"まったり"できないご時世/日経平均が年初来安値/"円独歩高"?/映画トロッコ ......

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 もはや "まったり" 【 注.1 】とした気分にはさせてくれないご時世になったようである。
 昨日は、 "日経平均1万円割れ" を懸念していたものだったが、いましばらく先のことかと思いきや、その途端にドル/円も一時、90円を割り込む円高となるし、日経平均は容易く1万円を割り込み年初来安値の9700円台に滑り落ちた。
 市場では、 "円独歩高の動き" 【 注.2 】を懸念する声もあり、 "まったり" とした気分からは隔絶したピリピリとした現状が長期化するのかもしれない。

【 注.1 】
< まったり とは日本語の副詞である。近畿方言で主に味覚を表す擬態語として用いられたが、1990年代からのんびりと落ち着いた様子・気分を表す言葉として全国的に用いられるようになった。「まったり」は元々、柔らかさのなかにコクがある様子、重みがあって奥行きのある様子をいう言葉で、主に味覚に対して用いられた(口当たりまろやかで、とろんと口中に広がっていく様子)。......ネットスラングとしての「まったり」は、炎上や荒らしが起きやすい背景において、そのようなことが起こらないよう各人が条件反射的な書き込みや挑発を行わない穏やかさを心がけることを指す。>(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

【 注.2 】
<市場では、ドイツの株空売り規制や米金融規制改革法案の上院可決など、金融への規制強化の流れを嫌気するムードも広がっており、株安連鎖に歯止めがかかる兆候はみえない。さらにドイツ、フランスの対立という欧州連合(EU)にとって最も避けなければならない構造問題が露呈し、通貨ユーロをめぐる環境は厳しさを増している。日本にとっては、円独歩高の動きが株安につながる危険な展開になってきた。......
 東京市場での株安センチメントに拍車をかけたのは、円の独歩高だった。......
 ユーロ介入観測で、ユーロ/ドルが1.26ドル台で推移しているため、円への買い圧力が目立つ展開になっている。弱いユーロとユーロ介入観測の中で、円独歩高の展開が鮮明になりつつある。ある国内市場関係者は「日銀が21日の決定会合後に、追加緩和するとの観測が一部の市場関係者の中で流れていた。成長基盤支援の方策以外に何も出なかったので、円買いを仕掛けようとする向きには、好都合な展開になった可能性がある」と述べる。先の邦銀関係者は「円高─日本株売りの構図で投機筋が仕掛けてくることも予想される」と話す。......>(世界的な株安連鎖続く、円独歩高から株売りの危険な兆候/ロイター/2010年 05月 21日 14:18 JST

 夕刊を広げたら、ロードショー広告紙面で、川口浩史監督の新作『トロッコ』の案内が眼についた。もちろん、『トロッコ』とは芥川龍之介の短編名作である。映画の方は、芥川短編をモチーフにしてはいるようだが、ストーリーも脚色され、時代も現代に置換わり、場所は芥川原作の自然描写を髣髴(ほうふつ)とさせる台湾となっているらしい。しかし、どう脚色されようとも原作のテーマは、 "家族愛" という視点から踏襲されているとのことだ。
 テーマを "家族愛" と読み解くことも十分に妥当だとは思うが、もう少し "抽象化" してみたいような気もしている。 "世知辛い日常生活世界" と "そうではない世界" との対置とでもいうふうに......。
 後者の "そうではない世界" はいわく言い難い内容を持つが、"世知辛い日常生活世界" のいわば基盤となっている、いた "世界" であり、シンボリックに言えば "ゲマインシャフト(フェルナンド・テンニエス Ferdinand Tonnies )" 的世界となりそうだ。家族・地域社会やそこでの人々の "まったり" とした関係や意識・感覚が対象となっていそうだ。事によれば芥川龍之介の場合、 "芸術" もこの世界と通底していたのかもしれない。
 一応、この辺の事情について書いた過去の日誌の関連部分を引用しておく。

【 芥川龍之介の小説『トロッコ』という作品はよく知られている。
 主人公<良平>が八つの時、<小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事>が始まり、<良平>は大層興味を抱く。やがて、工事現場の<土工>の気まぐれで、<良平>はトロッコを押したり<土工>と一緒にそのトロッコに載ったりすることがてきるようになる。
 有頂天になってかなり遠出をしてしまった<良平>であったが、日もとっぷりと暮れかかる頃、<土工>が口にした、
「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」
という一言で、<良平は殆(ほとん)ど泣きそうに>なる。しかし、<泣いている場合ではない>と思い、来た道を<どんどん線路伝いに走り出>し,心乱れるままでやっとの思いで村の自宅にたどり着く。
 そして、小説は以下のように結ばれる。

< 彼の家(うち)の門口(かどぐち)へ駈けこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにはいられなかった。その泣き声は彼の周囲(まわり)へ、一時に父や母を集まらせた。殊(こと)に母は何とか云いながら、良平の体を抱(かか)えるようにした。が、良平は手足をもがきながら、啜(すす)り上げ啜り上げ泣き続けた。その声が余り激しかったせいか、近所の女衆も三四人、薄暗い門口へ集って来た。父母は勿論その人たちは、口口に彼の泣く訣(わけ)を尋ねた。しかし彼は何と云われても泣き立てるより外に仕方がなかった。あの遠い路を駈け通して来た、今までの心細さをふり返ると、いくら大声に泣き続けても、足りない気もちに迫られながら、............
 良平は二十六の年、妻子(さいし)と一しょに東京へ出て来た。今では或雑誌社の二階に、校正の朱筆(しゅふで)を握っている。が、彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出す事がある。全然何の理由もないのに?――塵労(じんろう)に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のある路が、細細と一すじ断続している。............>(青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/ より)

 自分がこの小説を時々思い起こすのは、<が、彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出す事がある。全然何の理由もないのに?>という箇所が妙に印象に残っているからなのだ。
 大人となった<良平>の記憶には、初めて味わった泣くほどの心細さ(薄暗い藪や坂のある路......)が鮮明な残像として沈着し、それと対比する明かりの下での父母や近所の人たちの姿が残り続けたのであろう。そして、この残像としての記憶を、<良平>は<全然何の理由もないのに?>蘇らせることになる。それは日常生活に生じるちょっとした "スリット" を通して垣間見る "貴重な何か" であるような感じなのかと想像できる。】( 日常生活の "スリット" から覗ける "脳内の深層"?/当日誌 08.06.24

  "まったり" とした気分になることをきっかけにして、 "世知辛い日常生活世界" (正しいのかどうかさえ分からないにもかかわらずわれわれは巻き込まれてしまっている)に向けて若干の距離を置いてみることが必要なのかもしれない。
 ただ、その必要性には<全然何の理由もない>かもしれない。とかく "ホントーに大事なコト" がそうでありがちなように...... (2010.05.21)













【 SE Assessment 】 【 プロジェクトα 再挑戦者たち 】








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