"惨憺たる事態" の中で発せられる「信念を持って頑張る」という首相の言葉がとてつもなく虚しく響く。他に妥当な選択肢が見つからない状況での続投表明なのであろう。
確かに、下記のような<惰性的な発想>は慎まれるべきだろう。
< 何より考えるべきなのは鳩山政権誕生の歴史的意義である。有権者が総選挙を通じ直接首相を代えたのは、日本近代政治史上初めてのことだ。
政治改革は政権交代のある政治を実現した。永久与党が短命政権をたらい回しする政治からの決別である。選ぶのも退場させるのも一義的には民意であり、選んだらしばらくはやらせてみるのが、政権交代時代の政治である。
歴史的事件から1年もたたない。政治的な未熟さの克服が急務とはいえ、旧時代の「政局」的視点から首相の進退を論じるのは 惰性的な発想 である。>(首相の普天間「決着」―政権の態勢から立て直せ/朝日新聞社説/2010年5月29日)
言うまでもなく、前自民党政権のごとき、安直な "首の挿げ替え" 、 "表紙" の差し替えという "いかさま" は論外であろう。しかし、直近の "世論調査" の "政党支持" で表れている "自民党支持への揺れ戻し" 的な数字現象を踏まえると、上記文面の、 "政権交代" という "歴史的意義" が台無しにされかねない危うさも危惧される。
とすれば、首相はここでは、 "何食わぬ顔" で「信念を持って頑張る」と表明するだけではなくて、 "辞任" にも匹敵するほどの "重み" や "内実" のある "総括" をしなくてはなるまい。「信念を持って......」というような、主観的な言葉ではなくて、具体的かつ実践的なレベルでのプランなりが明示されなければならない。
さもなくば、 "政権交代" という "歴史的意義" は "不当に損なわれ、辱められる" ことになり、誰も望まぬ不幸な "反動" ばかりを増長させることになりかねない。
多々 "猛省" すべき点がある鳩山政権かもしれず、それらを列挙すれば切りがないと言うべきかもしれない。
そんな中で、やはり注目せざるを得ないのは、「政治主導」への変革という課題の、その困難さが予想以上であったということになるのかもしれない。決して国民のためにはならない「官僚主導」政治から離脱しようとした構えは正しかったはずである。
今や、ぬけぬけと野党としての批判に転じている自民党だが、そのお粗末なキャパシティで立ち回ってこられたのは、すべて「官僚主導」のお膳立てがあったからだと言っても過言ではなかろう。 "官僚作文" を読んで、しかも読み間違って答弁する首相や議員を見ていれば容易に推定できるところだ。
しかし、その "いかさま" から離脱することを、民主党政権は宣言し踏み出した。が、いかにも "準備不足" 過ぎた。いや、幾分、 "なめてかかった" のかもしれない。
"なめた" のは、現代政治における「官僚機構」の占める比重の大きさに対してがひとつであり、もうひとつは、 "政治家資質の劣化!長期低落傾向!" の酷さではなかったかと思われる。
極端な表現をすれば、 "政治家" たちは、旧態依然の "個人商店" 的ステイタスからさほど出ない範疇で自己を甘やかし続けてきた......のかもしれない。片や、「官僚機構」が巨大な質量と特権にモノを言わせての "成長(?)" を享受してきたのに対して......。しかも、ついでに言い添えれば、長年の "日米構造協議" を通じて、"「官僚機構」-米国政府" という隠れた "リンケージ" が機能し続けたとするならば、何をかいわんや、ということになろう。
残念ながら、以下の<社説>の指摘がそのまま現実を言い当てていそうである。
<...... ■「問い」あって解なし
普天間問題の迷走は、鳩山政権が抱える弱点を凝縮して見せつけた。
成算もなく発せられる首相の言葉の軽さ。バラバラな閣僚と、統御できない首相の指導力の欠如。調整を軽んじ場当たり対応を繰り返す戦略のなさ。官僚を使いこなせない未熟な「政治主導」。首相の信用は地に落ち、その統治能力には巨大な疑問符がついた。
もとより在日米軍基地の75%が沖縄に集中している現状はいびつである。県民の負担軽減が急務ではないかという首相の「問い」には大義があった。
しかし、問いに「解」を見いだし、実行していく力量や態勢、方法論の備えが決定的に欠けていた。
普天間に限らない。予算の大胆な組み替えにしても「地域主権」にしても、問題提起はするものの具体化する実行力のなさをさらしてしまった。......>(首相の普天間「決着」―政権の態勢から立て直せ/朝日新聞社説/2010年5月29日)
<利益誘導など小沢氏の古い政治手法>(同社説)も願い下げであるが、TV番組などで "評論家" 気取りの<「問い」>の姿勢だけに終始し、 "パフォーマー" であることをもって "政治家" だと錯覚してきた者たちを、この際 "一掃させたい!" ものである...... (2010.06.01)
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