認知症のうちで多くの比率を占めるアルツハイマー病の原因物質としては、<タウの方がアミロイド・ベータに比べて標的として望ましい> という指摘について、昨日、注目した。
◆ 参照 当誌過去の "タウ" 関連記事
(1) <タウの蓄積が可視化されることによりアルツハイマー病の診断や治療において「タウの方がアミロイド・ベータに比べて標的として望ましいことがはっきりしてきた」......> ( アルツハイマー病治療薬、安すぎて開発できず!?"国の資金を投じた医師主導の判断は?!/当誌 2018.02.05 )
(2) <国内機関が新たなターゲットと注目したのがタウたんぱく質だ。量研機構や順天堂大、学習院大などは「タウコンソーシアム」を昨年設立した。日本発の治療薬と診断法の開発を目指す......> ( "アルツハイマー病" 日本発技術で創薬に期待!原因物質(タウたんぱく質)抑制で新戦略/当誌 2017.05.03 )
今回注目する下記引用サイト記事 : 前頭側頭葉変性症とアルツハイマー病が有する共通の病態を発見 は、 <東京医科歯科大学は1月30日、新規に作成した前頭側頭葉変性症のモデルマウスを用いて、病態早期に生じるタウタンパク質リン酸化が、シナプス障害を通じて認知症状を引き起こしていることを明らかにしたと発表した。この研究成果は、同大難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループと、東京大学の宮野悟教授、名古屋大学の貝淵弘三教授らと共同研究によるもの。国際科学「Nature Communications」オンライン版に掲載されている> と報じている。
<......アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、レヴィー小体型認知症の3大認知症は、高齢化社会の日本で大きな社会問題となっている。これらの3大認知症には遺伝の影響が強い家族性認知症と遺伝的要素が目立たない孤発性認知症があるが、家族性前頭側頭葉変性症の中では、タウ(tau)とプログラニュリン(PGRN)の遺伝子変異の頻度が比較的高いと言われている。 ―― 中略 ―― これらの3大認知症については、根本的な治療法(病態修飾治療法:DMT)が確立されてない。 ―― 中略 ―― 研究グループは、新たに作成した変異プログラニュリン遺伝子を持つノックインマウスより採取した大脳組織を用いて、経時的に網羅的リン酸化プロテオーム解析を実施。その結果、TDP43タンパク質の脳内凝集が見られる以前に、タウタンパク質の203番目アミノ酸(Ser203)のリン酸化の異常増加が脳内で検出されたという。さらに解析を進めたところ、この203番目セリンがリン酸化したタウタンパク質(pSer203タウタンパク質)は、ヒト前頭側頭葉変性症患者脳でも確認され、神経細胞のシナプスに局在していたとしている。このような異常リン酸化タウタンパク質のシナプスへの局在は、アルツハイマー病モデルでも報告されており、シナプスを障害して認知症状につながることが示唆されている。そこで、タウタンパク質のAAVノックダウンベクターを用いて変異プログラニュリンノックインマウスの遺伝子治療を行ったところ、減少していたシナプスの数が正常化し、認知障害の症状も改善したという。 ―― 中略 ―― 今回の研究より、アルツハイマー病と同様にタウタンパク質を治療開発の標的分子とする戦略が前頭側頭葉変性症においても適応可能であることが示唆され、具体的な治療手法を複数提示された。研究グループは、「現在の認知症研究の焦点となっている発症前の早期病態解明と早期治療法開発を明確に示した点でも、大きな意義を持つと考えられる」と述べている> とある。
前頭側頭葉変性症とアルツハイマー病が有する共通の病態を発見/QLifePro 医療ニュース/2018.02.05 - 00:00
東京医科歯科大学は1月30日、新規に作成した前頭側頭葉変性症のモデルマウスを用いて、病態早期に生じるタウタンパク質リン酸化が、シナプス障害を通じて認知症状を引き起こしていることを明らかにしたと発表した。この研究成果は、同大難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループと、東京大学の宮野悟教授、名古屋大学の貝淵弘三教授らと共同研究によるもの。国際科学「Nature Communications」オンライン版に掲載されている。
アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、レヴィー小体型認知症の3大認知症は、高齢化社会の日本で大きな社会問題となっている。これらの3大認知症には遺伝の影響が強い家族性認知症と遺伝的要素が目立たない孤発性認知症があるが、家族性前頭側頭葉変性症の中では、タウ(tau)とプログラニュリン(PGRN)の遺伝子変異の頻度が比較的高いと言われている。
―― 中略 ――これらの3大認知症については、根本的な治療法(病態修飾治療法:DMT)が確立されてない。
―― 中略 ――研究グループは、新たに作成した変異プログラニュリン遺伝子を持つノックインマウスより採取した大脳組織を用いて、経時的に網羅的リン酸化プロテオーム解析を実施。その結果、TDP43タンパク質の脳内凝集が見られる以前に、タウタンパク質の203番目アミノ酸(Ser203)のリン酸化の異常増加が脳内で検出されたという。さらに解析を進めたところ、この203番目セリンがリン酸化したタウタンパク質(pSer203タウタンパク質)は、ヒト前頭側頭葉変性症患者脳でも確認され、神経細胞のシナプスに局在していたとしている。このような異常リン酸化タウタンパク質のシナプスへの局在は、アルツハイマー病モデルでも報告されており、シナプスを障害して認知症状につながることが示唆されている。そこで、タウタンパク質のAAVノックダウンベクターを用いて変異プログラニュリンノックインマウスの遺伝子治療を行ったところ、減少していたシナプスの数が正常化し、認知障害の症状も改善したという。
―― 中略 ――今回の研究より、アルツハイマー病と同様にタウタンパク質を治療開発の標的分子とする戦略が前頭側頭葉変性症においても適応可能であることが示唆され、具体的な治療手法を複数提示された。研究グループは、「現在の認知症研究の焦点となっている発症前の早期病態解明と早期治療法開発を明確に示した点でも、大きな意義を持つと考えられる」と述べている。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
"タウタンパク質" をターゲットとした研究の重要性は、以下の二点が指し示している。
(1) アルツハイマー病に加えて、同じ認知症の前頭側頭葉変性症においても、"タウタンパク質" が原因物質かと推断される点、
(2) <現在の認知症研究の焦点となっている発症前の早期病態解明と早期治療法開発を明確に示した点> である...... (2018.02.05)
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