小説やドラマでは、自分が感知していなかった遠い親戚の者の "莫大な遺産" が、寝耳に水のごとく突然に転がり込むというストーリーがあったりする。そんな "シンデレラ" のようなラッキーがありはしないかという、俗人の "さもしい" 心根がそんなストーリーを浮き上がらせるものであろうか。
ところが、これに類するような話、いや、とは言っても、こちらの方は幾分 "ブラック" の色調と、考えようによっては "笑っちゃう" ような話、ひっくるめると "ブラック・ユーモア" というような話が、自身に発生したのである。
それは昨日、突然受け取った "スペイン" は "マドリッド" の消印のある封書から始まった。
「社長、スペインに知り合いでもいるんですか?」
と言いながら、社員が他の郵便と一緒にその封書を持って来たのだった。
そう問われると、いないこともなく、ずっと以前に知人の友人で国連関係の仕事をしていたとかいうスペインの出身者と面識を持ったことがあった。しかし、先ずその彼ではなかろうとほぼ確信し、どうせ、毎日鬱陶しいほどに舞い込む mail-box の "迷惑メール" の類でしかなかろう、と想像した。
宛名は、英文で株式会社アドホクラットの廣瀬宛となっており、しかも、本社の所在地ではなく、事務所の方の所在地宛となっていたため、ネット関係での個人情報が漏れたものなんだろう、という推測をしたりもした。要するに、 "ろくなものではなかろう" という先入観が "150%ほど" 出来上がっていたわけなのである。
とりあえず開封してみた。すると、中には、三つ折にされたA4大の用紙が入っており、その用紙には数十行の手紙仕様の英文の文面がビッシリと記載されていた。
目に飛び込んだ箇所は、差出人が "Mrs......." という箇所と、書き出し後にすぐに出てくる何だか "でかそうな数字!" であった。
ご夫人が何の用件だろうかという点と、 "でかそうな数字" が気になったわけだ。その数字は次のように記載されていたのである。
<an Abandoned sum of 77.7m US dollars(Seventy Seven Million Seven Hundred Thousand United States Dollars)>( "宙に浮いた" 7千7百70万米ドル[ 約80数億円 ?])
今ひとつ気になったのは、<one of our fbreign Customer Mr.A******* Hirose>という、見慣れた綴りの<Hirose>という文字でもあった。
一体、ご夫人が語る "宙に浮いた" 約80数億円のお話とは何なのか? しかも、日系人のような<Hirose>氏が何か因縁を持っているのだろうか?
ひょっとしたら、自分の視野には入っていない遠い血縁の親戚が、自分に多額の "遺産" を遺したとでもいうのかとはちゃうか??
ちょっとした興奮を伴いながら、自分は読み進むのであった。
そのご夫人は、スペインのとある銀行で、外国為替部のマネージャーをしているようである。そして、その関係で、ある日、上記の"宙に浮いた"巨額の一件に遭遇したらしい。実は、その巨額の正体とは、<one of our fbreign Customer Mr.A******* Hirose>に属するもので "あった" ようなのだ。だが、< Mr.A******* Hirose >は、<2004年5月11日>に< Atocha >で発生した<列車爆破事件>で、家族諸共亡くなったそうなのである。
家族全員が亡くなったということで、< Mr.A******* Hirose >の遺産は、当然血縁のある者に相続されることになったようだが、ところが、生憎と名乗り出る血縁者が皆無であったというのである。
そこで、このご夫人は、どうもご主人と共謀して "悪巧み" を思いついたようなのである。つまり、 "日本人の Hirose " が、実は何を隠そうわたくしめは< Mr.A******* Hirose >と縁続きの人物でございます、と名乗り出てみてはどうか、というのである。もし相続者が現れない場合には、どうせこの巨額はそっくりスペイン政府のものとなってしまうのだから、ここはひとつ、私たち(ご夫人&ご主人)と手を組んで "相続" してしまいませんか、わたしたちが全面的なお手伝いをしますよ、という "感謝感激" のお話なのである。そして、これは< business proposal >ですので、つきましては、ご賛同いただければ、 "6-4の山分け" ではいかがでしょうか、とご提案なさるのであった。
<I agreed that 40% of this money will be for you as a foreign Partner, in respect to your acceptanc-e to do this business with me, while 60% would be for me and my family.>
それで、一刻も早く、Fax か Tell でのお返事をください。<Thanks and GodBless. Best regards.>と、結んでいたのである。
言うまでもなく、自分はこんな "グローバリズム犯罪" へのお誘いなんぞは "黙殺" するとともに、同様の手口で引っかかる者が出ないとも限らないので、こうして "公表" しちまえ、ということにしたわけだ。
もちろん、 "遺産相続" の話なんぞは "嘘八百" に決まっていようが、この手の手口の犯罪の真の狙いはどの辺にあるのかについては幾分興味がなくもない。 "手続きのための費用" がどうのこうのと "カネを要求" してくることも予想できるし、また犯罪行為へ誘い込むことによって一蓮托生とばかりに "ゆすり" 行為に出て来ることも考えられないでもなかろう。
しかしそれにしても、昨今の "知能犯" 的手口は、手が込んできたものである。しかも、グローバルな広がりを呈してきてもいる。シナリオ・ライター顔負けの雰囲気もありそうだが、しかし、今ひとつ何と言うか "緻密さに欠ける" という印象が拭い切れない。
ただ、 "振り込め詐欺" が跡を絶たないこの国の住人の "甘さ" が、意外と海外にも広まっていたりして、日本人はすっかり "なめられて" いるのかもしれない...... (2008.01.08)
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