感覚的、経験的には "周知の事実" ながら、今一つ "公言" するのが憚(はばか)られた事実! その事実とは、<「金持ちになるほど、ズルくなる」>、<人は多くの富を手に入れるほど、そして社会的地位が高くなるほど、倫理に反する行いをする傾向が強まる>、<「社会で恵まれた立ち場にいる人物には、無意識に他人を無礼に扱う心理的傾向が見られる」>( 下記引用サイト記事:「金持ちになるほど、ズルくなる」:実験結果/WIRED JAPANESE EDITON - SCIENCE/2012.03.01 )などであったに違いない。
どうしても、こうした事実を声高に表明すると、"負け犬の遠吠え" や "ごまめの歯軋り" と聞こえてしまうからだ。まして、"自由競争" と "自己責任" とが過剰に強調されるご時世にあってはなおさらのことであろう。
そして、悶々とした気分が募り、悔しい独白 『ズルや非道でもしなきゃ、儲かりっこない世の中じゃないの......』 の響きが胸の内で共鳴する......。
超格差社会を糾弾する "ウォール街占拠" 運動が巻き起こったからだろうか、米国でも<富や階級をめぐる緊張感はかつてなかったほど高まっており、「貪欲であることはいいことで、誰よりも裕福なことは美徳か?」などの論争が巻き起こっている>らしい。
そして、そんな状況だからなのであろう、そうした<答えることが難しいこうした社会的疑問に対し、Piff氏や同僚らは科学的方法を使って答えを見つけ出そうとした>のがこのレポートのようである。
ひとつ気になったのは、"因果関係" についてだ。
「金持ちになるほど、ズルくなる」と表現すれば、"ズルくなる" のは、"金持ちになった" その結果であるようにも受けとめられる。
しかし、実情は "ズルくなる" ことで "金持ちになった" というのが妥当だという気がしないでもない......。
<競争心、自分の利害、自分の安寧を優先する意識など>によって "富や地位" を手に入れた、と見る方が自然ではないかと......。やっぱり、"負け犬の遠吠え" の響きがまとわりついてしまうか......
「金持ちになるほど、ズルくなる」:実験結果
「 社会的・経済的地位が高い人は、そうでない人よりも不正直な傾向が強く、そしてこれは貪欲さに対してより肯定的に捉える態度から生まれたものだ。競争心、自分の利害、自分の安寧を優先する意識などが、この傾向を支えている 」
先ごろ発表された社会経済学と倫理学の分野にまたがる新たな研究結果によると、人は多くの富を手に入れるほど、そして社会的地位が高くなるほど、倫理に反する行いをする傾向が強まるという。
この研究は、サンフランシスコの無礼なドライバーに関する調査や、子供のキャンディーを盗む機会を被験者に与えるといったものまで、実験室や実社会における7つの異なる設定で行われた実験の結果をまとめたもの。
「社会で恵まれた立ち場にいる人物には、無意識に他人を無礼に扱う心理的傾向が見られる」と話すのはカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のPaul Piff教授。「そういった人物は自分の振る舞いが他人に与える影響に鈍感になっている。その結果、彼らは規則を破る傾向がほかの人より強いことを、少なくともこの研究結果は示している」(Piff氏)
この研究は2月27日付けの「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載されたもの。富や階級をめぐる緊張感はかつてなかったほど高まっており、「貪欲であることはいいことで、誰よりも裕福なことは美徳か?」「富は人を堕落させるものか? そうであれば社会は平等主義を収入にも適応するよう努力すべきか?」といった論争が巻き起こっている。
答えることが難しいこうした社会的疑問に対し、Piff氏や同僚らは科学的方法を使って答えを見つけ出そうとした。彼らはまず2つの実験を行った。そのひとつは、サンフランシスコ市街の交差点で道路を行き来する自動車をモニターし、クルマの列に割り込んだり、歩行者の前を横切ったりするクルマの車種や型式を調べるというものだった。そして、高い社会・経済的地位(SES)を示すクルマの運転者は、そうでないクルマの運転者に比べて、割り込みをする傾向が約2倍も高いことがわかったという。
もうひとつの実験は、UCバークレーの学部生105人を対象に、現実的な倫理的判断が求められる状況でどう反応するかを調べるというものだった。
現実的な倫理的判断が求められる状況とは、たとえば10ドル札を支払った後に、おつりとして20ドル札をもらった場合などを指す。この実験では、SESの低い被験者のほうが正直に反応する傾向がみられたという。
さらに別の実験では、潜在意識下の動態が調査された。この実験では、被験者はまず自分たちがお金持ちまたは貧乏であることをイメージするよう指示され、その上で、別の研究室にある(子供に配られる予定の)キャンディーが入った瓶から、キャンディーを取る機会を与えられた。そして実際に実験をしてみると、お金持ちであるとイメージした学生のほうが、貧乏とイメージした学生よりもたくさんのキャンディーを取ったという。
このほか、AmazonのMechanical Turkで募集した108人の成人をつかって、企業の採用担当者の役を演じてもらうという実験も行われた。 ......
この実験の結果、実世界での収入が多い人ほど、そしてアンケートで貪欲さ(greed)について肯定的に答えた人ほど、応募者に対して嘘をつく傾向が強いことがわかったという。
「 社会的・経済的地位が高い人は、そうでない人よりも不正直な傾向が強く、そしてこれは貪欲さに対してより肯定的に捉える態度から生まれたものだ。競争心、自分の利害、自分の安寧を優先する意識などが、この傾向を支えている 」(Piff氏)
TEXT BY Brandom Keim
TRANSLATION BY 中村航
( 「金持ちになるほど、ズルくなる」:実験結果/WIRED JAPANESE EDITON - SCIENCE/2012.03.01 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛箇所を施しています。)
それにしても、この現代は<富や階級をめぐる緊張感はかつてなかったほど高まっておりという指摘は、まさにその通りかと思われる。"IT" の飛躍的発展と "グローバリズム" とが "レバレッジ(てこ)" の機能を存分に発揮したその結果なのであろうか...... (2012.03.03)
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