「溺れる者は藁にもすがる」ということわざがある。
絶望的とさえ感じられる "危機状況" にあっては、人は、信頼性に乏しくマヤカシめいたものでも掴んでしまう、という道理か......。
別に "正攻法" を丹念に彫琢するわけでもなく、専らリスクの高い "超次元" の金融政策で "賭け" に及んでいるのが "アベノミクス" であろうが、参院選向け "限定" パフォーマンスとしてはどうにか逃げ切るような気配なのかもしれない。
しかし、金融/経済の "大向う" から、庶民にいたるまで、この "アベノミクス" が、ホントに "成長経済" をもたらす戦略だなんぞと信じているものは誰もいない、と見える。
たまたま、"円安好機" の風( c.f."赤壁の戦い" での風向き? )がもっともらしさを醸し出したことなどから、「溺れる者は藁にもすがる」空気を都合よく刺激した......、というのが真相ではないかと解釈できる。
そもそも、日本経済長期低迷の原因は、もっと深層の地殻に探るべきなのではないかと推測される。簡単に言えば、国際的にも破格だと見なされている "少子高齢化" 現象なのである。( これに尽きはしないのだが、概してこの "うねり" に集約されると思われる )
この辺の "根源的問題" を示唆しているのが、<人口のゾンビ化> というセンセーショナルなキーワードでまとめ上げている 下記引用サイト記事:コラム:日本は「経済のゾンビ化」に備えよ/Reuters/2013.07.13 - 09:13 である。
とかく "経済学の論文" は、あーだこーだと風呂敷を広げまくり重箱の隅を突き、その挙句、主張したい論点が頓挫してしまいがちなのに対して、この "コラム" は、妙に説得力を持っている。
<ゾンビとは、生きてはいないが、死んでもいない存在だ。映画ファンにはおなじみだが、この「生ける屍」という考えは、人口統計学や経済学でも有用だ。「経済のゾンビ化」はあまり人目を引かないが、その影響は、金融政策や財政赤字、構造改革に匹敵するほど重要/ 多くの先進国では過去30─40年間、人口を維持できないほどの水準にまで少子化が進んだ。この傾向が最も顕著なのは日本 ...... 日本の人口面でのゾンビ化は人類史上、...... 最も劇的な変化になる可能性/ 経済のゾンビ化は、...... 最も顕著なのは、国内総生産(GDP)の伸びの大幅な減速だ。総人口や労働力から推測される数値よりも実際の落ち込み幅は大きい。/ ゾンビ化は始まったばかりだ。日本の40代の人口は20代より17%多い。この数字は10年以内に約40%に拡大する。険しい道を覚悟しておくべきだろう>
この記事に沿って言わしてもらうならば、ホントに "日本経済の再生" の戦略を深慮遠望する場合には、目先の次元での "金融政策の小細工(大細工?)" に奔走するのではなく、<人口のゾンビ化/国のゾンビ化/経済のゾンビ化/インフラのゾンビ化......> という、いわば "日本のゾンビ化パッケージ(?)" を漸次塗り替えていくための長期ビジョンが不可欠ではないのか! と。
コラム: 日本は「経済のゾンビ化」に備えよ/REUTERS/2013.07.13 - 09:13
By Edward Hadas
ゾンビとは、生きてはいないが、死んでもいない存在だ。映画ファンにはおなじみだが、この「生ける屍」という考えは、人口統計学や経済学でも有用だ。「経済のゾンビ化」はあまり人目を引かないが、その影響は、金融政策や財政赤字、構造改革に匹敵するほど重要と言える。
現在の人口動態上の傾向はよく知られている。多くの先進国では過去30─40年間、人口を維持できないほどの水準にまで少子化が進んだ。この傾向が最も顕著なのは日本だが、実際、日本の人口面でのゾンビ化は人類史上、...... 最も劇的な変化になる可能性がある。
...... 国家の生命力は奪われつつある。過去10年の間に、日本の20─25歳の人口は22%減った。移民をほとんど受け入れていないことを考えれば、日本の将来の人口動態を予想するのは難しいことではない。向こう20年でさらに22%減るだろう。
