"記憶" の危うさが危惧される病気の "認知症" は、では、"記憶" のメカニズムとは? という切実な問いを、切迫感をもって表面化させることになった。
そして、"シナプス"(ニューロン間の接合部位)に対して、新たな "記憶痕跡" という視点をも導入させている。
◆ 参照 当誌過去の "記憶痕跡" 関連記事
○ <......痕跡(過去の記憶)とは、過去に活動電位が通過したシナプスのことで、その結果として、次に活動電位が到達したとき、このシナプスが活動することが、はるかにたやすくなっている......> ( "記憶の脳回路痕跡" マウスでついに発見!"デカルト以来350年の謎"に実証的な決着が!/当誌 2014.03.22 )
今回注目する下記引用サイト記事 : 思い出せないけど...脳には記憶残る 理研がマウスで実験/朝日新聞/2015.05.29 - 03:01 は、 <認知症などで過去を思い出せないのは、記憶が失われたのではなく、残っているのに取り出せないだけ――。そんな可能性を示すマウス実験の成果を、理化学研究所のグループが29日付米科学誌サイエンスに発表。記憶障害の仕組み解明につながる可能性がある。(記憶の固定化に不可欠な)記憶痕跡と呼ばれる神経細胞群の細胞どうしのつながりを強める「シナプス増強」。(しかし、それがなくても、)記憶痕跡の細胞群に直接、記憶が保存されていること......> という興味深い事実を報じている。
<認知症などで過去を思い出せないのは、記憶が失われたのではなく、残っているのに取り出せないだけ――。そんな可能性を示すマウス実験の成果を、理化学研究所のグループが29日付米科学誌サイエンスに発表する。記憶障害の仕組み解明につながる可能性があるという。 脳には不安定な記憶を固定化して、長期に蓄えるプロセスがある。その際、記憶痕跡と呼ばれる神経細胞群の細胞どうしのつながりを強める「シナプス増強」が欠かせないと考えられてきた。 グループは、ある小箱に入れて弱い電気刺激で恐怖を経験させたマウスに、たんぱく質の合成を阻害する薬を与え、シナプス増強が起こらない「健忘状態」にした。通常のマウスは同じ小箱に入れただけで身をすくませるが、健忘マウスはすくまない。ところが、健忘マウスの記憶痕跡の細胞群を人工的に活性化させると、恐怖体験を思い出してすくむことがわかった。シナプス増強がなくても、記憶痕跡の細胞群に直接、記憶が保存されていることを示した。 「シナプス増強は、記憶ができるごく初期に重要な役割を果たすが、記憶維持の基本的なメカニズムではない。思い出す時に必要なのかもしれない」と利根川進・理研―MIT神経回路遺伝学研究センター長は説明する。 井ノ口馨・富山大学教授は、「昔のことを思い出せない『逆行性健忘』は、記憶痕跡が消えたのか、思い出せないだけなのか論争になっていたが、一つの答えを出した」と話す。(瀬川茂子)> とある。
思い出せないけど...脳には記憶残る 理研がマウスで実験/朝日新聞/2015.05.29 - 03:01
認知症などで過去を思い出せないのは、記憶が失われたのではなく、残っているのに取り出せないだけ――。そんな可能性を示すマウス実験の成果を、理化学研究所のグループが29日付米科学誌サイエンスに発表する。記憶障害の仕組み解明につながる可能性があるという。
脳には不安定な記憶を固定化して、長期に蓄えるプロセスがある。その際、記憶痕跡と呼ばれる神経細胞群の細胞どうしのつながりを強める「シナプス増強」が欠かせないと考えられてきた。
グループは、ある小箱に入れて弱い電気刺激で恐怖を経験させたマウスに、たんぱく質の合成を阻害する薬を与え、シナプス増強が起こらない「健忘状態」にした。通常のマウスは同じ小箱に入れただけで身をすくませるが、健忘マウスはすくまない。ところが、健忘マウスの記憶痕跡の細胞群を人工的に活性化させると、恐怖体験を思い出してすくむことがわかった。シナプス増強がなくても、記憶痕跡の細胞群に直接、記憶が保存されていることを示した。
「シナプス増強は、記憶ができるごく初期に重要な役割を果たすが、記憶維持の基本的なメカニズムではない。思い出す時に必要なのかもしれない」と利根川進・理研―MIT神経回路遺伝学研究センター長は説明する。
井ノ口馨・富山大学教授は、「昔のことを思い出せない『逆行性健忘』は、記憶痕跡が消えたのか、思い出せないだけなのか論争になっていたが、一つの答えを出した」と話す。
(瀬川茂子)
<昔のことを思い出せない『逆行性健忘』は、記憶痕跡が消えたのか、思い出せないだけなのか論争になっていたが、一つの答えを出した> 、つまり、<思い出せないだけ> というのが今回のマウス実験成果となる。 ここから、"潜んでいる記憶痕跡" をどのように "人工的に活性化させる" のかという局面が研究対象となるのであろうか...... (2015.05.30)
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