"派遣労働者" にとって、派遣会社が受け取る "派遣料金額"( あるいは "マージン" )が気になるのは、派遣会社がどれだけ儲けているかを知りたいというだけではなさそうだ。
むしろ、それらの大小が "派遣先" からの作業への "要求度" に関わることを肌身で感じ取っているからだ。
仮に "派遣労働者" 当人には "プログラマー水準" の賃金しか支払われないにもかかわらず、派遣会社が "SE水準" の高い "派遣料金額" を派遣先に請求していたとなると、過剰な期待・要求が "派遣労働者" 当人に及んでくるからだ。
面と向かってではなくとも、「高い料金を取られているのに......」という陰口が耳に入ってきたりする苦痛は容易に推測できる。
これまでは、"派遣労働者" に降り懸るこうした不都合は往々にしてあり続けた。
だが、2012年10月1日から "改正労働者派遣法" が施行され、そこに "派遣会社にマージン率などの情報公開を義務づける" という改善項目が含まれることになったのである。
とかく不利な労働条件に甘受することが強いられる "派遣労働者" にとって、契約環境が透明化されることは望ましいことだ。また "派遣労働者" 側が派遣会社を選択する際の一つの重要な指標ともなり得る。
だが、今回の "改正" は "大局的" には "派遣労働者の保護と雇用の安定を図る" ことにつながるのかもしれないが、必ずしも評判は良くないようだ。
下記引用サイト記事:短期派遣の原則禁止、若者ら置き去りの法改正/日本経済新聞/2012.10.02 を読むと、<だが本当に派遣社員の身になって考えた改正法なのか>という厳しい表現が目につく。
つまり、<短期派遣の原則禁止>という主旨は了解できても、これが<日雇い派遣でもいいから、すぐに働きたいという収入の少ない若者など......切実な希望を持つ人びとを労働市場から締め出す恐れは強い>という差し迫ったリアルな副作用(?)の問題を伴っているからだ。
ひと頃、センセーショナルに行われた "ハケン切り" の悲惨さは多くの人が憂えたところであるが、現時点の経済情勢では、この "改正" が、労働市場での "正社員化" の流れを作り出す前に、<若者ら置き去り>という結果を、先ずはもたらすであろうと想定されるからだ......。
短期派遣の原則禁止、若者ら置き去りの法改正/日本経済新聞/2012.10.02
ハケンは不安定なので望ましくないという与党議員などの思い込みが派遣規制を強めた。だが本当に派遣社員の身になって考えた改正法なのか。
改正法の施行で期間が30日以内の「日雇い派遣」は、原則できなくなる。ここで目を引くのは例外規定のあれこれだ。まず通訳、秘書、調査など18の業務はのぞく。さらに60歳以上や一部の学生、また世帯収入500万円以上の主婦や子供は日雇い派遣で働ける。
全面禁止に慎重な厚生労働省が法律と政令を使い分けた。八代尚宏・国際基督教大客員教授は「法の趣旨を行政がゆがめるのは問題だが、もともとの法改正がゆがんでいるので致し方ない面がある」と語る。この点では派遣社員の弊害は、さほど大きくない。
それでも肝心なところが例外から抜け落ちている。日雇い派遣でもいいから、すぐに働きたいという収入の少ない若者などだ。法の目的は「派遣労働者の保護」に変わった。望まないのに短期の派遣を強いられている人への手立ては必要だ。しかし「守る」といいつつ、切実な希望を持つ人びとを労働市場から締め出す恐れは強い。
派遣社員への朗報もある。派遣会社は派遣社員に派遣料金を示し、会社側の取り分を公表するよう求められる。取り分があまりに多い派遣会社を避け、自らの実入りを増やす機会が広がる。
派遣規制の強化は、期間の定めがない直接雇用こそが良い働き方だ、という正社員中心の発想が生み出した。その転換を、労働市場改革の出発点にすべきだろう。
(編集委員 大林尚)
元より "派遣法" が、"産業界寄り" の視点で制定、"改正(?)" されてきたことは周知の事実であろう。そして、今や "失業問題" が全面化しつつある時期に、"小手先" 程度の "改正(?)" というのは、望ましい "方向" の提示というよりも "彷徨" ではないかという皮肉も言いたくなる ...... (2012.10.03)
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