日本に比べれば、ユーロ圏の少子化傾向は緩やかに映る。過去10年間で20─25歳人口は5%の減少にとどまっている。欧州の一部では出生率は比較的高く、移民の流入が人口を増やしている。ただそれでも、欧州全体としては、ほぼ確実に人口のゾンビ化が待っている。
米国はゾンビに抵抗している。10年前に比べて20─25歳の人口は12%増えた。第2次世界大戦後のベビーブーム後に家族のサイズが急速に縮小したことによる影響で、向こう数年以内に一時的に落ち込む可能性はある。しかし、それ以降は若者の数は安定的に推移するはずだ。移民を含めれば、過去に比べてペースこそ鈍るものの、今後も増加が見込まれる。
経済のゾンビ化は、...... 最も顕著なのは、国内総生産(GDP)の伸びの大幅な減速だ。総人口や労働力から推測される数値よりも実際の落ち込み幅は大きい。国のゾンビ化とは、出生率が人口置換水準以上であれば経済活動に参加しているはずの若者の姿が消えることだ。新たに家庭を築き始める若年成人層が空白になる意味は大きい。
世帯形成に必要なのは、単純な衣食住だけにとどまらない。先進経済では、家や車のほか、発電所や送電線、道路、コンピューターや空港など、快適な現代生活を支えるインフラも必要だ。
インフラには設備投資が必要なため、家庭をスタートさせる世代は、人口の中で最もGDP集約的な存在と言える。若者世代が増えれば、消費を安定した状態に保つだけで大規模な投資が必要になる。若者世代が減れば、消費の拡大には国家的な負の投資が付いてくるかもしれない。それが日本で、そして恐らく欧州でも起きていることだ。私は、金融の混乱や貧弱な雇用政策と並び、インフラのゾンビ化こそが、2008年のリセッションからの回復の弱さを説明すると考えている。実際には、ゾンビ化を調整すれば回復はそれほど弱くないだろう。
人口動態の変化は、財政システムにも強い圧力をかける。政府は、増加する高齢者の年金や医療費を捻出するため、縮小する労働人口に頼らざるを得ない(今の高齢者の平均寿命は、彼らの親世代より長くもある)。財政赤字を避けるのは難しい。
預金者と消費者のアンバランスは、...... 金融政策立案者が新たな現実を把握していない時に生じる問題だ。非現実的に高い成長予測は、危険なまでに景気刺激的な金融政策の根拠になる。
労働市場に参加しようとする人より退出する人が多い点で、人口のゾンビ化は、雇用環境にはプラスになるというロジックもあるかもしれない。しかしながら、現実は違っている。今や先進国のほぼすべてで、人口が増加していた時代よりも深刻な失業問題が起きている。
それに対する私の解釈は、過去5年もしくはそれ以上の長期にわたる財政・金融システムの混乱により、あまりに多くの仕事が失われると同時に、あまりに多くの退職が先送りになったからというものだ。何か他の理由があるかもしれないが、エコノミストたちはゾンビ化にはほとんど注意を払っておらず、そのため、この問題に真正面から取り組んだリサーチも乏しい。
専門家たちは、国家の生命力低下が、景気低迷につながるかどうかの議論もなおざりにしている。
今のところ、欧州もしくは日本で、深刻なダメージを示す明確なサインは少ない。しかし、ゾンビ化は始まったばかりだ。日本の40代の人口は20代より17%多い。この数字は10年以内に約40%に拡大する。険しい道を覚悟しておくべきだろう。( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
参院選後には、"マヤカシの政治" から "トンチンカンな政治" へと急旋回して行くことが、まことしやかに推測されているようでもある。
本来、"政権" に対しては "チェック機能" が不可欠だというのが "常識" であるにもかかわらず、"ねじれ解消うんぬん" という屁理屈で "チェック無し政権" を目指そうというのだから、まことに先が思いやられる...... (2013.07.15)
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