ヒトの "免疫(免疫応答)" 機能が、さまざまな細菌/ウイルスに対する自然の "防御機構" として働いていることは今さら言うまでもない。
だが、同時に、種々の "アレルギー疾患" をはじめとする、"間接リウマチ" のような "自己免疫疾患" を発症させ、人々を苦悩に陥れているのも事実であり、その "自己免疫疾患" 発症のメカニズムが未解明の現状において、いろいろな治療法が試みられている。
◆ 参照 今「免疫療法」は、スギ花粉症も食物アレルギーも"根治を目指す"戦略へと踏み込む?!( 当誌 2014.02.11 )
問題は、その "自己免疫疾患" 発症のメカニズムが未解明であることに違いないのだが、漸く、"長年の謎!" が解きほぐされようとしている。
下記引用サイト記事 : 関節リウマチ等の自己免疫疾患の新たな発症機構を発見 ~自己免疫疾患の診断薬・治療薬開発へ繋がる新たな分子機構~/大阪大学・JST・wpi/2014.02.25 が、"その解明への確かな一歩!" について報じている。
<大阪大学 免疫学フロンティア研究センター/微生物病研究所の荒瀬 尚 教授らの研究グループは、自己免疫疾患で産生される自己抗体が、異常な分子複合体(変性蛋白質と主要組織適合抗原との分子複合体)を認識することを発見し、それが自己免疫疾患の発症に関与していることを突き止めました> とある。
"免疫(免疫応答)" 機能のメカニズム、とりわけ "自己免疫疾患" 発症のメカニズム(=<自己免疫疾患の発症機序>)は "専門用語" が多いために理解に苦しむが、要するに、細菌/ウイルスなどの "抗原" に対して、"抗体" の "産生" で反撃するために "連携プレー" を展開していると理解できる。"自己免疫疾患" 発症も、こうした "連携プレー" の過程における "誤った捜査と誤った逮捕(!?)" だと言えそうだ。
その "連携プレー" には、免疫細胞(T細胞、B細胞など)や各種の分子( "主要組織適合抗原"、情報連絡分子サイトカインなど)が関与しているとされるが、細胞内に侵入した "抗原" に対する、いわば "初動捜査(?)" の役割を担う "主要組織適合抗原" という分子の存在意義が大きいようだ。にもかかわらず、"この周辺" が未解明とされてきたようなのである。そして、今回の研究ではここに、メスが当てられたと言える。
<本研究では、通常は速やかに分解されてしまう細胞内の変性蛋白質が、主要組織適合抗原(MHC)によって細胞外へ誤って輸送されてしまい、その変性蛋白質が自己抗体の標的分子であることを世界で初めて明らかにしました/ 主要組織適合抗原が細胞内の変性蛋白質を自己応答性のB細胞に提示することが自己免疫疾患の原因である> とされている。
妙な譬えで恐縮だが、<変性蛋白質>という "現場に残された遺留品(?)" の、その "扱い" を、主要組織適合抗原が "誤って対処(提示)" していたというのが真相のようである。
関節リウマチ等の自己免疫疾患の新たな発症機構を発見 ~自己免疫疾患の診断薬・治療薬開発へ繋がる新たな分子機構~ /大阪大学・JST・wpi/2014.02.25
<概要>
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター/微生物病研究所の荒瀬 尚 教授らの研究グループは、自己免疫疾患で産生される自己抗体が、異常な分子複合体(変性蛋白質と主要組織適合抗原との分子複合体)を認識することを発見し、それが自己免疫疾患の発症に関与していることを突き止めました。<本研究成果の意義、社会に与える影響>
自己免疫疾患は、自己分子に対する抗体(自己抗体)等が自己組織を誤って攻撃してしまうことで生じる疾患です。しかし、なぜ自己免疫疾患で自己抗体が産生されるかは、依然として明らかでありません。主要組織適合抗原 注1)は、細胞内外のタンパク質が細胞内でペプチドに分解されたものを細胞表面に輸送してT細胞に抗原として提示することで、免疫応答の中心を担っています。一方で、主要組織適合抗原は、自己免疫疾患の罹りやすさに最も影響を与える原因遺伝子として知られていますが、主要組織適合抗原がどのように自己免疫疾患を引き起こすかも明らかでありませんでした。本研究では、通常は速やかに分解されてしまう細胞内の変性蛋白質が、主要組織適合抗原(MHC)によって細胞外へ誤って輸送されてしまい、その変性蛋白質が自己抗体の標的分子であることを世界で初めて明らかにしました。つまり、主要組織適合抗原が細胞内の変性蛋白質を自己応答性のB細胞に提示することが自己免疫疾患の原因であると考えられました(右図)。実際に、関節リウマチ患者の血液を解析すると、主要組織適合抗原によって細胞外へ運ばれた変性蛋白質に対する特異的な自己抗体が認められることが判明しました。さらに、変性蛋白質と結合しやすい主要組織適合抗原を持っているヒトは持っていないヒトに比べて10倍以上も関節リウマチになりやすいことを発見しました。これらの結果から、主要組織適合抗原によって細胞外へ輸送されてしまった細胞内の変性蛋白質が、自己免疫疾患の発症に関与していることが判明しました。
本研究によって、今まで考えられてきた自己免疫疾患の発症機序(図1)とは全く異なる新たな発症機序(右上図)が明らかになり、自己免疫疾患でなぜ自己抗体が産生されるのか、なぜ主要組織抗原が自己免疫疾患に関わっているかという長年の自己免疫疾患の謎を解明する上で、非常に重要な発見です。関節リウマチに限らず、その他多くの自己免疫疾患も同様な発症メカニズムが考えられるため、本研究成果は、今後、多くの自己免疫疾患の治療薬や診断薬の開発に貢献することが期待されます。
本研究成果は、米国の科学雑誌『米国科学アカデミー紀要』(2月24日付け:日本時間2月25日午前5時)にオンライン掲載されます。
<用語解説>
注1)主要組織適合抗原(Major Histocompatibility Complex,MHC;Human Leukocyte Antigen,HLA)
主要組織抗原は非常に多様性に富む分子であり、基本的に全てのヒトが異なる主要組織適合抗原を持っている。T細胞にペプチド抗原を提示する(図1)ことで、免疫応答の中心を担っている分子である。クラスIとクラスIIがあり、クラスIIはヘルパーT細胞に抗原を提示することで、B細胞の抗体産生に関与していると考えられている。また、ヒトのクラスIIはHLA-DRとも呼ばれている。一方、主要組織適合抗原は、以前より自己免疫疾患の発症に最も関与した分子であることが知られており、最近の全ゲノム解析によっても、主要組織抗原が最も強く自己免疫疾患の感受性に関与した遺伝子であることが確認された。しかし、なぜ特定の主要組織適合抗原を持っていると特定の自己免疫疾患になりやすいかは、依然として明らかになっていなかった。
―― 図1 ―― ( 以下略 )
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
<関節リウマチに限らず、その他多くの自己免疫疾患も同様な発症メカニズムが考えられるため、本研究成果は、今後、多くの自己免疫疾患の治療薬や診断薬の開発に貢献することが期待されます> とあるが、まさにそうであって欲しいものだ...... (2014.02.27)
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