ウェブユーザーは、通常範囲のウェブ利用においても、知らず知らずのうちに様々なリスクに直面しているようだ。
そのリスクとしては、"スパイウエア" で "個人情報" が盗まれるという最悪の事態に陥らないまでも、ウェブ利用における "行動"、つまり "どのようなサイトを訪問したか" の個人的 "行動" が密(ひそ)かに "追跡" され "監視" されている可能性も含まれる。
ウェブユーザー側の利便性のためという意味を持ついわゆる "クッキー Cookie" は、基本的には心配はいらないのだが、"クッキー" の中には、"サード・パーティの Cookie( トラッキング Cookie )" と呼ばれる "怪しげ" なものもある。
その詳細は、【 引用記事 2 】を参照していただきたいが、要するにウェブユーザー側の "行動" が、ユーザーに感知されないかたちで "仕掛け側" によって "追跡" され "監視" されてしまう、ということなのである。
ただこれは、氏名、住所、電話番号やクレジット情報といった主要な個人情報が知られることはないし、またウェブブラウザでの閲覧履歴のすべてが知られるわけでもないので大きなリスクではないとも言える。
では "仕掛け側" は "トラッキング Cookie" で何をしようとしているのか?
要は、"マーケティング" 向け個人情報の収集だということになりそうだ。そのユーザーが、どのようなWebサイトを好んで閲覧しているのかという "部分的アクセス履歴・ブラウジング傾向" を掴むことで、"より効果的な広告表示" を果たそうとしているわけだ。
なお、この "マーケティング" 向け個人情報の収集がネット関連企業や広告主側企業にとって大きな価値を持つことは、<オンライントラッキング関連の大手企業収入は合計で390億ドルにも上る>(【 引用記事 1 】より)との指摘でも示されている。
しかし、その "行動" が "追跡" され "監視" されるウェブユーザーにとっては、大きなリスクではないとは思えても "心外" であることに変わりはない。
そこで、密かに "追跡" し "監視" するその動きを、ウェブユーザー側が "監視=可視化" してしまおうとする試みが登場することになった。下記の【 引用記事 1 】:TED 2012:あなたの"監視者"を可視化する新アドオン/WIRED JAPANESE EDITON - TECHNOLOGY/2012.03.02 の "Mozilla Firefox 向けアドオン" ソフトである。
このアドオンは、"Mozillaのサイト" で公開され、ダウンロードできる。
使い方は実に簡単であり、インストール後、以下の手順を踏むだけで、自サイトと直接・間接にリンクした "ノード(サイト)" の一覧が表示される。
① ブラウザ/Mozilla Firefox の「メニューバー」→「表示」→「ツールバー」とクリックして、「アドオンバー」表示にチェックを入れる。
② ブラウザ画面最下段に表示された「アドオンバー」の右端に "Collusion" というアイコンが表示される。
アドオンバーに表示された "Display Collusion Diagram" のアイコン
③ そのアイコンをクリックすると、画面が直ちに表示され、やがて動きが止まって下記のように静止する。自サイトと直接・間接にリンクした "ノード(サイト)" の一覧表示のようだ。
やや明るい中央のノードが自サイト
④ やや明るい中央のノードが自サイトのようなのでこれをクリックすると、自サイトと "Cookie(トラッキング Cookie)" で直接リンクした "ノード(サイト)" だけが表示される。
自サイトノードをクリックした場合
⑤ さらに、それぞれの "ノード(サイト)" をクリックしてみると、それぞれと直接リンク関係がある "ノード(サイト)" のみが表示される......。
他のノードをクリックした場合
【 引用記事 1 】
TED 2012:あなたの"監視者"を可視化する新アドオン
Collusionは、まるで異星人のDNAを色分けして分析するかのように、灰色の点と赤色の点からなるドットマトリックス図を描き出す。「プライバシーはインターネットの利用と引き替えに差し出す代償という考えを、われわれは受け入れるべきではない」
カリフォルニア州ロングビーチ──MozillaのCEOを務めるGary Kovacs氏は、同氏の9歳になる娘に毎日ネットサーフィンすることを認めているが、ただし彼女がどのウェブサイトにアクセスしたかは同氏にもわかるようになっている。
これはある程度予想されたことだ。ウェブユーザーのトラッキングは巨大ビジネスになっている。Kobacs氏によれば、オンライントラッキング関連の大手企業収入は合計で390億ドルにも上るという。そして、この成長のペースが鈍化する兆しはいまのところない。
いっぽう、こうしたトラッキング行為への対抗策となる試みも登場している。Kovacs氏は28日(米国時間)、TED(Technology Entertainment and Design)カンファレンスで行ったプレゼンテーションのなかで、「Collusion」というFirefox用アドオンを披露した。これはウェブユーザーの行動を追跡しているサイトの種類や数を可視化するツールである。
「(インターネットにおける)プライバシーは、単なるオプションのひとつではない」Kovacs氏はTEDのプレゼンテーションでそう述べた。「プライバシーはインターネットの利用と引き替えに差し出す代償という考えを、われわれは受け入れるべきではない」(Kobacs氏)
Collusionは、まるで異星人のDNAを色分けして分析するかのように、灰色の点と赤色の点からなるドットマトリックス図を描き出す。灰色の点はユーザーが訪問したサイト、または訪問中のサイトを表し、赤い点はユーザーの動きを追跡しているサイトを表している。通常、一部のクッキーは複数のサイトで共有されているため、ユーザーはサイトをまたいだブラウジング傾向を分析されており、これは広告主にとってとりわけ価値のあるデータになっている。 ......
