遭難のスノーボーダーたちを匿った雪山の "廃屋" ......

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 <遭難のスノーボーダー、7人全員救出 廃屋で夜明かし>( asahi.com 2008.02.05)というニュースに胸をなで下ろす人は多いだろう。都市部で生活している者たちにとっても、ここ二、三日の冷え込みと積雪には参っていたはずだから、雪山で二日も行方不明となっていた事件の推移を決して楽観的には想像しなかったと思われる。
 ところが、
<「廃屋発見、まるで映画」命つないだ幸運 7人生還
遭難した7人の命をつないだのは、廃屋だった。
 「廃屋を偶然見つけるなんて、まるで映画のような話だ」。雪崩事故防止に取り組む長野県白馬村のNPO法人「アクト」の元村幸時理事長(45)は驚く。......>(同上)
というように、まさに "奇跡" のような事情で助かったのだそうだ。

 <たとえ標高が低い山でも、雪が降れば『魔の山』になる。......偶然が重なり、救助されたまれなケース。......廃屋が見つからなければ危なかった>(同上)と話されるとおり、決して自然を侮ってはならないということであるに違いない。万事、ハッピーエンドとなるよう仕切られた "人里" (文明)の論理や感覚を、自然世界に横滑り(スノーボード?)させてはまずかろう。

 ところで、自然を "見くびるな" と強調した上でのことなのであるが、自分は逆に、こうした "奇跡" とも、あるいは "セレンディピティ" とも言える、そんな寛大な可能性を今なお残してもいるのが自然というものなのかもしれない、とそんなことを考えたのであった。
 簡単な話が、もし、あらゆる環境が "文明化(=人工化=市場経済化)" されてしまった大都市のど真ん中であったなら、雪に凍えそうになった者を寛大に迎え容れる "廃屋" なんてものが残されているだろうか、ということになる。大都市は、そんな、誰彼となく出入りを許容するような "廃屋" なんてものを許しはしない。ホームレスたちのダンボール小屋とて許していない。
 それどころか、救急車で運ばれる救急患者でさえ受け容れが拒絶される現実のあることに気づく。全然事情が違うではないかとも言われそうだが、結局は、 "人里" (文明)の硬直したシステム論理がなせる業という点では括れる事象ではなかろうか。

 唐突な視点で書いていることを自覚しているが、要するに "許容力を欠いてしまった文明世界" と "拒むことをしない自然世界" というような "対比関係" のようなものに着目しようとしているわけなのである。
 これは決して新規性のある問題なんかではない。ありふれた "人工世界 vs. 自然世界" とか "デジタル世界 vs. アナログ世界" というような対比のテーマだと言ってもいい。あるいは、久々に思い起こすことになるが "脳化社会(=都市化社会) vs. 自然世界" (c.f.養老孟司)だと言ってもよさそうだ。いや、このテーマは、 "脳" の働きの次元で考えてみることが最もふさわしいのかもしれない。

 何の著作であったか、養老孟司氏が "幼児虐待" の風潮について書いていたことを思い出す。同氏によれば、 "幼児" という存在は、いわば "脳化(=都市化=人工化=文明化=情報化=知識化 etc.)" される以前の "自然存在" なのであって、都市に住み、過度に、偏重して "脳化" されてしまった "大人たち" からすれば、その "制御" が完全に苦手な対象なのではなかろうか。だから、苛立ちだけが募る対象となり、彼らが無抵抗であるだけに簡単に暴力をもって報いることになるのではないか、とそんな意味の解釈をされていたかと思う。まさに正鵠を得た洞察だと思われた。
 それでは、昔はどうだったのだろうか、という点に当然関心が向くはずだ。あるいは、現在でも "上手に"  "幼児" たちを養育している大人たちはどうしてそうあれるのかという点にも眼が向くことになる。
 養老氏がその点をどう説明していたかを定かには覚えていないが、要するに、そうした大人たちは、 "幼児" たちの "自然性" を寛容に受け容れることができる "脳" の構造や働きを獲得していたということなのであろう。
 と言っても大それた事ではなく、 "人工化" された環境に慣れるだけではなく、 "自然" 環境にも精通していて、 "自然" 環境というものが人間の "割り切った思考" だけでは包み切れない "余剰物(不可解さ、ノイズ etc.)" をたっぷりと含んでいることを了解していたからではないかと思える。だから、 "幼児" たちの "自然性" を別段不思議だと感ずることなく寛容に寛容に対処したし、するのでもあろう。

 茂木健一郎氏(『それでも脳はたくらむ 』)によれば、 "脳" の働きにとって "生の体験" は重要かつ必須なのだそうだ。それは、 "生の体験" というものが、ひとつは "脳" と密接な関係にある身体全体を駆動させるからだそうだ。とともに、 "生の体験" というものは、編集され閉じられてしまった情報・知識(上述した "脳化社会" は、これらで構成されている!)とは異なって無数の "ノイズ" を秘めており、 "脳" をして、水を得た魚のごとくアドリブ的に必死で意味を探ることを仕向けるからだそうだ。
 そして、 "生の体験" は、 "脳化社会" のただ中の対話や対人関係でも十分に行えるわけだが、 "生の体験" の真骨頂は、まさに自然環境と向き合う時なのだそうである。確かに、自然環境は一々 "取扱説明書" を添付しているわけではないがゆえに、裸一貫、丸腰で対処しなければならず、まさに "脳" の活動の桧舞台だと言ってもよさそうな気がしてくる。

 今日書いたことを煮詰めてゆくならば、この情報化時代における "創造性の問題" にもつながりそうだし、また逆に "高齢者の認知問題" にも十分関係しているであろうし、さらに情報化時代における事故や事件についても示唆的なのではないかと感じている。情報化時代、情報化社会はその功績とともに、回避できない "トラップ" を用意してしまっているのかもしれない...... (2008.02.05)













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