"アスペルガー症候群" よりも "KY" 敵視、 "空気支配" の方が問題 ......

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  "アスペルガー症候群" 【 注.1 】という<脳の機能障害>の問題が取り沙汰されている。ここで今書こうとしているのは、そんな専門的資格もないことでもあるし、この "障害" としての "症候群" 自体についてではない。
 むしろこの問題の "周辺的現象" についてなのである。端的に言えば、ひとつは、 "空気を読む" ということに躍起となる風潮の方が "問題含み" なのではないか、という点である。また、もうひとつは、自分自身にもありそうな気がしている同 "症候群" 的要素・傾向は、個人の性格がどうこうと言うよりも、現在の時代環境や社会環境に "根を張る" 現象のように思えてならない点である。

【 注.1 】 つい先日、次のようなTV番組があった。
<引きこもり、うつ病など20~40代の間で深刻化する問題の背後の多くに、実はアスペルガー症候群が潜んでいることがわかってきた。アスペルガー症候群は脳の機能障害で、知的障害はないが他人の気持ちを推し量ったり、暗黙のルールを理解できないため、職場では「変わった人」と見られ、孤立を深めて社会からドロップアウトしていく人が少なくない。一方でIT技術など特定の分野において秀でた能力を持っている人も多く、周囲が障害を理解し、対応を工夫すれば、目覚しい活躍をすることも分かってきた。企業でも今、アスペルガー症候群の人を積極的に採用し、その力を活かそうという取り組みが始まっている。"アスペルガー症候群の人"たちが社会で活躍するためには何が必要なのか、当事者と雇用する側双方の取材を通して考える。出演者:正高 信男さん(京都大学霊長類研究所 教授)>「『アスペルガー症候群 活躍の場を求めて』/NHKクローズアップ現代(NO.2880) 2010年 4月21日(水)放送」
 なお番組では、この "アスペルガー症候群" (の特徴)として以下3点を挙げていたかと思う。
●相手の気持ちを推し量れない。
●会話がうまくできない。
●極端にこだわりが強い。
 また、キャスターから正高 信男教授への質問、「障害と性格との区別は?」に対して出演教授の回答は、「ひとつの決定的な基準があるわけではない。多面的・総合的に判断される。日常生活での社会的不適応の有無、その程度は留意されるべき。......」であったかと記憶している。

※ 以下は、 "更新" にて追加しました!

 この問題について書く上で自分が先ず注意を払ったのは、<脳の機能障害>としての "アスペルガー症候群" にある方たちを揶揄したり、差別したりすることが決してあってはならない、という点であった。
 多分、この点についてはNHKの番組制作者たちも同様の配慮をしたに違いない。だから、<アスペルガー症候群の人を積極的に採用し、その力を活かそうという取り組み>のその紹介という視点を貫いたのだと思われる。
 だが、この問題の特殊な部分は、医学的に<脳の機能障害>が認められない健常者であっても、限りなく同 "症候群" 的要素・傾向を秘める現代人たちが少なくない、という点なのかもしれない。
 なおかつ、さらに事情が厄介なのは、現代の時代環境が、経済ジャンルをはじめとした多くの場面で、<●相手の気持ちを推し量れない。●会話がうまくできない。●極端にこだわりが強い。>という要素・傾向を "問題視" する or せざるを得ない、そんな風潮が渦巻いている点なのであろう。

  "KY" (空気が読めない?)というアホクサイ言い回しが人々の耳と感性とを逆撫でしてきたことは知られている。誰が言い始めた言葉だかは知らないが、「 "KY" って一体何なの?」というあって当然の疑問をも薄ら笑いをして封じ込めてしまうような仕掛けを弄した、その "言い出しっぺ" の精神的下劣さに呆れ返っている。あなたは "いじわる" 手法考案の天才だ! ととりあえずは "賞賛" しておきましょうか。
 この、稚拙な "レッド・パージ" 手法のような "暗号" 、 "KY" は、一体どの程度の知的考察をベースに持っているのでしょうか? 多分、何もないはずです、 "空気" 以外には。しかも自分が属する "狭隘(きょうあい)な" 集団環境の "空気" のはずです。
 ところで、 "アスペルガー症候群" が多くのサラリーマン層に関心を持たれた皮切りは、新書として異例のベストセラーを続けている、岡田 尊司著『アスペルガー症候群』(幻冬舎新書)なのだそうだ。
 そして、その帯には、<学校や職場にいる "アス君" 。「問題児」「KY」扱いしていませんか?>という文言が打ち込まれてある。売らんかなの出版社がその宣伝文句に何をどう書こうが "カラスの勝手" ではあろう。ただ、 "アスペルガー症候群" という特殊医学問題とサラリーマン層とを橋渡しする "アイキャッチ・コピー" として<「KY」>という "暗号" が、しっかりと使われていたということなのである。

 同新書が異例のベストセラーだという事実は、サラリーマンたちの職場、あるいは自身の多くが、 "KY" という "暗号" が意味しようとする、要するに "コミュニケーション齟齬(そご)" 問題を抱えているということになるのであろうか。
 概して、そうした状況観測は外れてはいないと思われる。ただ、その問題状況を "KY" という個々人側の姿勢要素の問題に還元することだけで、合理的な打開策が得られるのであろうか。
 しかも、 "KY" という "いじわる暗号" は、 "空気" 自体の良し悪しを不問に付した上で、その "空気" のままに処することを暗黙のうちに要求しているはずである。
 現代の職場での仕事が、個々人間の緊密な連携でコラボレイトされなければ成果が上がらないことは百もわかる。しかし、このコラボレーションが上手く行くには、個々人のスタンス以前に、 "職務構造" のルールであるとか、それに基づいた "組織構造" であるとか、さらには "活性化された社風" であるとかの "客観的職場環境" の整備が基本なのではなかろうか。
 こうした "客観的" な器が無い職場では、昨今のような "超・個人主義" 的な時代ならば、言葉以前の "阿吽の呼吸" に寄り掛かったような連携を期待する方が甘いと言うべきなのかもしれない。 "KY" 的事態は起こるべくして起きていると言っても過言でもなかろう。

 で、むしろ問題は、にもかかわらず "KY" というような "いじわる暗号" を振り回して、変貌自在な "妖怪" のごとき "空気" をイニシアチブにして難局を乗り切ろうというのは、日本人の悪い癖なんでしょうかねぇ......。

<以前から私は、この「空気」という言葉が少々にはなっていた。そして気になり出すと、この言葉は一つの "絶対の権威" の如くに至る所に顔を出して、驚くべき力を振っているのに気づく。「ああいう決定になったことに非難はあるが、当時の会議の空気では......」「議場のあのときの空気からいって......」「あのころの社会全般の空気も知らずに批判されても......」「その場の空気も知らずに偉そうなことを言うな」「その場の空気は私が予想したものと全く違っていた」等々々、至る所で人びとは、何かの最終決定者は「人でなく空気」である、と言っている。>(山本七平著『「空気」の研究』文春文庫 / 1983.10.25 )
 山本七平氏は、だから、しょうがない、と言おうとしているのではもちろんない。だからこそ、この度し難い< "空気支配" >をどう制御すべきかを巡って、名著『「空気」の研究』を著したわけだ
<空気を醸成して "空気支配" を完成しようとする者にとって、あらゆる手段で排除すべき者は、対象を相対化する者である>(同上)という指摘は、戦略的ヒントになりそうか...... (2010.04.26)













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