"CO2 排出権取引" とは "ドライ" に一般経済の土俵に引きずり込んだ快挙か ......

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 人気TV番組で「開運! なんでも鑑定団」(テレビ東京)というのがある。その再放送が日曜日の午後の放送であるため、何となくくつろぐ時間帯であるからだろう、遅れた昼食をとりながらよく観る。司会者は、島田紳介と石坂浩二ほかだが、誰もが感じていであろうように "ドライな雰囲気" の紳介が牛耳っているかのごとくである。
 それもそのはずなのだろうと思う。この番組の "セールスポイント" は、骨董品はもとより、様々な年代モノを鑑定した上で、とにかく "相場価格" を付けてしまう点であり、言ってみればなんでも "ドライ" に "カネ換算" してしまうところにあるだろうからだ。その "ドライ" さに絡む他人の悲喜こもごもの様子(どちらかと言えば、贋物で騙されていた者の悲哀の様子がお目当てとなる)が、これまた "ドライ" に距離を置いて楽しめる点、それがこの番組の面白さでもあるのだろう。だから、 "ドライ" に嘲り飛ばす雰囲気が売りの紳介がこの場の空気を作らないと、馴染まないのだろうと思える。

 言うまでもなく、現在は "市場主義経済" 一辺倒の時代である。だから、何にでも "値段" が付けられ、 "値打ち" というものが当然のごとく "カネ換算" されてしまう時代である。まあ、特に目新しいことでもないわけで、法律の次元でも、民事にあっては、 "損害賠償" はみな "カネ換算" して処理されてきたのである。
 こうした処理方法を、あまりにも "世知辛い" ではないかと言うこともできよう。人間の "真心" や "誠意" が発揮されて然るべきだと感じないわけではない。が、 "ある種の人々" が口になさる「オンドリャ、 "誠意" を見せんかい!」というセリフの意味するところが、結局は "カネをいくら出すのか" ということらしいから、麗しい言葉までが "カネ" に染まっており、 "カネ" の別称となってしまっている世の中である。

 こうなると、さてさてどうしたものかと思い迷うが、個人の処世術としては "カネ" とは無縁な高踏的世界で優雅に生きるというのもいいが、社会現象の交通整理としては、 "毒をもって毒を制す" ふうの "ドライ" さが是非とも必須なのではないかと思い始めている。
 この点で納得するのが、暴力団関係の事件において、組員による一般人殺傷などの責任が組長に問われ、多額の損害賠償金が請求される判例が出始めた点であろう。昨今のこの種の団体は、非合法なジャンルではあるが明らかに "経済団体" と化しているのだから、わけのわからない "社会的制裁" などよりも、 "高額なカネ" の方がはるかに "効き目" があるというものだろう。抜け目のない家康が、競合大名の勢力弱化のために莫大なコストを要する "参勤交代" という策を制度化したように、反社会的なアクションに対しては、多大な "コスト負担" をしていただくというのが効果的ではないかと考えるわけだ。

 この点で言うと、最近次第に国際的注目度が高まってきたのが、 "CO2 排出規制" の動向に伴う "CO2 排出権取引" ではないかと思う。つまり、排出規制で定められた各国の排出上限枠という数値を元にして、排出量が多く見込まれる国は、そうではない国から "排出権" を有償で譲り受けてもよい、というルールのことである。
 当初、自分は、これを否定的に受けとめていた。どうしてこんなことにまで "カネ勘定・換算" を持ち込むのか、排出上限枠を下回る国はそのままそっとしておけば、地球全体での排出量は少なくて済むではないか、と考えたものであった。
 しかし、この方法、ルールは意外と "効果的" で "抑制力" があるのかもしれない、と感じ始めたのである。先ず、大量排出予定国は、かなりの高額負担(聞くところでは、CO2 が1トン当たり1212円だとか)が強いられることとなり、これは自ずと "排出抑制機能" へとつながっていくと思われる。また、低開発国などで "排出権" を他国に譲渡して資金を得た国は、その資金を元にして先進国から "環境にやさしい生産手段" を購入しての経済振興をすることが可能となり、これまた "CO2 排出量" を削減することにつながろうというものだ。

 そして、何よりも、どこか "観念化" してしまっていたがためか、遅々として進まなかった地球温暖化防止策が、かなり具体的な規制運動として立ち上がることができそうに思われるのである。どの国も経済発展はリアルな課題であり、言ってみれば超リアルな "カネ問題" だとも言える。これに規制を呼び込もうという時、やはり "観念的なスローガン" に頼ったところで土台効き目が出て来にくいということかもしれない。とすれば、むしろ "カネ勘定・換算" を原理とする経済システムのど真ん中に組み込んでしまった方が、はるかに "制御可能性" を持つということなのであろう。
 昔日本で、60年代頃の都市公害問題が注目された時、ある経済学者が、公害現象を確か "外部負経済" と言ったかに思う。つまり、通常の経済活動は常に "カネ勘定・換算" 原理に貫かれるのに対して、当時の公害はその領域から外れるがゆえに環境を破壊しているにもかかわらず、一切の経済原理から問われることがない "外部負経済" だという意味であったかと理解したものだった。
 この点から言えば、 "CO2 排出権取引" とは、公害現象を "ドライ" に一般経済の土俵に引きずり込んだ快挙だと言えるのかもしれない...... (2008.01.07)













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