伝播する情報が一方的に偏ったり、意図的に歪められる時が怖い。
感情に流され易い "ナショナリズム" の文脈での出来事に関してはなおさらリスキーであり、これまでの "戦争" の多くは、そうした "汚された敷石" の道を人々が駆り立てられたのではなかったか......。
今、日中間に生じている不穏な空気から、"戦争" や "軍事的衝突" を想起するのは、決して杞憂ではないように思える。むしろ正常で敏感な感覚なのではなかろうか。
そして、弱者だからこそ備わった "正常で敏感な感覚" を精一杯、張り巡らすことが、今求められているのだろうと思う。シャツのボタンの掛け違いでは済まない事態が起こるかもしれないならば、こんな時だけでも視野を広げておこうかと......。
尖閣諸島を巡る "反日デモ" については、伝えられている情報がそうしたものばかりということもあり、確かに中国に対する日本人の感情はかなり刺激されているようだ。
暴徒化したデモの様子を、TVニュースなどで連日見せられれば、日頃冷静な人でさえ不快感が刺激され、言い知れない敵愾心に火がつけられてしまう......。
漸くやや落ち着きを取り戻し、ふと考えてみることは、一体デモ参加者たちはどんな素性であり、何をどんなふうに考えているのだろうか......、と。
ところが、そうした冷静な疑問に対して参考になる情報というものがきわめて乏しいのが実情である。こうした問題でマスメディアが取り上げる情報というものは、"少ない" だけではなく、結果的に "硬直" した内容となりがちである。
そんな状況にあって、"ソーシャルメディア" の動向に焦点を合わせた下記引用サイト記事:中国の都市中間層から生まれた暴力や略奪への批判。「愛国無罪」から「理性愛国」へ、反日デモの「静かな変容」は何を意味するのか/現代ビジネス - 経済の死角/2012.09.22 は、募る情報への飢えを幾分満たしてくれるものだと思えた。
暴徒化したデモ隊の中に、<「こんなの愛国じゃない」と我に返った>中国人青年がいて、その彼は "明瞭な意思表示" を行ったというのだ。
<「前方でクルマが壊されている、日本車はUターンを」>と、大学生風の中国人青年がそう書かれた段ボールを掲げて、道路の真ん中に立ったのだそうだ。
そして、この事実がネットの "ソーシャルメディア" 上で話題となり、これをはじめとして、<中国のインターネット上では思いもよらぬ事態が進行していた。中国人にとって「愛国的行為」であるはずの反日デモに対して、多数のネットユーザーが憤りや嘆きの声を上げていたのである>と。
まさにこうした "人間的自然のリアルな様子" こそが、的確に伝えられるべきであり、伝わるべきなのだと痛感させられた。
そこにこそ、 "ソーシャルメディア" が発揮すべき本領があるはずなのだから!
中国の都市中間層から生まれた暴力や略奪への批判。「愛国無罪」から「理性愛国」へ、反日デモの「静かな変容」は何を意味するのか/現代ビジネス - 経済の死角/2012.09.22
その写真へのリンクが筆者のツイッターのタイムラインに流れてきたのは、9月15日深夜のことだった。「前方でクルマが壊されている、日本車はUターンを」---。大学生風の中国人青年がそう書かれた段ボールを掲げ、道路の真ん中に立っている。
「この暗黒の一日に、彼はわずかな希望の光を残してくれた。彼は西安市民の誇りだ」。写真にはそんな意味のコメントが添えられていた。
最初は何のことだかわからなかった。気になって調べてみると、中国のインターネット上では思いもよらぬ事態が進行していた。中国人にとって「愛国的行為」であるはずの反日デモに対して、多数のネットユーザーが憤りや嘆きの声を上げていたのである。
■ 日本車60台を救った西安の青年
青年の写真が撮影されたのは、9月15日昼間に西安で起きた反日デモの最中だった。日本政府が尖閣諸島の国有化を決定した9月11日から、満州事変の発端となった柳条湖事件の記念日である18日にかけて、中国では各地で激しい反日デモが発生した。中でも15日は、西安、青島、長沙などの都市でデモ隊の一部が暴徒化し、日系デパートの略奪、工場への放火、日本車の破壊など過激な犯罪行為に及んだ。
これに衝撃を受けたのは日本人だけではなかった。後に本人を取材した中国紙の記事によれば、西安の青年もまた愛国心を発揚せんとデモに参加した血気盛んな若者の1人だったという。
ところが、デモ隊の興奮がどんどんエスカレートし、路上の日本車を手当たり次第に破壊し始めたのを見て愕然とした。「こんなの愛国じゃない」と我に返った彼は、デモ隊を離れて冒頭の段ボールを掲げ、通りかかった日本車のドライバーに大声でUターンを呼びかけたのだ。青年のおかげで難を逃れた日本車は60台近くに上った。
過去の反日デモなら、彼の行動はほとんど注目されずに終わったかもしれない。ところが筆者が目を見張ったのは、青年の写真とエピソードが「微博」(ウェイボー)と呼ばれるミニブログサービス(中国版ツイッター)を通じてあっという間にネット上で拡散し、その大部分に賞賛のコメントがついていたことだ。
もちろん、なかには「日本車を庇うなんて国賊だ」と罵る声もあった。しかし「身の危険を顧みず、よくやった」「彼は男のなかの男だ」「同胞の車を襲った暴徒こそ国賊だ」など、青年を支持する声の方がずっと大きかったのだ。
今から振り返れば、反日デモが暴徒化した9月15日は重要なターニングポイントだった。翌朝から、筆者のタイムラインには西安の青年に類似したエピソードが次々に流れてきた。
同じ西安からは、日本車3台を破壊したグループのリーダーが「警察の派出所長にそっくりだ」という情報が顔写真入りで拡散された。微博上では「警官が市民の財産に手をかけるなんて許せない」などの批判が沸騰し、西安市公安局が慌てて否定する事態になった。
日系デパートの平和堂が襲われた長沙では、暴徒化したデモの最前線にいた市民がブログで写真を公開した。「それは(反日でも愛国ではなく)単なるお祭り騒ぎだった」「自分にはなすすべがなく、目の前の狂態を記録するのが精一杯だった」と書き添え、多くの共感を集めた。
青島からは、デモ隊の放火でショールームが全焼したホンダ系自動車販売店の中国人社員が、彼(彼女)が目撃した一部始終をネットに投稿した。「これはデモなのか暴動なのか? 被害者は日本人なのか中国人なのか?」と、この社員はネット社会に問いかけた。
■ 「愛国を口実にした暴力には反対」
こうした情報が微博などのソーシャルメディアを通じて拡散され、広く共有される過程で、中国のネットユーザーの間に1つの"世論"が急速に形成されていったと筆者は感じる。それは、16日以降の各地のデモに出現した「理性愛国(愛国は理性的であるべきだ)」というスローガンに集約される。要するに「愛国(反日)を口実にした暴力には反対」という意味である。 ......(以下略)
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
"国境" という仕切りにかかわりなく、多くの "愚者" がいるかと思えば、また多くの "賢者" もいる! そうした "当たり前の事実" を再確認させてくれる "ソーシャルメディア" の働きに意を払いたい ...... (2012.09.24)
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