「インターネット上の記録は永遠に残る。われわれは監視されている。これからは、われわれが監視者を監視する番だ」(Kovacs氏)
このアドオンはMozillaのサイトで公開されている。
TEXT BY Mike Isaac( TED 2012:あなたの"監視者"を可視化する新アドオン/WIRED JAPANESE EDITON - TECHNOLOGY/2012.03.02 )
TRANSLATION BY 中村航( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛箇所を施しています。)
【 引用記事 2 】
トラッキングCookieとは tracking Cookie
トラッキングCookieは,Webサイトが発行してパソコンに送ってくるCookieの一種である。Webページに埋め込まれたバナー広告の発行元が,ユーザーのWebアクセス履歴を収集するためによく利用している。
Cookieは,Webアクセスの際にWebサイトが発行する小さなテキスト・データである。WebページとともにWebブラウザに送られてきたデータを,パソコン側では保存しておき,再度同じWebサイトにアクセスするときにはリクエストに付けて一緒に送る。このようにCookieを使うことで,Webサイトではアクセスしてきたユーザーを識別する。
通常は,あるサイトが発行したCookieが,ほかのサイトに送られることはない。Cookieには発行元のドメイン名が明示されており,そのドメインとの間でしかやりとりできないことになっている。例えば「nikkeibp.co.jp」が発行したCookieは,「example.co.jp」には送られない。こうした制限があるので,CookieでWebアクセスを追跡するのは無理だと思いがちである。
しかし,トラッキングCookieでは「サード・パーティのCookie」というしくみを使ってユーザーのアクセス履歴を追跡する。バナー広告の発行元X社がトラッキングCookieでアクセス履歴を追跡するようすを見てみよう(図)。
X社のバナー広告がはめ込まれているA社のWebサイトにアクセスすると,ユーザーはA社のWebサーバーだけでなくバナー広告を受け取るためにX社のWebサーバーにもアクセスする。そこでX社はユーザーにCookieを発行し,バナー広告と共に送る。A社にアクセスしたときにX社から送られてくるので,これはサード・パーティのCookieとも呼ばれている。
X社が発行したCookieには,ユーザー識別用のID情報が含まれている。X社はユーザーがどこのWebサイトからアクセスしてきたかがわかるようにする。具体的には,バナー広告のURL内に「A社からのアクセス」とわかる情報を書き足すといったしくみを仕込んでおく。この情報を基に,X社はトラッキングCookieのIDと「A社にアクセスした」という情報をユーザー管理用データベースに書き込む。
続いて,ユーザーがB社のWebページにアクセスするとしよう。このB社のWebページにもX社のバナー広告が置かれていると,ユーザーのWebブラウザはバナー広告のリクエストと一緒にX社から受け取って,パソコンに保存していたトラッキングCookieを送信する。そのCookieを受け取ったX社は,その中のID を見て,データベースで管理しているIDの履歴に「B社にアクセスした」という情報を追加する。こうして,X社のバナー広告が埋め込まれたサイトにアクセスするたびに,ユーザーがアクセスしたサイトの情報がX社に蓄積されることになる。
( トラッキングCookieとは tracking Cookie/IT pro/2006.03.01 ))
......
ユーザーの情報を勝手に取られることになるため,トラッキングCookieはスパイウエアの一種と扱われることがある。ただし,トラッキングCookie自体をスパイウエアに含めるかどうかが微妙だ。なぜなら,トラッキングCookieそれ自体はソフトではなく単なるデータで,直接集めるのはWebアクセスの履歴だけだからである。 >( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛箇所を施しています。)
"Google の個人情報集約化"(c.f.Google 個人情報集約化で広告表示媒体の"価値up"狙い!? フェイスブックに対抗!( 当誌 2012.02.27 ))も、結局は、<個人の趣向や行動を細かく把握しターゲットを絞って効率的に広告を出せれば、企業の広告を集めることができます>という点が眼目。とにかく、ウェブユーザーの "個人情報" とその関連情報が「鵜の目鷹の目」で狙われていることに変わりはない...... (2012.03.04)
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