そして、"情報公開と共有" という視点での問題点は、公的組織・私的組織を問わず現在の組織全般にはありがちなウイークポイントとして指摘され続けてきた。
恐らくこの点は、東電にかぎらず、あらゆる組織が "脛(すね)に疵(きず)を持つ" かたちで抱えている忸怩(じくじ)たる問題なのではなかろうか......。
防災対策では、"緊急避難行動" の予行演習はなされている。だが、かなり重要なはずだと思われる "緊急時の情報共有" に関してはやや素通りされていそうでもある。
地震情報などの「緊急避難情報」システムについては周知徹底され始めていると見える。しかし、そうした "総論的情報" の共有に加えて、適時必要となる "個別緊急情報" の伝達となると、個別の集団組織における "日頃の情報の流れ方" のあり様がにわかに浮かび上がって来て、決め手とさえなってしまうのではなかろうか。
現時点で、集団組織が抱え込んでいるコミュニケーション体質の問題が、"緊急時" には思いもよらぬ悲劇を生み出さないともかぎらない......。
報じられている下記の問題、"緊急時" における "情報共有" の欠落が引き起こす惨事という問題は、まだまだ尾を引くと想定される復旧対策の前途に、かなり重大な警告を発していると思えるのだが......。
<「汚染情報なぜ共有しない」東電の対応、専門家ら批判
東京電力福島第一原子力発電所3号機のタービン建屋内で起きた作業員3人の被曝(ひばく)事故をめぐり、東電側が1号機の同建屋でも同様の放射線量を6日前に把握しながら、注意喚起していなかったことが判明。東電側は26日、後手にまわった対応への釈明に追われた。専門家らは、ずさんな安全管理を批判している。
同日午前の東電本社。連日の記者会見に姿を見せた福島第一原発の藤森昭彦・環境担当は、注意喚起がなかった理由を問われ、言葉に窮した後、「十分な情報共有がなされていなかった。現場の混乱があったと思われる」。絞り出すような声だった。1号機関連の高い放射線量の公表が遅れたことについても、吉田薫広報部部長が「申し訳ない」と述べるにとどまった。
経済産業省原子力安全・保安院も、東電から1号機関連の報告を25日未明に受けながら、公表したのはほぼ1日後。西山英彦審議官は「3号機に神経が集中していたという事情があった」と釈明。ある保安院職員は「バタバタした状況が続いて、保安院でも情報整理ができていないのだ」と混乱ぶりを嘆いた。
元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二さん(原子核工学)は、「情報共有されていなかったことは非難されるべきだ。一義的には放射線管理担当者の責任だと思うが、組織としてずさんだったと言われても仕方ない」と東電の対応を批判。同実験所の小出裕章助教(同)は、「作業員は非常に困難な状況で、一刻も早く冷却ポンプを復活させようと水に入ったのだろう。これを教訓に、東電側は情報を共有させ、作業員一人一人の身を守ることを考えないといけない」と話す。
また、宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子炉工学)は、「長靴を履いていれば、水につかって作業してもやむを得ない放射線量だった。直接肌に触れることの危険性が、現場で作業する人にどの程度伝わっていたのか。東電が協力会社側にも十分に注意し、管理する必要があった」と指摘した。>(<「汚染情報なぜ共有しない」東電の対応、専門家ら批判/asahi.com/2011年3月26日17時0分>)
【 関連最新ニュース 】<2号機水たまりの放射性ヨウ素、通常冷却水の1千万倍
経済産業省原子力安全・保安院は27日、福島第一原子力発電所2号機のタービン建屋内の水たまりの表面で、毎時1000ミリシーベルト以上の強い放射線量が計測されたと発表した。
水に含まれるヨウ素134の放射能の強さは1立方センチメートルあたり29億ベクレルで、通常の原子炉内の冷却水が持つ放射能の1千万倍にあたる。福島第一原発で測定された放射線量として、これまでで最大となる。
測定し始めて「すぐに針が振り切れた」ため測定員は、強い放射線量と判断、測定を中止して退避した。2号機のタービン建屋で、同日予定していた排水作業を行うことは難しいという。>(<2号機水たまりの放射性ヨウ素、通常冷却水の1千万倍/asahi.com/2011年3月27日13時25分>)
"関係者全体の安全に直結する情報" に関しては、絶対に "デバイド(格差)" があってはならず、その点では、<東電が協力会社側にも十分に注意し、管理する必要があった>とする点などは大いに着目されていい...... (2011.03.28)
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