"iPS細胞の移植" と "拒絶反応" をめぐっては、やや錯綜した認識状況があるようだ。
したがって、下記引用サイト記事:iPS細胞:「拒絶反応ない」 放医研など移植実験、米報告に反論/毎日jp/2013.01.10 に触れる前に "交通整理" をしておこうかと思う。
再生医療において、患者の臓器などへ "iPS細胞の移植" を行う場合、"iPS細胞" を "分化" させることが大前提となる。それは、警戒される "拒絶反応" を避けるためのようである。
<人間の皮膚などの体細胞 から作製されたiPS細胞を、様々な組織や臓器の細胞に分化( 細胞が分裂する過程で構造や機能が特殊化すること )させ、再生医療に応用することが可能になるまでには、いろいろな課題を克服する必要があります。......>( 京都大学 iPS細胞研究所-iPS細胞基本情報-iPS細胞の課題 )
ところが、2011年に英科学誌ネイチャーに掲載された<米カリフォルニア大の報告>では、<「マウスから作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、同じ遺伝情報を持つマウスに移植すると拒絶反応が起きた」>とされ注目を集めた。
その理由は、<「患者自身のiPS細胞は移植しても拒絶反応が起きない」との定説を疑問視>させるものであったからのようだ。
しかし、<米グループの報告は、未分化iPS細胞の移植で、......iPS細胞を分化して作った組織移植とは異なる>ようなのである。
ということになると、もし "拒絶反応" があったとしても、現時点の再生医療において定説となっている "分化したiPS細胞の移植" とは別問題の話だということになる。
先ずは、 "拒絶反応" の有無は、この<未分化 vs 分化>の差異によって厳密に仕分けられなければならなかったわけだ。
ところが、どうも、<米グループの報告> の <未分化iPS細胞の移植> → <"拒絶反応">という実験自体に関しても "疑わしさ(?)" が見出され、"反論" の余地があり得る、というのが、下記引用記事の内容だと理解できる。
<米グループと同じく、マウスの体細胞で作った未分化のiPS細胞を別のマウスに移植し、拒絶反応が起きれば移植部位に寄ってくるリンパ球の数を調べた。すると、無視できるほど微量だった>
こうした日本のグループによる新しい移植実験結果報告によって、"iPS細胞の移植" と "拒絶反応" をめぐるやや錯綜した認識状況が、妥当に整理されて行くものと思われる......。
iPS細胞:「拒絶反応ない」 放医研など移植実験、米報告に反論/毎日jp/2013.01.10
「マウスから作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、同じ遺伝情報を持つマウスに移植すると拒絶反応が起きた」とする米カリフォルニア大の報告(11年)に関連し、日本のグループが、「同様の実験をしても、拒絶反応はほとんど起きない」という異なる結果を発表した。10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に論文が掲載される。
米グループの報告は、未分化iPS細胞の移植で、再生医療で想定されるiPS細胞を分化して作った組織移植とは異なる。それでも、「患者自身のiPS細胞は移植しても拒絶反応が起きない」との定説を疑問視した論文がネイチャーに掲載されたため、注目されてきた。
今回の発表は、放射線医学総合研究所(千葉市)の荒木良子室長と鶴見大(横浜市)のグループ。
米グループと同じく、マウスの体細胞で作った未分化のiPS細胞を別のマウスに移植し、拒絶反応が起きれば移植部位に寄ってくるリンパ球の数を調べた。すると、無視できるほど微量だった。
一方、この未分化のiPS細胞から成体マウスを作製。そこから採取した皮膚の移植では、約10カ月間はまったく拒絶反応がないことも確かめた。
荒木さんは「完全に分化した組織で拒絶反応が起きる可能性は、数年、数十年後に何か起きるかもしれないというほど低い。未分化iPS細胞が残らないようにする技術開発が重要」と話している。【野田武】
再生医療における患者の臓器などへの "iPS細胞の移植" を待ち焦がれる人たちは少なくないはずだ。
ノーベル賞に輝く日本の "iPS細胞研究 "の成果が世界に貢献することを期待したい...... (2013.01.11)
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