脳の血管には、良くも悪くも、「血液脳関門」と呼ばれるバリアーがある、と言われている。 <細菌や有害物質の侵入を防ぐバリアー> としては有難いのだが、一度、脳内に病気が発症した際に、脳の血管を通じて外部から治療薬などを送り込むことができないという不都合が生じるのだ。 ここから、この "関門" を突破する挑戦がスタートすることになる。
◆ 参照 当誌過去の "血液脳関門" 関連記事
(1) <血液中の物質が脳に行かないよう遮る血管の壁を越え、中枢神経に薬剤を届ける技術を、兵庫県芦屋市の医薬品メーカー「JCRファーマ」が開発した。アルツハイマー病などさまざまな脳の神経疾患の治療薬に応用できる可能性があるという> ( 血管の壁越え脳に薬剤!「J―Brain Cargo(Jブレインカーゴ)」!神経疾患に応用期待!/当誌 2016.11.21 )
(2) <"脳の血管" には、"脳を守るために不必要な物質を通さない構造"(「血液脳関門」)があると言われる。 にもかかわらず、"がん細胞" がスルーして、"がん転移" が引き起こされてしまう> ( "ナノテクノロジー"を使って"脳へのがん転移"治す!"血液脳関門"を通過してがん治療!/当誌 2015.06.12 )
今回注目する下記引用サイト記事 : バイオ医薬品、脳の「関門」突破し治療 日大など/日本経済新聞/2018.10.14 - 06:30 は、 <病気の原因たんぱく質や遺伝子に働きかける抗体や核酸などの「バイオ医薬品」を脳に運んで治療する研究が加速している。日本大学は脳腫瘍に核酸を届ける技術を開発。東京大学は脳が必要な栄養を取り込む仕組みを利用し薬を届ける。いずれも動物実験で効果を確かめた。既存薬は病気の進行を抑える程度だが、新技術は高い治療効果を期待できるという> と報じている。
<......脳の血管には、細菌や有害物質の侵入を防ぐ「血液脳関門」と呼ぶバリアーがある。血管の内側にある細胞同士がぴったりくっつき、必要な栄養素などを除いて入り込まないように制限している。抗体は病気の原因となるたんぱく質を邪魔し、核酸は遺伝子に働きかけてたんぱく質ができるのを抑えることでバイオ医薬品として治療効果が期待できる。ただ、約0.1%しか血液脳関門を突破できない。 日大の金沢貴憲専任講師らは、鼻の奥の神経を通じて脳に薬を運ぶ技術を開発した。たんぱく質の断片などで、直径80ナノ(ナノは10億分の1)メートルのカプセルを作った。>治療に使う核酸をカプセルにくっつけて運ぶ。血管を通らないため、血液脳関門を避けられる。 脳腫瘍のラットで試すと、生存期間が7割ほど延びた。投与したカプセルの2%が脳に届いており、効果を発揮したとみている。全身の筋肉が次第に動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)やアルツハイマー病などの難病を対象に、5年後に医師主導の臨床試験(治験)開始を目指す。 東大の片岡一則名誉教授と安楽泰孝特任助教らの技術は、脳が栄養素の糖を取り込む原理を利用し、薬を糖と間違えさせて血液脳関門を突破する。直径30ナノメートルのカプセルに糖をくっつけ、中には認知症の原因物質を捕まえる抗体などを入れる。マウスに投与したところ、6%が脳に届いた。3年以内にアルツハイマー病などで治験を始めたい考えだ。 製薬企業でも同様の研究が進む。中堅製薬のJCRファーマは全身にさまざまな症状が出る難病のハンター症候群について、最終段階の第3相の治験を始めた。血管の内皮細胞の表面にあって物質の移動を制御する受容体に結合する成分を作り、治療に使う酵素を関門の内部へ運ぶ。2019年度に製造販売の承認を国に申請をする。 先進国や東アジアで高齢化が進み、認知症や神経疾患の患者が増える見通しだ。脳に抗体や核酸医薬を運んで認知症などを治療できれば、医療費や介護費の大幅な抑制につながる> とある。
バイオ医薬品、脳の「関門」突破し治療 日大など/日本経済新聞/2018.10.14 - 06:30
病気の原因たんぱく質や遺伝子に働きかける抗体や核酸などの「バイオ医薬品」を脳に運んで治療する研究が加速している。日本大学は脳腫瘍に核酸を届ける技術を開発。東京大学は脳が必要な栄養を取り込む仕組みを利用し薬を届ける。いずれも動物実験で効果を確かめた。既存薬は病気の進行を抑える程度だが、新技術は高い治療効果を期待できるという。
脳の血管には、細菌や有害物質の侵入を防ぐ「血液脳関門」と呼ぶバリアーがある。血管の内側にある細胞同士がぴったりくっつき、必要な栄養素などを除いて入り込まないように制限している。抗体は病気の原因となるたんぱく質を邪魔し、核酸は遺伝子に働きかけてたんぱく質ができるのを抑えることでバイオ医薬品として治療効果が期待できる。ただ、約0.1%しか血液脳関門を突破できない。
日大の金沢貴憲専任講師らは、鼻の奥の神経を通じて脳に薬を運ぶ技術を開発した。たんぱく質の断片などで、直径80ナノ(ナノは10億分の1)メートルのカプセルを作った。>治療に使う核酸をカプセルにくっつけて運ぶ。血管を通らないため、血液脳関門を避けられる。
脳腫瘍のラットで試すと、生存期間が7割ほど延びた。投与したカプセルの2%が脳に届いており、効果を発揮したとみている。全身の筋肉が次第に動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)やアルツハイマー病などの難病を対象に、5年後に医師主導の臨床試験(治験)開始を目指す。
東大の片岡一則名誉教授と安楽泰孝特任助教らの技術は、脳が栄養素の糖を取り込む原理を利用し、薬を糖と間違えさせて血液脳関門を突破する。直径30ナノメートルのカプセルに糖をくっつけ、中には認知症の原因物質を捕まえる抗体などを入れる。マウスに投与したところ、6%が脳に届いた。3年以内にアルツハイマー病などで治験を始めたい考えだ。
製薬企業でも同様の研究が進む。中堅製薬のJCRファーマは全身にさまざまな症状が出る難病のハンター症候群について、最終段階の第3相の治験を始めた。血管の内皮細胞の表面にあって物質の移動を制御する受容体に結合する成分を作り、治療に使う酵素を関門の内部へ運ぶ。2019年度に製造販売の承認を国に申請をする。
先進国や東アジアで高齢化が進み、認知症や神経疾患の患者が増える見通しだ。脳に抗体や核酸医薬を運んで認知症などを治療できれば、医療費や介護費の大幅な抑制につながる。
<先進国や東アジアで高齢化が進み、認知症や神経疾患の患者が増える見通しだ。脳に抗体や核酸医薬を運んで認知症などを治療できれば、医療費や介護費の大幅な抑制につながる> とあるとおり、上記記事のごとく <「血液脳関門」と呼ぶバリアー> をコントロール可能とするならば、そのメリットは多大だ...... (2018.10.15)
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