"魔法の杖" のような "レバレッジ" を効かせて儲けることは、逆もまた真なのであり、いずれは "レバレッジ" のマイナス効力を被ることになるというわけだ。別に、 "レバレッジ" なんぞに縁がなく、だから破格に儲けることにも縁のない者の僻みで言っているのではない。まったくないとは言わないが......。
要するに、 "イージーカム・イージーゴウ" という慣用句の意味するところは、統計的な事実を言っているのではない。言うならば、 "人間心理" に潜む危うさに焦点を合わせているだけのことのように思える。
つまり、人間の心理においては、 "好ましい事象" は信じ易く、そしてどうしても "過大評価" しがちなものであろう。だから、過剰に "継続する(してほしい)" という思いに支配されてしまうのであろう。だれだってリスクテイキングをする際には、 "自分だけは......" という思い込みや、事実認識とかけ離れた "希望的観測" などによって一歩も二歩も踏み込み、勇み足となってしまうものであろう。
リスクテイキングにおける勝ちの秘訣なんぞは、あるようであって結局はないと言うべきなのかもしれない。もしあるとするならば、妥当な "潮時" を読み、リスクテイキングの土俵から思い切りよく去ることなのかもしれない。しかし、並みの人間にはそれができない "人間心理" の虜となっているのであろう。
ところで、あまり表立った場所で聞くことはないのだが、 "ここだけの話だけどね......" というようなシチュエーションにあっては、この時期、かつての "イージーカム" の "勝ち組" さんたちが、 "イージーゴウ" の崖っぷちで悶々としているという話が耳に入ってくる。こちとらなんぞは、 "イージーカム" の "勝ち組" でもないのに、崖っぷちで悶々とさせられることだけは共通しているのだから情けないが......。
で、そうした人々は、やはり、どうもかつての "成功体験(?)" にこだわり続けて、 "横恋慕" の醜態状態にあるかのようである。
経営に関するジャンルでは、 "成功体験に囚われるな!" というようなことがしばしば指摘されてきた。
多分その意味は、状況というものは日進月歩して変化しているため、過去の "成功" をもたらしてくれた環境を後生大事に前提視することは大間違いだという点にあるはずだ。しかし、 "人間心理" というものは、頑迷(がんめい)なものであり、どうしても過去の "成功体験" に固執してしまう。しかも、その "成功" がイージーにもたらされて客観的な因果関係を掌握していなかったり、または部下などの他者たちに多くを依存していたりした場合には、なおさらのこと固執することになりそうだ。
時代環境は、実に大きく変貌してしまったかのようである。そんな状況の中で大半の者が何らかの苦悩に足を取られている。
ただ、今だけでなく従来から苦悩の連続でしかなかった者がここで知っておいていいことがひとつありそうである。それは、現在進行中の "危機状況" の過程には "苦悩の再分配" という現象もしっかりと織り込まれていそうだ、という点である...... (2009.01.10)
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