテレノール」という物質がタウの凝集阻害に効果があることをマウスの実験で突き止めた。イソプロテレノールもぜんそくなどの治療に広く使われている既存薬だ。心拍をあげる副作用が知られているため人間での長期の使用には投与法を工夫しなければならないが、病気の進行を食い止める効果が期待できる

 「臨床試験で試してみたいと思うのだが、取り組んでくれる製薬会社はない」と高島教授は言う。ここでもリファンピシンと同様に、安価な既存薬であるがゆえに製薬会社の新規用途への開発意欲が失われている。薬が高コストすぎて開発できないのではなく、安すぎてつくれないというのは皮肉な話だ

 製薬会社による臨床試験が難しいなら、国の資金を投じた医師主導の試験で効果や安全性を確認する手もあるはずだが、どちらの候補物質にも十分な資金が投じられている状況とはいえない

タウへの注目遅れた日本 研究資金が不足

 アルツハイマー病治療薬の研究はこれまで主にアミロイド・ベータを標的に進められてきた。世界的にそうだったが、アミロイドの沈着があっても神経細胞が死なないケースもあることがわかり、海外ではタウを標的にした研究に切り替わる傾向が10年以上前からみえていた。またアミロイド・ベータの沈着が進んで病気の症状が出てからでは治療は間に合わないことがわかりアルツハイマー病は治療から発症前の予防に重点が置かれるようになった

 日本国内ではタウへの注目が遅れた結果、アミロイド・ベータに比べタウには研究資金がまわらない状況が続いているようだ。研究の方向性を見直す時期にあるのかもしれない

( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)

 上記記事における "「ドラッグ・リポジショニング(既存薬再開発)」" 推進役が、<国の資金を投じた医師主導の試験> しかないことは言うまでもない。 こんなケースこそ、"国の資金" の出番であり、その結果が、"医療財政の救済" にもつながるに違いない...... (2018.02.04)













【 SE Assessment 】 【 プロジェクトα 再挑戦者たち 】








トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: アルツハイマー病治療薬、安すぎて開発できず!?"国の資金を投じた医師主導の判断は?!

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://adhocrat.net/mt/mt-tb.cgi/4034

コメントする

2020年11月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          














関連サイトへのリンク


  • 電子書籍(eBooks)制作にフォーカスしたサイト
  • 明けない夜はないことを確信するサイト
  • Green(地球環境改善)にフォーカスしたサイト
  • ソフトウェア技術者やSEのための評価と育成、人事考課制度を考えるサイト
  • さまざまな業種・業態でご利用可能なモバイル活用の予約システム!
  • 創作小説『海念と保兵衛』のサイト
  • 創作小説『かもめたちの行方』のサイト
  • 当ブログ推奨の商品を展示したAmazon ストアー!
  • 当AdhocBlogブログの過去のエントリー
  • 株式会社アドホクラット当時のサイト

★売れ筋! No.1!
家庭用"放射線測定器"

日本通信 bモバイルWiFi ルータ+1 ヶ月定額SIM BM-U300W-1M
価格:¥ 20,208
国内配送料無料 Amazon





このブログ記事について

このページは、yasuo hiroseが2018年2月 5日 00:01に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は、
 「1回飲むだけの新インフルエンザ治療薬"ゾフルーザ(塩野義製薬)"が発売される見通し!
です。

次のブログ記事は、
 「認知症の、前頭側頭葉変性症とアルツハイマー病が有する共通の病態を発見! "タウ"!
です。

最近のコンテンツは、
 インデックスページ
で見られます。

過去に書かれたものは、
 アーカイブのページ
で見られます。

年月別アーカイブ

最近のトラックバック