新年度が始まったものの、やはりこの年度は景気が "湿気る" といった気配が濃厚な感触である。
この感触は、庶民の生活レベルでの困窮に端を発した形でやって来ているのだと思われる。原材料の高騰その他によって、諸物価が軒並み値上がりし、それでいて所得は増えるはずもない。むしろ公的負担も増加したりしているのだから、これらが庶民の消費行動の重い足枷となっていないわけがなかろう。
言ってみれば、もし、あのガソリン税事件がなかったならば、もっと目も当てられない不況風が新年度から吹き荒れることになっていたのではなかろうか。もっとも、この事件の余波で地方財源の縮小から、地方経済が "履く下駄" =公共投資がストップして、それはそれで深刻な不況要因を増やしているのかもしれないが。
いずれにせよ、くすぶって、湿ってしまった消費動向のあり様は、サイクルの次の局面では生産者側の消極性を生み出すことになっているに違いないと思われる。旺盛な生産拡大、設備投資増強といった積極性がどうしたって敬遠されることになるのであろう。景気が "湿気る" という表現は、こんな気配のことを指しているのである。
当社が関与する仕事の面からすれば、いわゆる "半導体製造業界" の "景気浮沈" という事実が結構重要な目安となってきた。これまでの20年が一貫してそうであったと言える。そして、その "景気浮沈" のわかりやすい指標は、単刀直入に言えば市場における半導体価格の上下で表現されてきたかと思われる。
モノの価格は、需給バランスで決定されるわけだから、半導体価格の上下もまた、メモリを初めとする半導体への需要と、半導体メーカー側の生産量、供給量との関係で決まってくることになる。概して半導体への需要は増大の一途をたどっているとは言えるのだが、半導体メーカー側の生産体制も画期的にハイエンド化しているために、半導体の需給バランスは短期間にブレて、そしてその価格の上下も短期間で変動してきたし、今なおそんな状況が継続しているのである。
そんなことで、当社の仕事と経営は、そうした環境変化の目まぐるしさに振り回されてきたと言って過言ではない。
そして、当面の環境変化という点では、やはり以下のような報道が気に掛かるところである。
<「メモリー景気」変調鮮明・価格下落、激しい消耗戦
半導体メモリー景気の変調が鮮明になってきた。低価格取引が続くDRAMに加え、動画や音楽の保存用に市場が拡大しているNAND型フラッシュメモリーも価格が急落。東芝の業績見通し下方修正の大きな要因になった。長期的な需要の伸びを見込む東芝は大型の設備投資を継続するが、米経済の失速もあり当面は価格回復のメドが立たない。各社は激しい消耗戦を強いられそうだ。
「想定を超える価格下落で半導体事業が悪化した」。東芝の村岡富美雄専務は19日の2007年度の連結業績修正会見でこう繰り返した。「HD―DVD」事業からの撤退に伴う損失1100億円に注目が集まったが、営業損益ベースでは半導体事業の影響も大きかった。>(NIKKEI NET:日経ネット 2008/03/21 )
ただ、半導体はメモリーに限られるものでもないし、また価格傾向も固定的なものでもない。昨今のような環境変化のサイクルが短期化している状況では、いつ何が生じるか簡単には予測できない面もある。
まあ、 "変化と状況" にお付き合いしながら堪えて行くしかなかろう...... (2008.04.07)
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