暮れなずむ空を背景に、数羽以上のムクドリたちが電線におとなしく留まっている。事務所の窓から表を見上げると、あれっ、と思う感じでそれらが目に入った。スズメよりもやや大きくボリューム感があるため、まだ明るい空を背景にして、つぶつぶの黒い影が否応なく目に入ってくるのだった。
ちなみに、広辞苑では次のように解説されている。
<スズメ目ムクドリ科の鳥。ツグミくらいの大きさで、灰褐色。嘴(くちばし)と脚は黄色。日本各地の人家付近の樹木や田圃(たんぼ)に群棲し、果実や昆虫を食う。夜間には大集団で共同ねぐらをなして眠る。鳴き声が甚だ騒がしい。林縁・疎林にすみ、地上で昆虫などを食う。ムク。白頭翁。>
この、ムクドリの異名<白頭翁>、つまり白頭の老人というのが何ともおかしい。確かに、顔あたりは白斑があって、<白頭>と言えなくもない。ただ、<翁>と見なされるのがどこから来ているのかはちょっと解せない。
地上に降りて餌を探す時の歩き振りにのこのこという雰囲気があることはあるので、その辺から来ているのだろうか。先ほど電線に留まっていたムクドリたちも、妙に落ち着き払った様子であったが、その落ち着きぶりを<翁>と見るならば、なるほどと思えなくもない。
暢気そうに見えるムクドリたちを見て、何を暢気なことを書いていると言われそうである。確かに、刻一刻と "景気後退" のさざなみが押し寄せて来ている気配がある。加えて、以下のような動向は、あたかも "川に落ちた犬に石をぶつける" がごときつれなさと言うべきか。
<貸し渋り、世界で影響拡大・サブプライム問題
【ロンドン=吉田ありさ】米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発した世界的な貸し渋りの影響が拡大してきた。米国ではニューヨーク・ニュージャージー港湾公社の借換債の調達コストが急騰、ミシガン州学生ローン公社は新規ローンの停止に踏み切った。英国ではインターネット銀行が一部顧客にクレジットカードの利用停止を通告。こうした動きが広がると、個人消費や投資の低迷につながる可能性がある。......>( NIKKEI NET 2008.02.21 )
そして、この動向が、決して対岸の火事だとは言えないところに不気味さがある。次のような報道がこれを裏書きしているかのようである。
<金融相、国内金融機関サブプライム損失拡大「十分予想される」
渡辺喜美金融担当相は15日の閣議後会見で、国内金融機関の米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)関連の損失額について、「今後さらに増えることが十分予想される」と述べた。金融庁は13日、国内金融機関の損失額が昨年12月末時点で6000億円に達するとの調査結果を発表している。渡辺金融相は昨年9月末より損失が拡大した点や、サブプライムに直接関係のない金融商品にも影響が広がっている点を指摘し、「警戒を怠らずに引き続き、監視していく」方針を強調した。
福田康夫首相から中小企業の年度末の資金繰り対策について指示を受けたことも明らかにし、来週中までに対応策を検討する考えを示した。>( NIKKEI NET 2008.02.15 )
"晴れた日に傘を貸し、雨の日にそれを回収する" というのが銀行だと揶揄されてきたものだが、ただでさえ厳しい環境にある銀行が、サブプライムローン問題で追い討ちをかけられれば、<貸し渋り>や引き剥がしという自己防衛策に打って出ることは容易に想像できるところだ。
零細企業としては、まさに不気味なご時世到来が気になるところである。
世知辛い現世を超越しているかのような<白頭翁>たちから、とっておきの知恵でも授かりたいところである...... (2008.02.21)
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