日本列島を極上の「寒波」が襲っているらしい。冷たい風が吹いていることと、西方に望める山々が格段に鮮明な姿を見せていることで、まさしく寒波が到来しているのだという実感が深まる。
ところが、こんな日に今日はほぼ一日戸外の寒さにさらされる段取りとなってしまった。ひっくるめて言えば、過去の積もり積もった「澱(おり)」を処分する作業だと言える。
ひとつが、これまで事務所で使用してきたPCのブラウン管型モニターを廃棄処分にすることである。場所を取らず、消費電力も小さな液晶モニターが一般的となった今時、もはやブラウン管型モニターでもないはずなのである。十台近い台数の古いモニターを、一気に廃棄処分にしようということにしたのだが、これがまた厄介なのである。リサイクル処理法制定後、やたらに捨てることはできないし、まして企業という立場であるとさらに厳しいことになる。結局、調査の末、とある廃棄物処理業者のところまで運送しなければならないということになった。
そこで、さし当たって仕事のスケジュールに追われていないわたしが、1トン積みのトラックをレンタルして若い者と運び込むことにしたのだった。
ただ、せっかくトラックをレンタルするならモニターを運ぶだけではもったいないと感じ、自宅の庭や物置に退避させていた仕事関係のガラクタも処分しようということになり、こうして朝一番から「小さな引越し」のような作業スタイルとなったのだ。
トラックが向かった先は、モニターなどを専門に処理する廃棄物処理業者と、その他一般のゴミを処理する公営のリサイクル・センターの二箇所となり、距離の離れたそれらへと寒空の下、トラックを走らせたのであった。
それにしても、昨今は、モノを処分するということにも、相応のコストと労力を必要とする時代となったものである。実際、各人が勝手にモノを捨てて知らん顔をしていては始末に負えない事態となるのだから当然といえば当然のことなのだろう。
ところで、これで寒空の下の作業が終わったわけではなかったために、今日は身体が冷え切ってしまったのである。
実は、昨晩から、自宅のキッチンの流し台の下が、配水管の詰りで惨憺たる状態となっていたのだ。家内が、何とかしてほしいとアラームを上げていて、「トラック運転手」のついでに、下水工事もやっつけ仕事で対処しなければならなかったのだ。
たまには、肉体労働の一日があってもよかろうとイージーに考えていたのである。ところが、こいつがとんでもない「くせもの」であったのだ。
結論から言えば、さんざん試行錯誤を重ねた上で、これは素人の仕事ではないと判断するに至り、「タウンページ」で調べた専門業者を呼び、専門的なツールを駆使して解決することになったのである。
実は、わたしは、排水管の詰りというものを素人考えに高を括っていた。金物ショップで入手した排水管の詰りを除去する「ワイヤー」でそこそこ突いてやれば簡単に「開通」すると思っていたのだ。現に、流し台の下に顔を突っ込み一時間、表の小マンホールに回って一時間、とにかく突っつきまわした。しかも、この寒さの中でである。そして、右往左往すること一時間、計三時間以上も生活汚水のヘドロと闘ったのだが、「ワイヤー」の先でコツコツする手応えは、まさに無情なものでしかなかった。あたかも、「オマエなんぞのドシロートに歯が立つもんじゃないぞ!」と罵られているような感じでさえあった。
で、しょうがなく専門業者に来てもらうことにしたのである。が、それが正解であったことはまもなく否が応でもわかることになったのだ。
ワンボックス・カーに様々な道具類を積み込んで到来した業者は、すぐさま状況認識をかため、颯爽と作業を始めた。積み込んでいるエンジンで水圧をかけたホースと詰まったものを溶かす薬品と、前述の「ワイヤー」の強力なものなどを駆使し始めたのである。
やがて、わたしが驚くようなことが起きた。小マンホール側の排水口から、何と石膏の塊のようなものがゴロゴロと出てきたのである。排水管は直径50ミリだそうだが、その中から、石鹸大の大きさの石のように硬くなった石膏のようなものがまるで手品のように出てきたのにはあきれてしまった。
どうも、それらが排水管のある箇所で幅2〜30センチほどを埋め尽くしていたようなのである。ちょうど、人間の身体でいえば、血管を「血栓」が詰まらせるようにである。また、血管を詰まらせる原因がコレステロールという油であるのと同様に、排水管の内側で石膏のように固まっていた物質の成分も、実は流し台で流された汚水に含まれた油だと、業者は説明していた。
それにしても、年月が重なるとこんな症状になるものかと、ただただ驚かされたものであった。そんなゴツイ物質が「通せんぼ」をしていたのだから、市販の「ワイヤー」でチョコチョコと小突いてもびくともしないわけだったのだ。
結局、出張費込みの全体で3万円を支払うことになって、若干の痛手ではあったが、あの石膏もどきの塊が十数個見せられては、「まっ、しょうがないか」というのが実感なのであった。
この寒い一日、寒さに加えて、肉体疲労も存分に味わうことになったわけで、何気なくついさっきカレンダーを見たら、今日は「仏滅」とあった。なるほどという思い以外ではない…… (2005.02.01)