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"紙の書籍" の静的で孤立的な "読書(孤読)" から、ダイナミックでソーシャルなプロセス/コンテキストとしての"読書体験・読書空間"への脱皮を促す "電子書籍"!


 昨今、"電子書籍" と "SNS / Social Network Service" や "ソーシャル・メディア" との "融合" という視点がクローズアップされているかに思える。
 自分も、"電子書籍" の本質を念頭に置くならば、自然・当然なことではないかと考えるひとりである。

◆ 参照 "あるべき姿の電子書籍"への鍵!"独自アプリビューワ"の解消!/"SNS"との融合!( AdhocBlog 2011.07.16 )

 さらに、積極的な企業の中には、次のようなサービスでこの視点の実現、事業化を進めているのも見受けられる。

―――― <シーサーは、誰でも電子書籍を作成・販売・共有できる電子書籍サービス「forkN(フォークン)」を開始した。名称はUNIX系システムコールのひとつで、プロセスのコピーを生成する「fork(フォーク)」に由来する。......
forkNは、電子書籍の作成・販売と、読書体験を共有するソーシャルリーディングの機能を融合させた電子書籍サービス。ユーザーは完成した作品をforkN内で無料、もしくは有料のどちらかで販売できる。作品が売れた場合は、販売価格の30%が手数料として徴収される。......
また、自分が購入した書籍や現在読んでいるページ、しおり、ふせんコメントを公開する機能を用意。同じ嗜好のユーザーや作者を登録することで、ユーザー同士の情報交換やコミュニケーションを図ることができる。......
「ただ電子書籍を生成、売買するだけじゃなく、情報共有できるのが強み。今後もソーシャル性を高めていくべく、作家同士が共作できる機能や、いわゆる二次創作や三次創作の作品についても検討を重ねていきたい」(シーサー)>
本を介したソーシャル性に注目した電子書籍プラットフォーム「forkN」/Venture Now 編集部/May 25 , 2011 18:15


 では、"電子書籍" は、なぜ、 "SNS" や "ソーシャル・メディア" と "融合" する、あるいはしなければならない理由が潜んでいるのだろうか。
 この辺の事情に踏み込んでおくことは、"電子書籍" 制作者にとって "必須科目" 的情報に触れるほどの意味があるのではなかろうか。

 『電子書籍の衝撃』を著わした佐々木俊尚氏は、いわゆる "ケータイ小説" を対象として、この事情の "プロトタイプ" とも言えそうな実に示唆に富んだ叙述を行っている。
 <*ケータイ小説は、コンテンツではなくて、コンテキスト>という節で、以下のように述べているのである。

―――― <......ケータイ小説は物語性もキャラクター性も貧困です。物語はどこかで聞いたことのあるような通俗的なストーリーばかりだし、登場人物も平凡な女子高校生ばかり。ではこのケータイ小説は、何が読者の女の子たちに受けたのでしょうか? ...... ケータイ小説の『恋空』が圧倒的にべタなヤンキー的リアリティに彩られていることです。 ...... つまりケータイ小説の魅力というのは、日常の会話や情景など、こうした圧倒的なディテールのリアリティにあるといえます。魔法のiらんどの遊佐さんは、こうも話しています。
「学校の裏で待ち合わせしたときの会話とか、教室の中のやりとりとか、あるいはお母さんに弁当を作ってもらったときの感情とか、そういうディテールが読者の共感を呼んでいるんです。ケータイ小説作家たちは、いかにして自分の体験が読者たちにつながるかを目指しているのであって、すばらしい表現や新しい世界観を切り開こうとしている純文学を目指す人とはそこが決定的に違う」
 言い換えれば、ケータイ小説というのは従来のいわゆる「文学」「小説」といったコンテンツとは異なって、読者と書き手の双方をくるんだ共有空間のようなものを生み出すためのシステムと呼んでもいいでしょう。
 つまり自分とその共有空間がつながるための装置として、べタなリアリティが存在しているというわけです。
「ああ、私と同じ会話をしている」「私と同じ経験をしている」
 と感じることで、自分と他の人々が同じ空間を共有しているような感覚につながることができるわけです。
だとすればケータイ小説というのはコンテンツではなく、コンテキスト(文脈)なのかもしれません。
 なぜこのようなものが出現してきたのでしょうか。>
( 佐々木俊尚『電子書籍の衝撃 本はいかにして崩壊し、いかに復活するか?』/デイスカヴァー携書/2010.04.15 )

 この後、同氏は、従来からの<活字文化、出版業界、流通構造>などを批判的に分析した上で、他の節で以下のように述べている。

<守られるべき出版文化とは、決して「出版業界」ではありません。
もちろんこういうメディアの大転換期に直面すると、古い業界に勤務していた人たちは
多くが職を失い、中には路頭に迷う人だって出てくるかもしれません。そうした人たちをどう救済していくのかはまた別の問題ですが、しかし間違えてはなりません。
 最も大切なのは、「読者と優秀な書き手にとっての最良の読書空間を作ること」です。
決して出版業界の給料を高止まりさせたり、雇用を維持することを目的にしてはならないのです。>
(同上書)


 ケータイ小説= "電子書籍" と見なすこともないが、佐々木氏がケータイ小説からリアルに見抜いたロジックは、"電子書籍" の極めて重要な性格を照らし出していると思える。
 "紙の書籍" の静的で孤立的な "読書(孤読)" から、ダイナミックでソーシャルなプロセス/コンテキストとしての"読書体験・読書空間"への脱皮を促す "電子書籍" ということになろうか......。
 "電子書籍" が "SNS / Social Network Service" や "ソーシャル・メディア" と "融合" しつつある進行形状況は、奇異なことであるどころか、"元の鞘に収まる" ごとき自然なことだと言うべきなのかもしれない...... (2011.07.16)

2011年7月16日 yasuo hirose | | コメント(0) | トラックバック(0)

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