昨夜の降雪は、結局、さほどのものではなかった。その降雪は、一時、雨に変わったかと思ったら、夜半には、一時の勢いを見る影もなく失って、まるで "売り切れ御免、品切れ状態" とでも言わぬばかりに衰弱して行った。
こんな書き方をするのは、胸の内のどこかに "ホーラ、ネッ" と言いたい心境が潜んでいたからなのかもしれないが、結果的には、それで良かったのだ。今日の陽射しで、その大半が溶けてしまい、市民生活にほとんど影響を及ぼさない出来事に丸く収まってしまい、良かった、良かったということである。
朝のうちはまだ歩道などに雪が残っていた。そんな中を、特にやめる理由もなかったため、自分はいつもながらのウォーキングに出掛けることにした。 "チェーン" の件の代わりというわけでもないが、念のため "トレッキング・シューズ" を履いて出たりするところが自分でも恐れ入る。
残雪の白色が、家々の屋根といわず川の中州といわずあちこちに見受けられる中、川の流れの淵に白い鳥、二羽の姿が目に入った。冷たいであろう川面に足を浸しているコサギとチュウサギの二羽であった。そのうちのコサギの方は、川の流れの淵ぎりぎりのところで、小魚を狙っている様子である。
ところで、先日も同様の様子を観察することとなったのだが、その時に奇妙な動きに気づいたのである。川の流れを歩むコサギの動きは実に緩慢であり、忍足さながら、ゆったりゆったりと歩を進めるのであるが、水面下に覗けるコサギの黄色い足指だけは、小刻みに震えているのである。空腹の上の、この川水の冷たさからなのかと推測したり、まさか、緊張があまってのことや、武者震いというわけではなかろう、というように多少訝しく感じたものであった。
そうしたことがあって、今日もまたまったく同じ振る舞いをしているのに気づかされたというわけなのである。なお、その直後に、すばやく首を水中に突っ込み、何やら小魚らしきものを捕獲して飲み込む模様が続いてもいた。
こうして度重なって、奇妙な同様の仕草を目撃した自分は、その "足指の震え" 、これはコサギのひとつの "習性" ではないのか、と思わざるを得なかった。そこで、自宅に戻ってから、野鳥図鑑で調べてみることにした。と、案の定、次のような説明書きが目に入ったのである。
<小型のシラサギで川、水田、池、干潟、海岸などに生息し、都会を流れる川や池でも見られる。浅瀬に入り足をふるわせて、ものかげから魚を追い出してとり、カエルや水中昆虫も食べる。......>
自分が観察したコサギたちは、決して寒さや神経質であるがゆえに "黄色い足指を震わせ" ていたのではなかったのである。要するに、餌を得るための "生得的な技" のひとつであったようなのだ。足指だけが黄色で目だっており、それが小刻みに震える格好というのは、まるで "ヒトデ" などが暴れているようにも見えるだろうし、さぞかし小魚や水中昆虫たちなぞは慌てふためくこと必定だと思われた。
それにしても、コサギのような野鳥にも、しっかりと "進化論" 的な形跡が蓄積されていたのかと思うと、都会の自然現象も仇や疎かに見ていてはいけないと、ふと感じたものであった。
生きものたちだけではないのだろうが、今、この時に目にするものの一切には、過去から累々として積み上げられて来たヒストリーが隠れているのであって、そうした存在を了解しなければ "ものの意味" を十分にわかることにはならないのかもしれない、と感じさせられたのである...... (2008.02.10)
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