街角で遭遇する "明日はわが身" の光景 ......

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 久々の晴天で、今朝のウォーキングは爽快であった。
 が、帰路も半ば過ぎた頃、ちょっとした事に遭遇することになった。
 横断歩道の手前側で、年老いた婦人が "四つんばい" となってしまい、その脇でその年寄りを心配そうに覗き込む若い女性が付き添って座っていたのである。すぐ近くには、その老婦人がつかまって歩いていたと思われる "手押し車" が所在なさそうに立ち竦むかのように置かれてあった。
 交通事故でもあったのかと自分は懸念し、近づいてかがみながら話しかけてみた。
「どうかしたんですか?」
 すると、脇にしゃがんで座っていた女性が、顔を曇らせながら話すのだった。
「この方が、横断歩道の途中で転んでおられたので、ここまで手をお貸しして移動して来たんです......」
 その小柄な老婦人は、相変わらず "四つんばい" 状態を続け、立ち上がろうとはしている様子であったが思うようにならないようだ。両手をフニャフニャと小刻みに震わせている。顔の表情はよく窺えなかった。日焼け防止のためなのであろうか、ゴルフのキャディさんが被るような大きなつばの帽子を深々と被っていたからだ。
 自分はその老婦人に向かって尋ねてみた。
「発作でもあったのですか?」
 もし、事情によっては急いで救急車を呼ばなくてはならないと考えていたのである。
 と、弱々しく返事が返ってきたのだった。
「いいえ、ご心配なく......。時々あることなんです。体中の関節が痛んでいまして、さっきも、横断歩道の途中で足が砕けて転んでしまったんです......」
 どうやら、緊急手当てを要するような "発作" ではなさそうなのでひとまずほっとさせられた。しかし、まだ立ち上がることができないような様子であった。
「お住まいはどちらですか、送って行きますよ」
  "手押し車" につかまっても、この状態では首尾よく歩くことも難しそうに見えたので、自分はそう話しかけてみた。
 老婦人は、相変わらず気持ちは必死に立ち上がろうとしているにもかかわらず、一向に手足が思うようにならないもどかしさを続けている。が、住まいの場所を説明するのであった。
「この坂を降りて、小学校の前の信号を左に入った......」
 それを聞いて、自分は、その場所はおふくろが住んでいる場所のすぐ近辺だと合点することができた。
「じゃあ、付き添って行くことにしますよ」
と、自分はそう言った。と、その時、
「クルマでお送りしましょうか? そこに停めてありますから」
という声が飛び込んできたのだった。ふと見上げると、先ほどからの女性とは別の新たな女性が腰をかがめて覗き込んでいたのである。そして、黒の軽のワンボックスカーが交差点を曲がった角付近に停められてあるのがわかった。
 もちろんそれが一番いい選択だと思えるのだった。その地点から、お住まいの場所までは優に4、500メートルはありそうだったし、しかも、その途中には傾斜が急な長い坂が寝そべっていたからである。
 こうして、その女性ドライバーと自分とで、老婦人を乗車させることになった。老婦人を抱きかかえて乗車させたが、不自然な格好であったためか結構重量を感じたのは予想外であった。で、自分も乗りかかった舟なので、同乗して付き合うことにする。
 クルマの助手席には、その女性ドライバーの娘さんらしい幼稚園児くらいの女の子が同乗していた。何か "楽しいこと" が起こっているとでも感じているのか、自分の方向いて、挨拶代わりににっこりと笑って見せていた。
 運転中、その女性は、自己紹介代わりに二、三の言葉を口にしていた。介護関係の仕事をしているので、ご老人を乗せることが時々あるとのことであった。そして、
「いつ何があるかわからないんですから、 "お互いさま" なんですよね」
と、さりげなくつぶやく姿は、実に聡明な爽やかさを感じさせた。
 目的地に着き、その女性ドライバーたちには厚く礼を言って別れた。で、自分は、その老婦人を、同居していると聞いた娘さんに後を引き継いで、それで漸く一件落着をみることになったのである。ちなみに、その老婦人は73歳とかで、まさに全身の関節が痛む病気で病院に通っているとかであった。
 人の世は、まさに、いつ何があるかわからないものである。だから、事情が許す範囲内でできるだけのことをさせてもらうこと、特に、自分の身体でありながら思うようにはならない、そんなお年寄りに対しては、ちょいと "手を貸す" 仕草位は当然のことだと思われる。 "明日はわが身" でもあり、 "お互いさま" だというのが "ものの道理" であるに違いない...... (2008.06.01)












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