"電子書籍"は、"アンビエント"化状況によって書き手をも読み手をもアクティブに! ......

| | コメント(0) | トラックバック(0)

 "電子書籍" が普及する時代環境においては、もちろん "読み手" は、読みたいと思った本を何の苦労や手間もかけずに入手することができるようになるわけだ。
 "紙の書籍" を、足を棒にして書店なり図書館なりを探し回るという苦労や手間から解放され、まるでどこにでもあるコンビニで日用雑貨を購入するほどの "いつでも、どこでも、誰でもが" といった感覚に変わり得る。
 後で補足するつもりであるが、こうした状況を指して<"本は「アンビエント」化する">(佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』/ディスカヴァ一携書/2010.04.15)と、いい得て妙な表現がなされる場合がある。

 ところで、昨日、"情報発信者" すなわち "電子書籍" 制作者は "情報作成・加工の自前主義!" を実践すべきだ、実践できるというような内容について書いた。"コンテンツ" 面に加えて、その制作技術面にも精通し、"丸ごと全部" 自分でやっちまえ! というそんな主旨なのであった。
 いささか乱暴なハッタリのようにも聞こえそうだが、必ずしもそうではない。
 今、"読み手" 側に "本のアンビエント化" (="電子書籍" )状況が生まれはじめている時代環境は、同時に "書き手" 側にもやや対象が異なる "アンビエント化" 状況を立ち上げているからである。
 つまり、普及の一途を辿る "DTP(Desktop publishing、デスクトップパブリッシング)" 技術は、さらにデジタル面で進展し、"電子書籍" 制作に関しては、もはや "いつでも、どこでも、誰でもが" アプローチし得る "低いハードル" に仕上がってきている、と想定できるからである。高価な関連アプリでなければというひと頃の制約も、少なくないフリーソフトで置き換えられつつあるのが現状であろう。しかも、関連技術情報はネット環境でかなりの量が流布されている。
 "読み手" 側が、何の苦労や手間もかけずに "電子書籍" を入手する "本のアンビエント化" 状況のすぐ裏手には、"書き手" 側が、"コンテンツ" 面に加えて、その制作技術面においてもさほどの苦労や手間をかけずに "電子書籍" 制作が可能となる、そんな大道具・小道具などの舞台設定が出来上がっている、と言えるのではなかろうか。
 昨日は、どちらかと言えば、そうすることが望ましいという観点で書いたのであったが、再考すれば、そのお膳立ては着実に進行していたということになりそうである。
 したがって、"読み手" 側にとっての現代的な特徴とされる "アンビエント化" 状況の到来は、"書き手" 側にも同等に立ち現れていると見て良さそうである。

 さて、技術的成熟をテコにしたそうした "アンビエント化" 状況は、個々人に便利さを提供することだけではなく、"エンパワーメント" のベースにもなっている。

<"状況の当事者"、あるいはそれを自任する者が "エンパワーメント"(個人や集団が自らの活動に対し統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に対外的な影響を与えるようになること......)を達成すること>(昨日の日誌より)

 そして、さらに着目してみたい重要な点がある。
 現代という時代環境の特徴を言い表す言葉として、"フラット化" というキーワードが使われることはよく知られている。
 誤解を恐れず簡単に言えば、時系列(歴史)やそれに支えられていた縦型秩序がうまく機能せずに、いわば平板上で "ガラガラポン!?" 的に推移して行ったり、ややもすれば "相対主義" 的な風潮が支配的となったり......、とでも言おうか......。どうしてこうなったのかを議論すれば切りがないほどに、説明は難しい。が、それでも感覚的には十分に合点できてしまったり......。
 冒頭で引用した、佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』では、"音楽ジャンル" に精通した立場から、実に興味深い所論を展開している。
 筆者は、 "iPad" や "キンドル" などの "プラットフォーム" のシェア競争とそこでもたらされた製品の成熟が、"本のアンビエント化" を推進したのだと見ている。
 それは、ちょうど、"音楽ジャンル" での "iPod" という "プラットフォーム" が、"iTunes" という "楽曲" の購入から再生までのトータル管理をするソフトを携えつつ、ソニーのウォークマンを退け、"音楽ジャンル" における "アンビエント化" を瞬く間に達成した推移とまったく同じスタイルであろう、と。

<iTunesによってそうした手間のほとんどは消滅し、いつでもどこでもどんな場面でも、自分が音楽を聴きたいと思った瞬間に手元のデバイスから魔法のように楽曲をひきだすことができるようになりました。これがアンビエント化です。>(前述書)

 この点はともかく、さらに興味深い指摘は、"音楽ジャンル" での "アンビエント化" が生み出した傾向なのである。
 筆者は、<アンビエント化によって、音楽を聴くという私たちの体験はどう変わっていくのか>と問い、以下へと話を進めている。

