安倍政権が打ち出している<日本経済の再生を目指す「アベノミクス」>に対して "過剰な期待" が寄せられている観がある。
しかし、どうも "胡散臭い" 感触が拭いきれない......。( "参院選目当ての耳触りの良いキャンペーン!?" だからという当然の警戒もある! )
もちろん、"日本経済" が活性化され、同時に! "庶民の家計" が立て直されれることを願わずにはいられない。
しかし、"日銀" を恫喝してまでの "円安誘導の金融政策" を表看板にした "経済政策" で、果たしてどこまで "日本経済の再生" が可能なのか? そんなことで "瀕死の重傷である日本経済" が再生するのであれば、何故、ここまでの悪化が続いて来たのかと先ずは疑問を禁じえないワケだ。自公政権下で "ジャブジャブ" と垂れ流して来た "景気刺激策" と一体何がどう違うと言うのであろうか......。
しかも、これまた "瀕死の重傷である財政再建問題" をケロリと忘れたかのように "棚上げ" している "近未来展望の無さ!" には開いた口がふさがらない......。
いわゆる<「アベノミクス」>という経済政策を知るために、とりあえず、二つの視点で考えてみたい。
1.現時点での確かな影響 と、2.今後の可能性としての影響。
先ず、1.現時点での確かな影響 という点である。
すでに、マスメディアが盛んに吹聴しているとおり、"円安" が刺激され、その結果が株式市場で好感されて "株価" の上昇を誘っていることは事実だろう。
しかし、この現象に "継続性のあるものなのかどうか?" が問題であるし、またこの現象が "日本経済の再生" という長期的課題にどこまで意味を持つのであろうか? 株価変動に "イージー・カム、イージー・ゴー" は付き物であろう。
むしろ、現時点での影響では、下記引用サイト記事/【 引用記事 1 】:灯油暮らし直撃/大分合同新聞社/2013.01.28 が報じる "円安のマイナス影響" の方がリアリティを持つかに見える。
当然、"ガソリン高騰" も警戒しなければならない。しかも、こうした "価格高騰" を、<「アベノミクス」>が "インフレ・ターゲット" 政策で "煽る!" のであるから、拍車が掛かって行くことをさらに警戒しなければならない。
次に、2.今後の可能性としての影響という点では、下記引用サイト記事/【 引用記事 2 】:アベノミクスは家計も潤せるか 編集委員 小竹洋之/日本経済新聞/2013.01.10 における<アベノミクスは家計も潤せるか>という指摘が重要だと思われる。
<まずは企業を活性化し、雇用や賃金の拡大という恩恵を家計にもたらすのが、アベノミクスの要諦> とされるわけだが、これまでの景気推移を見ると次のようになる、という。
<ところが家計への波及が弱く、「実感なき回復」と呼ばれていたこと/ 実質国内総生産(GDP)も12%増えたが、実質雇用者報酬は0.1%減ってしまった/ 製造業の生産性が大幅に向上したにもかかわらず、賃金が抑制されて内需の拡大につながらなかった/ 生産性の向上に見合うだけの賃金をもたらすことができるのか――。日本に問われているのはその答えである/ 企業支援でパイの拡大に成功しても、成長の果実が家計に行き渡らないようなら、アベノミクスへの期待はいずれ失望に変わるだろう>
"株価" のみならず、"(企業)景気" の好転が "家計の潤い" にはつながらなかったという過去の苦い思いを振り返るならば、<「アベノミクス」>への庶民の期待、評価は自ずから決まってきそうである。
ただ、"表看板" は、"参院選" までもてばそれで良いとする穿った見方もあるようだから、困ったものである......。
【 引用記事 1 】
灯油暮らし直撃/大分合同新聞社/2013.01.28
年間で寒さが最も厳しい季節を迎えた中、県内でも円安の影響で暖を取るのに欠かせない灯油の値上がりが続いている。県の調査によると、昨年12月時点での平均店頭販売価格は18リットル当たり1663円。前年同月比で28円、一昨年の同月比では238円も高い。デフレ経済の折、燃料費の高騰が消費者の暮らしを直撃している。
「このまま値上がりが続くと経営に響く...」。大分市金池町で米穀店を営む後藤純子さん(62)はため息をついた。得意先への灯油配達業務もしており、影響は大きい。「ガソリンも高くなっているので配達料の経費も掛かる。お客さんからは『高くなったなあ』と言われるが、どうしようもない。今冬は寒さが厳しいので、本当に困りますね」......
