ソフト開発会社と "派遣業務" との関係は ......

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 先日、とある同業他社の社長と話す機会を得た。ちょっと自分側に誤解があって、妙な期待をかけてしまったのだが、話して行くうちに、期待外れであることがわかり、がっかりしてしまったのだった。別に、その社長が悪いというわけではない。まあ、精力的で立派な経営者だと言うべきであろう。むしろ、特別なイメージを勝手に抱いてしまった自分側のミスであったということになる。
 ところで、あまり大声では言えないが、このソフト業界の経営者と話しをすることを自分はあまり好まないできた。はっきり言っておもしろくないからなのである。よほど独自な経営観を持っている人でない限り、大体が特色もなければ、人間的な魅力もない方が多い。それでいて、 "売上額増大" にだけは異常に関心を向けておられる。
 まあ、自分自身をその外に置いているつもりはなく、自身を含めての話となる。で、その原因は何かと言うと、概して、この業界の企業が長く馴染んできてしまった "派遣業体質" ということになりそうな気がする。

 派遣業種の枠が緩められたこともあり、昨今では他業種でも "派遣業" を営む企業が増えてきたようだ。中には、人手不足の風潮を追い風に、脱法経営に走り、荒稼ぎをする業者も少なくない。こうした現象の基盤には、産業界からの強い要請で "派遣法" が改変されたという契機があったものと思われる。この "派遣法" はもともとが、労働者の立場という点でかなり微妙な問題を含んできたはずであり、一方的に産業界からの要請だけで改変されるならば、いろいろな問題が起こることは十分に予想されたはずであろう。
 そして、案の定、大手派遣会社の脱法的経営が白日のもとにさらされることになった。しかし、問題はそれに止まらず、今や誰でもが知ることとなっている "格差社会" 的傾向の極端な深まりそれ自体が、 "派遣法" の改変実施と軌を一にしていたことは認識せざるを得ないはずである。この何年かの間の大手企業における飛躍的な収益向上もまた、この動きと重なっていることも知られて良いのではなかろうか。

 前述の社長も奇しくも言っておられたが、ソフト会社が順調に運営されて行くには、多少とも "派遣業務" に依存せざるを得ない、という現実は、よくわかる。いわゆる "請負業務" を間断なく確保して、会社経営に必要な売上を上げて行くことは並大抵のことではないからだ。技術力と営業力とをフル回転させ、なおかつ運にも助けられて漸く実現するかしないかという難問だと言わざるを得ないだろう。
 したがって、決して少なくない "請負業務" 志向のソフト開発会社が、やむなく "派遣業務" で埋め合わせをして来たし、しているものと推定できる。
 ところが、こうした成り行きの過程で、次第に "派遣業務" の比重が高まり、やがては "派遣専門会社" へと変貌して行く傾向がまま見受けられる。悪貨は良貨を駆逐すると言うべきか、水は低きに流れると言うべきか、そうなってしまいがちなのである。
 それは、経営的な負荷(リスクも)が小さく、それでいてカウント可能な売上が見込めるという "経営的メリット" が伴うからなのであろう。初期のソフト業界の急速な立ち上がりは、ほとんどこの "メリット" が先導したものだと言ってもよさそうである。

 しかし、同時に、 "派遣業務" 依存のソフト会社が問題含みの企業体質から抜け出せなくなることも重々認識されて良さそうである。
 先ず、埋め合わせのつもりで依拠したはずの "派遣業務" は、本来メインとしたかったはずの "請負業務" を可能とする社内体制を、まるで "歯槽膿漏" の歯茎のごとく蝕んで行くのではなかろうか。ソフト開発が本来的に秘めている "辛いけれど充実する実感" というものが技術者たちの間で希薄となってゆくならば、ソフト開発の学習・教育の空気は日毎に薄まって行くだろう。そして、言うまでもなく、これが無くなるならば、どんな小さなシステムと言えども自前で開発することは困難となって行くに違いないわけだ。
 こうした濁った空気は、社内の優れた技術者ほど早く察知することになるであろうから、会社としての技術力は時を経るごとに低下して、やがては、まさに派遣スタッフだけの派遣会社へと変貌してしまうわけである。

 ところで、この間、経済情勢全体は、急速な "構造改革" のうねりの中で、先ずは "低コスト競争" をあぶり出し、その流れの中で、人件費の圧縮を至上命題とさせ、 "低コストのテンプスタッフ" を注目させて来たはずである。
 この陰には、 "人材の質の劣化" 問題にはしばし眼をつぶるという企業の構えがなかったとは言えまい。だがしかし、各企業は眼をつぶり続けることが可能なのであろうか。
 まして、ソフト開発業界にあっては、コンペチターは、むしろ中国やインドという国々となり、既に "アウトソーシング" 方式で力作業は海外勢に、という動向が現実化しているようである。
 となれば、製造業界と同様に、国内でのソフト開発は、より高度な水準の開発に収斂して行くという現象が必然化するのではなかろうか。そして、大手企業はすでにそのねらいで、より高度なソフト開発技術をどう培い、継承して行くのかに着目しているのだと思われる。昨今、一頃の荒っぽい "成果主義" の人事制度を再度見直して、文字通り優秀な技術者たちの発掘と育成に眼を向け始めているのもそんな兆しではないかと読めそうである。

 経営という局面はもちろん重要である。が、業種、業種が秘めた独自なエッセンスに常に熱い視線を向けて行くことを忘れたくはない、と相変わらず暢気なことを考えている...... (2008.02.29)













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