今朝は朝一番から大工仕事をすることになった。正確に言えば、屋外のちょっとした電気工事である。
それというのも、つい最近、近所の家に荒っぽい空き巣ねらいの事件が発生したため、予防のために裏庭付近に赤外線感知灯を付けることにしたからだ。泥棒の話は、近所の奥さん連中の口コミで家内にも届き、日頃薄暗がりになってしまう裏庭付近に明かりが欲しいということになったのである。
かつて、玄関方面向けに取り付けていた赤外線感知灯を、配線を延長して裏庭付近に移動することにした。この赤外線感知灯は、センサーがついていて人影などの動きを感知したらライトを照らすというものである。ただ、庭に放し飼いにしている犬(レオ)が庭の中をチョロチョロと動き回るたびに、その動きに反応して杓子定規にも照明されてしまうのが如何なものかということになり、休眠させていたのだった。
もうだいぶ使用せずに放置していたため、傷み始めていたことと、大型の脚立を必要とする高い場所への取り付け工事であったことから、予想を上回る工数となってしまった。まして、出勤前の作業なので、何となく気が急き、おまけに朝から蒸し暑い天候ときて、あまり気持ちの良い作業とは言えなくなってしまった。
が、どうにか目論見どおりの出来栄えに仕上げることができた時は、予定よりも一時間程度のオーバーとなっていた。所定の箇所付近を通ると、まぶしいほどの照明がきちんと点灯した。レオを通らせてみたが、反応しなかった。まずまずの仕掛けが完成した。
それにしても、前述の泥棒は、住人が外食に出かけた隙に、雨戸を外しガラスを割って侵入したとのことである。そして、家の中を荒らし放題に荒らしまくっていったそうだ。あちこちで殺人事件やその他の不穏な事件が発生している折り、空き巣ねらいも「みんなで渡れば怖くない」風に罪意識を薄め始めているのかもしれない。
わたしは以前、駐車中のクルマを車上荒らしされたことがあった。クルマに戻った時、社内が異様に散らかっており、一瞬「そんな馬鹿な!」と思ったが、やられていたのだった。手口は、後部座席の後方の小さな窓のガラスをぶち破り侵入する荒っぽい本格的な仕業だった。それで、助手席に置いたアタッシュケース風の大きなカバンが持ち去られていた。中のめぼしいものは、銀行カード類とパスポート、コンパクト・カメラなどであった。財布は持ち歩いていたので無事であった。とりあえず、交番に届け出たが、何と、同日に町田街道沿いの駐車場で連発していたとのことであった。
自宅に戻ったあとは、早速、銀行カード類の運用差し止め手続きをとった。が、無性に腹が立ってその晩は寝つかれなかったのを覚えている。
翌日、現場に出向いてみた。と、明るい現場に立った時、その周囲の環境が目に入ってきた。駐車場のちょっと奥は、背丈のある野菜類が植えられた畑となっていた。わたしは、その畑の方に足が向いた。あくまでもフラフラとであった。ひょっとして、証拠となってしまう大きなカバンなどは、中身を漁ったあとこんなところに放り出すのではないかという直感めいたものが働いたのかもしれなかった。
と、その時、トマトの苗の足元の草むらに見覚えのある色のカバンの一角が頭を出していたのである。何とも言えない興奮した感情がこみ上げてきた。近寄ってみると、まさしくわたしのカバンであった。合掌屋根のような半開き状態となり、中身がその下に散乱していた。この時ほど、自分の半分無意識めいた推理にゾクゾクとしたことはなかった。
本や、書類の類は夜露を吸って膨らんでしまっていた。が、銀行カード類やパスポートも無事であり、どうも持ち去ったものはさして高価だとも言えないコンパクト・カメラくらいのものであった。さぞかし、泥棒(たち)もがっかりしたのではなかろうか。ずっしりと重い、見てくれはりっぱなカバンなのに、重さの大半はわけのわからない書籍や書類関係で、カネ目のものはカメラだけか……と。
結局、ガラスの修理を含めて、被害は最小に抑えることができたのは幸いであった。その後、車内にカバン類を置く場合も外から見えないようにする注意を忘れないことにしたものだ。また、クルマもいつもピカピカという状態ではない方がいいとも考えたりした。とにかく、見栄を張るのは論外であるが、そうでなくとも無用にその種の者たちの盗癖を刺激しないに越したことはないようだ。むしろ質素にみすぼらしくして、郵便箱に「札」でも投げ入れてやるかという心境にさえさせるのが、この物騒なご時世の処世術なのかもしれない…… (2003.07.01)