同市内の給油所の所長(31)は「今月に入って、卸売価格は1リットル当たり4円ほど上がった。経営はギリギリなので、一部は販売価格に転嫁せざるを得ない」と頭を抱える。......県石油商業組合の西謙二理事長は「最大の原因は円安による原油輸入価格の高騰」とみる。さらに、節電志向の高まりで灯油による暖房が見直され、需要が伸びている側面もある。「全国の灯油出荷量は昨年同時期に比べて5%増えている。消費者に負担を掛けるのが心苦しいが、円安傾向が続けばさらに価格が上昇する可能性もある」と厳しい表情で話した。
<ポイント> 円安
1ドル=70円台の歴史的な円高が続いていた為替相場は、今年に入って80円台後半で推移。25日の東京市場では90円台まで値を下げ、約2年7カ月ぶりの円安水準となった。安倍政権の無制限の金融緩和政策などが要因。円安になると、輸出産業は利益を上げやすくなる一方、輸入している石油製品や食料品などの価格は上がり、家計への影響が懸念される。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
【 引用記事 2 】
アベノミクスは家計も潤せるか 編集委員 小竹洋之/日本経済新聞/2013.01.10
安倍晋三政権が本格的に始動した。大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略――。3本の矢で日本経済の再生を目指す「アベノミクス」の司令塔は、経済財政諮問会議と日本経済再生本部が担う。
注目したいのは経済政策の方向転換だ。民主党政権が家計の支援と所得の再分配を重視したのに対し、自民・公明両党の連立政権は企業の支援とパイの拡大に力点を置く。11日に打ち出す緊急経済対策の狙いも、表向きは「成長と富の創出の好循環」である。
民主党政権の発足後まもない2009年10月26日。当時の鳩山由紀夫首相は初の所信表明演説で、「コンクリートから人へ」「人間のための経済へ」といったスローガンを掲げた。これを大義名分に子ども手当や高速無料化などの実現に動いたが、財源の手当てで破綻したのはご承知の通りだ。
一方、安倍首相は「企業が頑張りやすい環境をつくり、日本経済を成長させたい」と語る。まずは企業を活性化し、雇用や賃金の拡大という恩恵を家計にもたらすのが、アベノミクスの要諦といってもいい。
■プロビジネスへの転換は妥当
企業は確かに成長のけん引役だ。その活力を引き出そうとせず、家計へのばらまきだけを続けるのは無理がある。財政規律の緩みやゾンビ企業の延命につながるような施策は容認できないが、アンチビジネス(反企業)からプロビジネス(親企業)に経済政策のカジを切るのは妥当だろう。
だが問題がないわけではない。国際労働機関(ILO)は昨年12月に公表した「世界賃金報告」で、国民所得に占める雇用者報酬の割合(労働分配率)が世界的に低下していると分析した。
日本の10年の労働分配率は64.5%。ピークだった1977年の79.9%を大幅に下回る。グローバル競争の激化や春闘の形骸化などを背景に、企業の収益が伸びても、雇用や賃金が増えにくい構造になりつつあるのだ。
自社の株価を上げ、企業価値を高めるには、配当などの原資も確保しなければならない。「今の日本は株主の取り分を増やすために、従業員の賃金を抑制している」。JPモルガン証券の北野一チーフストラテジストは近著「デフレの真犯人」で、そんな警鐘を鳴らした。
教訓としたいのは戦後最長の景気回復局面(02年2月~08年2月)の経験である。世界経済の拡大や円安などの恩恵で輸出が伸び、これを起点に企業収益の改善が続いた。ところが家計への波及が弱く、「実感なき回復」と呼ばれていたことを思い出す。
季節調整済みの輸出数量指数と鉱工業生産指数をみると、02年2月から08年2月までにそれぞれ46%、24%上昇している。02年1~3月期から08年1~3月期までに年率換算の実質国内総生産(GDP)も12%増えたが、実質雇用者報酬は0.1%減ってしまった。
■生産性向上に見合う賃金もたらせるか
日本総合研究所の山田久調査部長は「当時は製造業の生産性が大幅に向上したにもかかわらず、賃金が抑制されて内需の拡大につながらなかった」と指摘する。では生産性の向上に見合うだけの賃金をもたらすことができるのか――。日本に問われているのはその答えである。
09年の政権交代の背景には、02年~08年の「実感なき回復」に対する国民の不満もあったといわれる。企業支援でパイの拡大に成功しても、成長の果実が家計に行き渡らないようなら、アベノミクスへの期待はいずれ失望に変わるだろう。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
ふと気になることは、果たして一般庶民は、長く馴染んでしまった "低価格(=デフレ?!)" と決別することが可能かどうかという命題についてである。
"デフレ脱却" という課題は、机上の発想・感覚ではほとんどムリであり、庶民生活・感覚に棹差さなければ叶う課題ではないと思われるのだが...... (2013.01.30)
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