昼過ぎに郵便局の前を通った際、ATMの入口前に並ぶお年寄りたちの近くで、警察官が1人付き添っているのが目に入った。
ははーん、これが "振り込め詐欺被害防止集中警戒日" の動員体制なんだな、と気づかされた。
<ATMで警官5万6千人厳戒 振り込め詐欺防止へ
振り込め詐欺被害を防止するため、全国の警察は年金支給日に当たる15日を現金自動預払機(ATM)の集中警戒日と位置付け、約5万6000人の警察官を動員、ATMに訪れた高齢者らに注意を呼びかけるなどの警戒を始めた。
警察庁によると、全国に約9万8000カ所あるATMのうち約8万1000カ所に警察官が張り付いたり、巡回したりするという。
このうち、警視庁は同庁警察官の3分の1を超える1万5000人以上を動員。東京都内約1万2000カ所のATMすべてに警察官を張り付かせた。この日はATMを利用する高齢者全員に声を掛け、被害に遭わないよう呼び掛ける。
警察庁は10月を振り込め詐欺撲滅月間としているが、特に年金支給日に当たる15日は「被害ゼロの日」として、集中した警戒をするよう全国の警察に指示していた。>(2008/10/15 08:25 【共同通信】)
先日にも書いたが、こうした対応がなぜもっと早く採られなかったものかとつくづく思えた。なんせ、年間二、三百億円もの被害が何年も続いて来たのである。時代環境そのものが、いろいろな側面で "弱者" からむしり取る傾向が強まっている中、この "振り込め詐欺" こそは卑劣極まりない犯罪である。
もっとも、 "詐欺" という犯罪で卑劣でないものなんぞはなかろうが、いわば "社会環境の盲点" を巧妙に利用するところが卑劣極まりないわけである。優しさがゆえの高齢者たちの心のスキ、そしてそうした高齢者たちがとかく孤立している状況、これらは現代社会が必然的に生み出している "環境の盲点" 以外ではなさそうだ。
また、ATMであるとか、ケータイであるとかというIT環境自体にしても、その扱いに不慣れなお年寄りたちと "並存している" という組み合わせも、少なからず "環境の盲点" と言って差し支えなかろう。
こうした "環境の盲点" が物語るものは、現代版 "姥捨て山" 的な時代風潮なのではなかろうかと思ってしまう。
そもそも、この "振り込め詐欺" の前の通称 "オレオレ詐欺" を思い起こせば、こんな "詐欺手口" が成立してしまう根底には、お年寄りたちが日常的コミュニケーションから遠ざけられている現実が透けて見えていたはずである。
もし、日常的に血縁関係の者たちとの連絡などがあれば、いくら咄嗟のことであっても状況認識に通じる可能性は高まるのではなかろうか。
そんなことから、警察官らの動員による集中警戒もさることながら、お年寄り周辺の関係者たちが、血の通った連絡をすることも重要であるように思えたのであった。とにかく、咄嗟の場合に相談ができる、そんな環境が必須であるに違いない。
また、現状のような電話着信のあり方についても工夫が欲しいところだ。常々思うのだが、電話ほど無作法というか、無防備なものはなかろう。最近では、 "発信者番号" が液晶表示されて、電話に出る前に相手を選別できるようになったが、それが当然のことではなかろうか。まして、これほどに "悪意の第三者" が攻撃的に発信をする環境にあっては、受信側が自動的にプロテクトできる仕組みを技術的にもっと工夫して当然だと思うのである。
年間何百億円もの被害が発生しているのであれば、そうした被害防止に向けた研究投資がなされても一向に不思議ではないだろうと思われる。
現代的犯罪もまたその防止も、やはり人間の心理や人間関係のあり方に起因していることに変わりはなさそうだが、それに加えて、犯罪防止に向けた "対抗技術" とでも言うべきものにもっと関心を向けたいものだ...... (2008.10.15)
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