この間の自分の日誌を振り返ると、"電子書籍(eBook)" というテーマをめぐっていろいろと書いている。そして、その書き振りからすればやや "テクニカル面" に比重を置いているかのような感触である。
別に、それが悪いとは思わないし、そんなことにこだわることなく、書きたい衝動に駆られたことを書けばいいはずに違いなかろう。
ただ、ひとつ留意しておきたい点は、事、"電子書籍(eBook)" というテーマには、多面的な要素が絡んでいるということなのである。
もちろん、大小の "技術的課題"、"テクニカル面" の要素が多々含まれているし、また "ビジネス的" な要素も、大は アップル vs. アマゾン vs. グーグル などなどが "プラットフォーム戦争" でしのぎを削るビジネス戦略的問題から、巷のニュービジネスに至るまで多彩なかたちで遍在している。こうした側面を鳥瞰するだけでも、このジャンルに足を踏み入れてみる価値はありそうな感じであろう。
が、今ひとつこだわってみたい点は、"電子書籍(eBook)" というジャンルには、"小説"などが典型的であるように、時代の人間たちの "マインド" の問題が深く関係していると思われる点なのである。このあたりの問題を、言ってみれば "電子書籍(eBook)" というテーマの "本質面" だと捉えてみたい気がするのだ。
確かに、"電子書籍(eBook)" というテーマが脚光を浴びているのは、それらを閲覧するリーダーである "プラットフォーム" に関わる技術的、ビジネス的領域での "加熱" があることは否めない。
だが、こうしたインフラ整備が進んだとしても、これらを活用して "新しい読書形式" を受け入れる受け手側に積極的な呼応がなければ、ここまで "加熱" することにはならなかったはずだ。つまり、技術的、ビジネス的領域での動きは、一見先行しているように見えはするが、実は、 "受け手の一般個々人の側" に、"電子書籍(eBook)" やその "プラットフォーム" のようなプロダクツを願望する兆候が既にあったのだと考えられる。よく言われる「こんなモノが欲しかった......」というあのセリフが言い当てているように......。
こうした側面に眼を向け直して、"電子書籍(eBook)" というモノに託す人々の "潜在的願望" の実像をもっと良く照らす必要がありそうで、もし、その部分を軸足にして行かないならば、この "加熱ぶり" も一時のブームとして終わる可能性もあり得るのだろう。
つまり、"電子書籍(eBook)" というテーマの "本質面" とは、こうした現時点での "受け手の一般個々人の側" の、その "感性・意識の変貌" にかかわる問題ではないのかと予感させられるのである。
ところで、"電子書籍(eBook)" には幅広いさまざまなメリットがある。しかし、そのメリットを享受している無数の受け手たちの人物像の総和を想像してみたところで、あまり説得力のある説明がなされるとも思えない。
だから一時期の "DVD 販売" のような、 "名画のラインアップ" 方式を、この "電子書籍(eBook)" ジャンルで再現したとしても、何か違うなぁ......、という結果にしかならないような気もする......。
むしろ、"電子書籍(eBook)" の "本質面" を探るべく、視界を広げるよりも "視点を深める" ことの方がより重要な姿勢となるような気がしている。
と言うことになると、"電子書籍(eBook)" を "淡々と楽しんでいる" 人々というよりも、むしろ "電子書籍(eBook)" を "唯一無二の掛け替えのない存在" だと感じて、思い入れをしている人々の "ニーズのあり方" をこそ吟味してみることが緊急の課題ではなかろうかと......。
そう思い定めると、一見、ローカルなサンプル的現象だとして看過されかねない "ケータイ小説" というジャンルとその参画者たちの実態こそが、意外と "電子書籍(eBook)" の "本質面" を "先駆け" 的に照らしていたのかもしれないと思えてきたりするのである。詳細はまた別の日に続けたい...... (2010.10.10)
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