タクシー・ドライバーの "つぶやき" 、そして "メタ・セルフ" (?) ......

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 先日、久々にタクシーに乗り、これまた久々に運ちゃんと世間話をした。
 話のきっかけは、タクシー料金の値上げ以降、利用客はどんなもんですか? というわたしからの投げかけであった。
 既に伝えられているように、めっきり客数は減っているとのことであった。何をやってるんですかねぇ、という批判めいた口調で継がれた言葉は次のとおりであった。
「それでいて、深夜料金は下げたんですよ。やることは逆じゃないですかね......」
 詳しい実情はよくはわからないが、通常利用=一般客、深夜利用=特殊客だと想定するならば、利用比率が高いとともに利用自粛の可能性も高いであろう前者を "値上げ" して "裏目" に出てしまったのは、やはり判断が妥当ではなかったようだ。加えて、深夜料金の "値下げ" という目論みも今ひとつ了解しにくい。
 話は、勢い、 "公的政策" の採られ方がとにかく理解しにくい、という言外に運ちゃんの主張が伝わってくるのであった。
 話題は当然、 "ガソリンの暫定税率" の問題につながって行くのだった。
「まるで、ガソリン税を下げると地方の道路建設がストップして、地方の人たちの生活が困るというような空気が作られていますよね。あれもおかしいと思いますよ。何故って、地方の人たちこそ、公共交通の手段が乏しいから、一家で3台、4台のクルマを利用していたりして、その分ガソリン代で汲々としているんですからね。それが下がれば大助かりのはずなんですよ。そうした人たちの声がほとんどTVなんかでも取り上げられなくて、地方が困る地方が困ると吹聴されてるわけですよ......。
 道路環境が未整備だとかも言われてますけど、わたしなんか、郷里の秋田に帰ったら、高速はいつだってガラガラだし、建設が未着工だと言ったって、現状で何の不自由もなくビュンビュン走れて用が足せますよ。
 今更、道路整備でもないんじゃないですかね。医者も少ないし、足りないものはほかにいくらでもあるように思いますよ......」
 一々もっともな話だと感じ、もっぱら相槌を打つ自分であった。ほどなく、次のような言葉が飛び出したのであった。
「みんな、ずいぶんと大人しくしてるもんですよね。そう思われませんか。個人的なことではわけのわからない犯罪をやるほどにキレる割には、政治なんかのおかしいことに何も言わないようでね。どうなってるんですかね。そこ行くと、ホラ、つい先ごろあったマ※※※※※の店長が裁判を起こしたっていうのは偉いと思いますよ。できることじゃないですよね。だって、名前も出てるわけだし、これから先、就職では敬遠されちゃうのは目に見えてますもんね。古い話ですが、江戸時代の捨て身での "直訴" っていうやつですかね......」
 多少飲んでいたこともあり、自分は、相槌どころか拍手でもしたくなるような共感を覚えてしまうのだった。

 タクシーを降りたあと、自分が思いを巡らせていたのは、やり切れないような政治環境の現実の酷さというよりも、それらの主たる原因が共通の認識とならないように蠢いているに違いない巨悪のしたたかさであったかもしれない。
 いろいろな人間が、さも目新しそうにいろいろな視点を繰り出してこの時代の現状分析をしているわけだが、それらによって、一向に変わらない巨悪のなしている事実が、免罪よろしく霞んで見えにくくされているとするならば、これほどにバカバカしいことはないと......。
 確かに、現状の人間世界の矛盾や苦悩はシンプルさを欠き、何かひとつの視点からの改革で事が済むというふうではなくなっているはずであろう。終わり無き継続的な改革ということになるのだろうが、だからこそ、 "構造的" な形を秘めていると思しき矛盾にこそ先ずは注目すべきなのではないかと思う。
 「小異を捨てて大同につく」という言葉があったが、残念ながら現代は、全くの逆現象、つまり「大同を捨てて小異に固執する」という袋小路に迷い込んでいる印象を抱く。これが、ポジティブな方向での "多様化" の現実なのであろうか。命を奪い合う必然性が何もないのに、ただ最も身近な存在であるというだけのことで場違いな感情の発露と残酷な結果が生じてしまうのは、あまりにも惨め過ぎる。
 自分自身にしたところが、もし「小異を捨てて大同につく」という言葉が、「自己を捨てて......」であるのならば、当然聞く耳を持たないだろう。しかし、今どきそんなことを要求しているのは、 "規制" という名によって官僚機構による支配の透明性をひたすら高めようとしているサイドの者たちだけなのではなかろうか。

 「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言い古されたことわざがあるが、確かに、「地獄への道」は "鬼たち" に取り囲まれた道なんぞではなかろう。 "善意" が敷き詰められた道とまでシニカルにはなり切れないでいるが、何か "心地よい姿" をまとった、 "ビリーバブル" な要因によって誘われるのであろうことだけは了解できそうだ。
 また、それは個別の何かという対象が問題だというよりも、 "それらしく魅了されてしまう" ような "受容スタイル" にあるのかもしれないと推測できる。ちょうど、夢の中での認知が、何をという対象はどうということもないにもかかわらず、やたらに感情の振幅だけは尋常ではないのと似ているのかもしれない。
 少なくとも、そのことわざに秘められている "逆説的" な意味合いのパラドックスが現実世界に浸透していることだけは間違いないと思う。妙な比喩で言えば、トーマス・マンの『マリオと魔術師』の世界が現に出来上がっているのだとも言える。
 そんな "魔術" を超えるためには、 "セルフ" を超えた "セルフ" = "メタ・セルフ" を構築しなければならないところではあるが...... (2008.02.03)













【 SE Assessment 】 【 プロジェクトα 再挑戦者たち 】








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