景況がいよいよ不穏さを増している。日本の株価の低迷、続落ぶりもさることながら、米国の状況も惨憺たるものだ。 "サブプライムローン問題" に端を発する金融不安が根深く尾を引いているのは周知である。加えて、 "原油高騰" とこれを引き金とする農産物価格の高騰などがインフレ傾向を促してもいて、経済環境はかなりこじれた状況へと入り込んでいる。
そこへ持って来て、いま一つ不気味な動きまで加わるようになってしまったようだ。というのは、 "原油価格の大幅反落" という事態のことだ。
<NY原油、大幅反落 8月物は138.74ドル
【NQNニューヨーク=海老原真弓】15日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は5営業日ぶりに大幅反落。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の8月物は前日比6.44ドル安の1バレル138.74ドルで終えた。米景気減速で原油需要が減るとの見方などから急速に売りが膨らんだ。
バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が議会証言で景気減速への懸念を示した。証券会社オッペンハイマーの石油アナリスト、ファデル・ゲート氏は「景気減速による需要減の思惑などが売り材料になった」と指摘した。......>( NIKKEI NET 2008.07.16 )
"原油価格の大幅反落" の<大幅反落>は、決して悪い状況ではない、とも言えそうではある。 "原油高騰" が世界中に巻き散らかしているネガティブな影響を考慮すればという視点からである。
しかし、現状の<大幅反落>は、米国経済の<景気減速による需要減の思惑>ということだそうで、これはこれで結構厄介な事態になったと見なければならないようだ。
かつて、大前研一氏は次のような指摘をしていた。
<いま石油をはじめ、あらゆる鉱工業品価格が激しく値上がりし、また農産物などもこれにつられて上がっている。すなわち生活必需品から見ても相当な値上がり(=インフレ)である。しかし消費は落ち込みリセッションということになれば、これは文字通りスタグフレーション、ということになる。>(NIKKEI BP 「産業突然死」の時代の人生論」第120回:衰退する米国経済にマネーを呼び戻す方法 2008/03/19 )
スタグフレーション(stagflation)とは、<経済現象の一つである。stagnation(停滞)、inflation(インフレーション)の合成語で、経済活動の停滞(不況)と物価の持続的な上昇が共存する状態を指す。>(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)とあるように、かなり "たちの悪い" 否定的景況のことであり、日本経済はすでにこの傾向に陥っているのではないかという指摘もある。
だが、 "サブプライムローン問題" に端を発する金融不安が二番底、三番底で揺れる米国経済が、ここに来て "スタグフレーション" 性のリセッションへと移行ということになれば、一体どんな事態へと突入することになるのであろうか。とりあえず、米国株価水準とドル相場がますます不安定なものになるだろうことだけは明らかなようだ...... (2008.07.16)
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