米国、オバマ大統領が苦慮している "シリアへの軍事介入" 問題。その推移は不透明さを拭い切れない情勢だ。
そして、もし、これを契機にして "中東危機" がより深刻な事態へと滑り込むと、日本が被る打撃は、"原油価格の上昇" という "経済問題" に止まらず、現在進行形である "対・北朝鮮/対・中国" の緊張関係がより深刻化する可能性もあるという。
下記引用サイト記事:「シリア戦争」、日本襲う負のシナリオ 編集委員 秋田浩之/日本経済新聞/2013.09.03 - 07:00 は、
<原油価格が急上昇し、日本の景気の重荷になること>
もさることながら、
<日本が注意しなければならないのは、今回の米国の対応が、核開発を続ける北朝鮮や中国のアジア戦略などに及ぼす影響>
ではないか、と釘を刺している。確かに、そのリスクは決して小さくはないと思えた。
要するに、"現状のオバマ大統領のスタンス" を踏まえると、
<北朝鮮はそんな米国をみて、どう思うだろうか。『多少、危機をあおっても米国はアジアに介入できない』。勝手に、そう思い込むかもしれない。同じことは、尖閣諸島や南シナ海で強気に振る舞う中国にも当てはまる> という可能性につながりかねないというのだ。その結果、
<シリア介入で腰が引けぎみの米国の姿は、より強硬になるきっかけを北朝鮮に与えかねない/ 中国が米国の足元を見透かし、アジアで強気に出る可能性もある> というのだ。
さらに、
<緊迫した中東情勢が長く続く場合、米国のアジア戦略に狂いが生じ、日本にしわ寄せが及ぶ危険もある> と。つまり、
<中東危機が深刻になり、軍事、外交の精力をそちらに割かれるとなれば、アジア太平洋への軍事関与は足踏み> しかねず、
<米政府内で「米中協調論」が出てくる可能性 → 日本が埋没する恐れが増大> という流れもあながち否定できない、と......。
現状の日本の、アジアでの立ち位置が "不安定で緊張関係にある!" だけに、こうした一連の変動が引き起こされたならば、状況は混迷の度を深めることになりかねない......。
「シリア戦争」、日本襲う負のシナリオ 編集委員 秋田浩之/日本経済新聞/2013.09.03 - 07:00
シリアをめぐる緊迫した情勢が、お茶の間のテレビにも流れてくる。シリアに米仏などが軍事介入し、本格的な戦争になった場合、日本はどんな影響を受けるのか。「遠く離れた国のできごと」では済まされない負の連鎖が、押し寄せる危険もある。
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・9月2日日経朝刊1面「シリア攻撃、議会の承認求める、米大統領」
・9月2日日経朝刊2面「『米大統領、重い決意』首相」
・9月2日日経朝刊3面「米『独走』批判回避へ賭け、シリア攻撃、迷うオバマ氏」
・9月2日読売朝刊3面「米大統領、窮余の勝負、正当性議会頼み」今回の事態のきっかけは、シリアのアサド政権が内戦で化学兵器を使ったとされる問題だ。オバマ米大統領は軍事介入を決断し、米議会に承認を求めることにした。米議会の採決は9日以降になる見通しという。フランスも攻撃の選択肢を捨てていない。
米仏などが攻撃した場合、日本はまず、どこまで支持を表明するのか決めなければならない。国際世論の賛否が割れるなか、安倍政権は微妙な判断を迫られる。
だが、これはまだ序の口だ。問題は中東情勢がさらに緊迫した場合、実際にどんな影響が日本に及ぶのか、である。
まず容易に想像できるのが、原油価格が急上昇し、日本の景気の重荷になることだ。すでに原油価格は上がりだしている。
■北朝鮮や中国への影響に注意
それだけではない。日本が注意しなければならないのは、今回の米国の対応が、核開発を続ける北朝鮮や中国のアジア戦略などに及ぼす影響だ。
オバマ政権はこれまで、国内の世論をにらみ、シリアへの軍事介入には慎重だった。米世論調査によると、空爆反対は約4割にのぼり、賛成は20%台にとどまっている。アフガニスタン、イラクと続いた戦争の疲れが底流にある。
大統領権限だけで攻撃できるのに、オバマ氏があえて米議会の承認を仰ぐのは、そうしないと世論の理解を得られないと思ったからだろう。
「シリアが化学兵器を使った疑いが濃厚なのに、米国内では空爆への反対論が根強い。オバマ政権としてもちょっと空爆するだけで、シリアに深入りするつもりはない。北朝鮮はそんな米国をみて、どう思うだろうか。『多少、危機をあおっても米国はアジアに介入できない』。勝手に、そう思い込むかもしれない。同じことは、尖閣諸島や南シナ海で強気に振る舞う中国にも当てはまる」
日本政府の安全保障当局者はこう心配する。
ブッシュ政権当時の2003年、米国はイラクが大量破壊兵器を保有しているとして、国連決議抜きで攻撃し、フセイン政権(当時)を倒した。...... 「フセイン政権の結末を目の当たりにした北朝鮮は、『自分たちも攻撃される』と本気で恐れた」(米朝関係筋)。......
これと対照的に、シリア介入で腰が引けぎみの米国の姿は、より強硬になるきっかけを北朝鮮に与えかねない。
さらに気がかりなのは、中国の反応だ。米国は経済的には中国と切っても切れない関係にある。中国は国連安保理で拒否権を持つ、常任理事国でもある。そうしたカードをにぎる中国が米国の足元を見透かし、アジアで強気に出る可能性もある。
■米のアジア・太平洋への軍事関与、足踏みも
緊迫した中東情勢が長く続く場合、米国のアジア戦略に狂いが生じ、日本にしわ寄せが及ぶ危険もある。
「米国はアフガニスタン、中東(イラク)の戦争から足抜けできると思ったからこそ、アジア太平洋への軍事シフトを進めてきた。だが、中東危機が深刻になり、軍事、外交の精力をそちらに割かれるとなれば、アジア太平洋への軍事関与は足踏みしかねない」
日本政府内からは、こんな不安の声が聞かれる。
中国軍の増強に対応するため、オバマ政権は約2年前にアジアへの軍事シフトをかかげた。それを受け、オーストラリアへの米海兵隊の駐留を開始。フィリピンとも駐留拡大の交渉を進めているとされる。
こうした米軍のアジア関与は、中国軍の増強に直面する日本にとっても欠かせない前提だ。それが揺らぐとなれば、日本の安全保障戦略にも大きな痛手だ。
シリア情勢がイスラエル・パレスチナ紛争やイラン危機にも飛び火すれば、米政府内で「米中協調論」が出てくる可能性もある。そうなれば、日本が埋没する恐れは増す。
こうした筋書きがどこまで現実味を帯びるか。米国が攻撃に踏み切るかどうかも含め、まだ先は読めない。はっきりしているのは、シリア情勢が日本にとっても対岸の火事ではないということだ。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
何と言っても、"対米従属" 一辺倒の日本にとっては、米国の軍事戦略上の変化の一つ一つを、"丸呑み(?)" にする以外に選択肢がないかのようであり、その現状が実に情けなく思われる...... (2013.09.04)
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