現在、国内には1000万人以上、1300万人とも言われる程多数に上る "糖尿病患者" がいると推定されている。
要するに、その多くが "生活習慣病" としての "2型糖尿病" だと見られている。折しも、"生活習慣病" については、それを裏付けるかのような最新ニュースも目に付く。
―――― <一日の歩数、男性1千歩減 健康課題9項目悪化
1997年と09年の国民健康・栄養調査などの結果を比較すると、日常生活での歩数の1日平均(15歳以上)が、男性は8202歩から7243歩に、女性は7282歩から6431歩に減った。背景には、エレベーターやエスカレーターなどが増えたことがあるとみている。......>( 一日の歩数、男性1千歩減 健康課題9項目悪化 厚労省/asahi.com/2011.10.08 )
その多くが "生活習慣病" であり、また自覚症状も無いことから "糖尿病" はややもすればおざなりにされ易い。しかし、怖いのは "合併症" だと言われている。(【 注 】)
そんな "糖尿病" に "新たな治療法" につながる研究成果が発表された。それも、今注目されている "神経幹細胞" を、自身の "鼻の粘膜" から採取して "膵臓に移植" するという "安全な治療法" だとされている。
―――― <神経幹細胞:膵臓移植で血糖値下がった 糖尿病治療に期待
糖尿病のラット自身の鼻の神経幹細胞を膵臓(すいぞう)に移植し、血糖値を大幅に下げる技術を、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などが開発した。遺伝子を導入せず、自身の幹細胞を利用するため、より安全な糖尿病治療につながる可能性がある。7日、英学術誌「エンボ・モレキュラー・メディシン」(電子版)に掲載された。産総研の浅島誠・幹細胞工学研究センター長らと米ソーク研究所のチームは、ラットの鼻の奥にある嗅球(においを感じる神経組織)の粘膜から、神経幹細胞を採取。培養後、膵臓に移植した。
インスリンを分泌する細胞が死滅する1型糖尿病の実験ラット(血糖値約600)では、神経幹細胞を移植しないラットは8週間後に死んだが、移植したラットは15週間後に血糖値が3分の1の約200まで下がった。
このラットの膵臓からは、幹細胞に由来するインスリンが分泌されていた。膵臓の中に点在し、インスリンを出す膵島の機能を代替したことが分かった。
生活習慣病によるインスリン分泌低下など日本人に最も多い2型糖尿病の実験ラットでは、血糖値は神経幹細胞の移植7週間後に、当初の230から約100に半減。その後も3カ月間は効果が持続した。
国内の糖尿病患者は潜在的な予備群も含めると1000万人以上とされる。産総研の桑原知子・主任研究員は「膵臓移植の提供者不足の解消も期待できる。今後、大型動物で実験し、新たな治療法につなげたい」と話す。【安味伸一】
【ことば】神経幹細胞
自身を複製したり、神経細胞などを生み出すもとになる細胞。脳の記憶をつかさどる領域「海馬」や脳下垂体、鼻の嗅球に存在する。脳内からの採取は困難だが、嗅球からは内視鏡で採取できる。欧州では人間の嗅球から採取し、脊椎(せきつい)に移植する臨床実験が行われている。
( 神経幹細胞:膵臓移植で血糖値下がった 糖尿病治療に期待/毎日jp/2011.10.07 )
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【 注 】
―――― <2型糖尿病
「糖尿病」と診断される人の95 %が2型糖尿病である。過食、肥満、運動不足、遺伝、飲酒、喫煙、ストレスのうち、複数の要因によって、膵β細胞が疲弊したり筋や肝での糖利用が低下する。すなわち、インスリンの生理的分泌や効果が不足する。その結果、血中のブドウ糖が過剰になり、尿中に糖分が排泄される。
血糖値を上手くコントロールできれば、普通の人と同じ生活ができる。逆に、血糖値が年余に渡り高ければ、壊疽、失明、腎不全に対して人工腎臓、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、認知症、歯周病を合併する。
発症数年間は、患者が困る自覚症状はあまり出現しない(夜間尿くらい)ので、治療の必要性を理解できないと、治療がうまくいかない。
治療法は、食事療法と運動療法が王道で、次いで経口薬の服薬をする。それでも改善に乏しいとき、また膵を保護する目的で、人工的に生産されたインスリンを注射で補充することもある。以前は、インスリンは希少で高価だったので、合併症が末期的な患者に使われることが多かったし、注射の手間を嫌う患者からは敬遠されているが、より良好なコントロールを得るために、早めにインスリン使用を開始することが推奨されている。
日本では2009年にGLP-1誘導体が販売開始されそうで、これは、低血糖発作の頻度・食欲を抑え、膵β細胞を増殖させるかもしれないと期待されている。
( 2型糖尿病/Hatena::Keyword )
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通常の "幹細胞" が "自己複製" 的な細胞分裂をおこなうのに対して、"神経幹細胞" はある種の作用によって分裂毎に自らの性質を変え,多様な細胞種を生成するとされている。引用記事における "膵臓" に移植された "神経幹細胞" の好ましい機能はここに由来しているのであろうか...... (2011.10.09)
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