<「私の娘たちはそれぞれ、五万枚のアルバムを持っている。ドゥーワップから始まったすべてのポップミュージック期のアルバムだ。それでも、彼女たちは何が現在のもので何が昔のものなのかよく知らないんだ。たとえば、数日前の夜、彼女たちがプログレッシブ・ロックかなにかを聴いていて、私が『おや、これが出たときは皆、すごくつまらないと言っていたことを思い出したよ』と言うと、彼女は 『え? じゃあこれって古いの?』と言ったんだ(笑)。彼女やあの世代の多くの人にとっては、すべてが現在に属していて、"リバイバル〞というのは同じ意味ではないんだ」
 ......イーノの娘たちの耳の中では、そうやって古い音も新しい音も、フラットに聞こえているのです。
 一九六〇年代の古いロックからゼロ年代の新しいポップミュージックまでが同じ地平線の上に見えていて、その並び順は「自分が気持ちよいと感じるかどうか」「友人が『この曲凄いよ』と紹介してくれた」といった文脈の中に存在しています。
 こには、「昔の音楽は昔の音楽として聴く」「新しい音楽だからとりあえず聴いておこう」といった従来の文脈は意味をなくしてしまっています。
 つまりここで起きているのは、新譜やミリオンセラー、ランキングを中心としたマスメディア的な音楽試聴スタイルは徐々に衰退し、「いつでも自分の好きな音楽を好きなように聴く」という方向へとアンビエント化が進んでいるということなのです。>(前述書)
 要するに、<アンビエント化> → <フラット(化)>という興味深い流れが顕著に生じていると診断するのである。
 そして、このアナロジーから "本のアンビエント化" もまた、"フラット化" 現象を促進して行くに違いないであろうと......。

<本はこれから電子ブックによってアンビエント化していくということです。
そして、アンビエント化された本の世界では、古い既刊本も新刊も、あるいはアマチュ
アの書いた本もプロの書いた本も、すべてがフラットになっていきます。>(前述書)

 筆者はこの後、<アンビエント化>状況は、<フラット(化)>とともに、"音楽ジャンル" においては<マイクロコンテンツ化>へと、また "本のジャンル" では、<リパッケージ>という傾向、つまり<コンテンツの外殻部分であるパッケージはアンビエント化によっていったんは剥ぎ取られ、読み手に最適化されるかたちで別の外殻をかぶせられることになるのです。>と展開させる。

 筆者はこの著作で、まさに "電子書籍" の普及がもたらすであろうその "衝撃" 的事象を "包括的な視点" で論じており、とてもすべての論点をカバーし得るものではない。
 ただ、今日強調しておきたいのは、"本のアンビエント化" 状況の広がりと深まりは、
<アンビエント化された本の世界では、古い既刊本も新刊も、あるいはアマチュアの書いた本もプロの書いた本も、すべてがフラットになっていきます。>という部分に凝縮された "フラット化" 現象によって、"書き手" 側に大きな "エール" を送っている! と解釈できるその点なのである...... (2010.11.13)













【 SE Assessment 】 【 プロジェクトα 再挑戦者たち 】








トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: "電子書籍"は、"アンビエント"化状況によって書き手をも読み手をもアクティブに! ......

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://adhocrat.net/mt/mt-tb.cgi/1312

コメントする

2020年11月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          














関連サイトへのリンク


  • 電子書籍(eBooks)制作にフォーカスしたサイト
  • 明けない夜はないことを確信するサイト
  • Green(地球環境改善)にフォーカスしたサイト
  • ソフトウェア技術者やSEのための評価と育成、人事考課制度を考えるサイト
  • さまざまな業種・業態でご利用可能なモバイル活用の予約システム!
  • 創作小説『海念と保兵衛』のサイト
  • 創作小説『かもめたちの行方』のサイト
  • 当ブログ推奨の商品を展示したAmazon ストアー!
  • 当AdhocBlogブログの過去のエントリー
  • 株式会社アドホクラット当時のサイト

★売れ筋! No.1!
家庭用"放射線測定器"

日本通信 bモバイルWiFi ルータ+1 ヶ月定額SIM BM-U300W-1M
価格:¥ 20,208
国内配送料無料 Amazon





このブログ記事について

このページは、yasuo hiroseが2010年11月13日 00:53に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は、
 「"電子書籍"の急浮上は、"情報発信者"="情報作成・加工の自前主義!"を照らし出す? ......
です。

次のブログ記事は、
 「"ePub/PDF電子書籍"は、ポータブル性以外に特徴ある"ユースウェア"を考案すべし! ......
です。

最近のコンテンツは、
 インデックスページ
で見られます。

過去に書かれたものは、
 アーカイブのページ
で見られます。

年月別アーカイブ

最近のトラックバック