"自然"・"自治"・"文化" というエッセンスへの着目 ......

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 ユーゴスラビア連邦の "コソボ自治州" が再度の独立宣言をして、ヨーロッパ周辺諸国に不穏な空気が漂っている。 "コソボ問題" とは、スラブ民族の "セルビア人" と、コソボの大半を占める "アルバニア人" との民族間対立だと言われており、いわゆる "民族問題" である。
 イデオロギー対立を基軸とした東西冷戦世界が過ぎ去って以降、イデオロギー対立の下で埋もれていた民族間対立の問題が世界各地で表面化している。
 その最も大きな対立は、西欧文化圏とイスラム文化圏ということになるのであろうか。グローバリズムという "経済的世界の統一化" の趨勢が展開している現在であるが、その大きなうねりの中にも、無数の民族間対立の問題が見え隠れしているのが実情なのであろう。
 こうした "民族問題" を考えようとするならば、この問題の複雑さと大きさ、そして奥の深さによってたじろいでしまう、というのが実感だろうと思う。

 ところで、グローバリズム傾向が急速に世界各地に浸透したことが、逆に、民族主義的傾向やナショナリズムの傾向を刺激しているとも言われたりしている。この国日本においても、そんな空気が漂っていないとは言えない。
 了見が狭く、他を排斥するような民族主義やナショナリズムは、もちろん現代の良識(国際世論など)との間に大きなズレをもたらし、自身を国際的に孤立させることになるだろう。したがって当然望ましい方向ではないはずである。
 しかし、かと言って、世界各地の固有の文化を揺さぶり、あるいは呑み込んでしまうかのようなグローバリズムの趨勢が、それだけで人間が生き生きと暮らせる望ましい環境を自然に作り上げてゆくだろうとは、到底想像できないところではなかろうか。いや、それはグローバリズムの成熟度の問題なぞではなく、本質的、原理的な問題でありそうな気配を感じる。

 昨晩、またまたあるTV番組で、ある種、啓発された思いと、意を強める思いとにさせられた。
 グローバリズムの趨勢は、もちろん近代化・現代化という趨勢を前提としており、それは日本の場合、幕末・明治から西欧に倣えの掛け声で突貫工事がはじめられたことに端を発していたのだろう。そして終戦後、米国の占領下で弾みがつけられて戦後復興が成し遂げられ、その流れに乗って高度経済化状況が生み出さるや、世界にも例を見ない程の "超近代国家" を建設してしまったわけだ。それはまるで、 "新幹線" の走行のように "エクスプレス" の様相であったと言えそうだ。だが、現時点に到着した国民の思いは、まさに "悲喜こもごも" だと言うのが実情のようだ。
 昨夜のTVの語り手である84歳の建築家・池田武邦氏(<HV特集 日本の風景を変えた男たち▽廃虚から超高層ビルそして池田武邦が語る戦後> 同氏は、東京の名だたる超高層ビル「霞ヶ関ビル」などを設計してきたとともに、長崎の "ハウステンボス" の設計者でもある)は、若き日に出兵して苦しい戦中を過ごし、戦後は復興のために遮二無二働き、高度経済成長期以降は最先端の近・現代建築の仕事に邁進してこられた。まさに、この国の歩みと歩調を合わせた人生を送ってきたわけだが、ある時、この近代化・現代化という趨勢そのものに大きな疑問を抱くようになったのだという。

<日本最初の超高層ビル「霞ヶ関ビル」を設計し、超高層建築の第一人者となった池田武邦(84歳)は、今、かやぶきの家に住んでいる。池田は、あるとき、超高層ビルに居住する人間の世界に違和感を持った。そして、環境に調和し、自然に溶け込んだ建築を目指すようになった。なぜ、自ら生み出した建築物に疑問を持つようになったのか。池田が、日本各地の昔ながらの暮らしに触れる中で、自らの変遷の軌跡を語る。>(NHK番組表より)

 こうした池田建築家が語る言葉は、実に多彩かつ深い現実を踏まえた強い説得力を伴ってものであった。中でも、強烈であったのは、二つの事柄である。
 ひとつは、時代の変化や発展は、その基盤に "文化" がなければ磐石ではないという信念。この点に関して同氏は、日本という国が近代化・現代化を急ぐあまり、日本文化の集大成とも言える江戸文化を台無しにした、と批判されていた。
 そしてもうひとつは、建築家の都市観から言っても、都市や地域社会は "文化" とともにある "自治" こそが重要であること、また人為性よりも遥かに勝る "自然" との、その "共生" の方向こそがベストである、ということであった。
 これらは、まさにグローバリズム趨勢謳歌の風潮が、決定的に等閑(なおざり)にし続けている事柄だと見て間違いなかろう。また、 "自然"・"自治"・"文化" というエッセンスへの着目は、冒頭の "民族問題" への視点にもどこか光を射し入れるかのようで、深く考えさせられたのであった。
 再度、じっくりと耳を傾けたいと思える番組であった...... (2008.02.19)













【 SE Assessment 】 【 プロジェクトα 再挑戦者たち 】








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