世界的に "賃金下落圧力" が高まっている、とされる。
そして、ここから "物価下落圧力の高まり!" が引き起こされるという。端的に言えば、"デフレ化" とも言えそうだ。
この趨勢が、"2年間で2%の物価上昇達成=デフレ脱却" という目標を掲げたアベノミクスに、ただならぬ暗雲をもたらしていると指摘されている。
この点に関しては、一昨日も以下のように注目したばかりだ。
<賃金の大幅な上昇がなければ、2年で2%の物価上昇目標の達成が難しいという見方が多くなっている....../ 市場関係者の間では、物価が日銀の想定ペースでは上がらないとのコンセンサスがで形成されつつある/ 今後は伸び悩むとの見方が多い/ 大幅な賃上げなどが実施されない限り、日銀の見通しは達成が難しいとの見方が、民間エコノミストの間では多くなっている>( デフレ脱却=物価上昇目標達成が難しい見通し!日銀追加緩和か?! 賃金の大幅上昇が鍵!( 当誌 2013.09.28 ) )
ただし今回着目する点は、この "目標" の前に "立ちはだかる障害" が、"半端ではない!" という点なのである。
下記引用サイト記事:コラム:欧米で高まる賃金低下圧力、日本の物価目標に黄信号も/REUTERS/2013.09.27 - 16:22 によれば、その "障害" は、大きく "2点" に集約されそうである。
(1) 世界的に起きている賃金の平準化の動き( ← <新興国で生産された安い製品と価格面で対抗するため、賃金などの固定費をカットする傾向>)→ 物価下落圧力の高まり!
(2) <非正規社員の割合は年々増加しており、正規社員に比べ年収の水準が低い非正規社員の割合が増加することで、賃金水準の平均が下がる傾向に拍車がかかるリスクも高まる> → 物価下落圧力の高まり!
では、これらの "障害" が、なぜ "半端ではない!" のか?
一言で言えば、これらの "障害" は、"現行世界経済の基本フレーム!" と密着している、からだと言える。
つまり、(1) にせよ、(2) にせよ、"グローバリズム経済" という現行経済とは "不可分の現象" なのであり、これらだけを "都合よく回避する" わけには行かない現象だからである。
したがって、現政府が<賃上げした企業の法人税減税や復興特別法人税の前倒し廃止の検討など> を推進したところで、"賃金水準の上昇 → 物価水準の上昇" が起動していくとは考えにくいわけだ......。
コラム : 欧米で高まる賃金低下圧力、日本の物価目標に黄信号も/REUTERS/2013.09.27 - 16:22
田巻 一彦
米欧で物価上昇率の低下傾向が鮮明になってきた。背景には経済のグローバル化に伴う先進国における賃金低下圧力によって、物価を押し下げる力が大きくなっていることがありそうだ。
アベノミクスでデフレからの脱却を図る日本にとっても、この点はかなり重要なポイントだ。安倍晋三政権は企業に賃上げを働きかけているが、非正規雇用の賃上げまで波及しなけければ、2年間で2%の物価上昇目標の達成に黄信号が点滅しかねない。賃金動向の重要性が今後、ますます注目度を上げていくことになるだろう。
<4年ぶりに米PCEが低下>
米商務省が26日に発表した2013年4─6月期の個人消費支出(PCE)価格指数は、前期比0.1%の低下となった。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注目するPCEが低下したのは、リーマンショック後の2009年1─3月期以来。
欧州でも物価上昇率が低下傾向をたどっており、消費者物価指数(CPI)は2012年8月の前年比2.6%から13年8月は同1.3%と上昇率が半減した。
この背景には、米欧における賃金低下圧力がありそうだ。米商務省が発表した7月の米個人所得は、前月比0.1%上昇と上げ幅が圧縮傾向をみせ、賃金・給与は同0.3%低下と落ち込んだ。
ユーロ圏でも、名目賃金がマイナスになっている国で物価上昇率がマイナスないし小幅上昇にとどまる傾向にあり、今年8月のCPIはギリシャが前年比マイナス1.0%、アイルランドが同0.0%、ポルトガルが同0.2%と平均値を押し下げる役割を果たしている。
<進むグローバル化、先進国に賃金低下の圧力>
米欧における物価下落圧力の高まりは、賃金下落との関連性が高いとみられるが、その背景にあるのは、先進国と新興国によるグローバルな輸出競争の実態ではないか。新興国で生産された安い製品と価格面で対抗するため、賃金などの固定費をカットする傾向は、日本に限らず米国や欧州でも広がってきている。
この大きな基調が逆流する展開は、もはや考えづらい。つまり賃金を通じて先進国に物価低下圧力がかかり続けるという構図は、長期化すると見るべきだと考える。
このことは、FRBの量的緩和政策の縮小開始をめぐる判断や、ECBの金融政策に対しても大きな影響を与えるに違いない。特に量的緩和政策の縮小開始が9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で見送られた米国では、注目度が上がると予想する。
<非正規の増加、日本でも賃金下落の圧力に>
アベノミクスと黒田緩和を推進中の日本にとっても、世界的に起きている賃金の平準化の動きは、無視できない要素として意識されつつある。
政府が20日に「経済の好循環実現に向けた政労使会議」を立ち上げ、消費増税に対応した政策パッケージの中で賃上げした企業の法人税減税や復興特別法人税の前倒し廃止の検討などは、政府の問題意識の表れだろう。
企業の税負担軽減を起点に賃上げで雇用者報酬を増加させ、経済の拡大メカニズムを起動させたいという狙いが鮮明に出ている。
ただ、大企業の賃上げが仮に実現したとしても、雇用者の35%を占めるまで増大した非正規社員の待遇改善につながらなければ、雇用者報酬の底上げにつなげることは困難だ。
また、非正規社員の割合は年々増加しており、正規社員に比べ年収の水準が低い非正規社員の割合が増加することで、賃金水準の平均が下がる傾向に拍車がかかるリスクも高まる。
このように見てくると、足元で進行している米欧の物価上昇率の低下傾向が示す経済的なメッセージは、日本にとっても極めて重要であると言わざるを得ない。
経済のグローバル化進行に伴う賃金低下の圧力を緩和するには、国内で新しい産業や企業の立ち上げに向けた動きが必要だ。
典型的な例である農業の活性化や観光立国を目指した対応には、新しい動きを制約する現行規制の緩和が欠かせない。安倍首相はまとまった規模の追加規制緩和の政策パッケージを早急に取りまとめてほしい。そのことで海外勢を含めたマーケットのアベノミクスに対する注目度が、再び上昇に転じると指摘したい。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
上記記事では、<経済のグローバル化進行に伴う賃金低下の圧力を緩和するには、国内で新しい産業や企業の立ち上げに向けた動きが必要> と指摘されているように、まさに "画期的な成長戦略" の実行以外に、眼の前の "難問" を解きほぐす手立てはなさそうだ...... (2013.09.30)
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