"膝関節" の痛みに悩む中高年者は少なくなさそうだ。それを窺わせるかのように、TVコマーシャルでも、"膝関節" の痛みに効くとするサプリメント関連のCMが多数見受けられる。
歩いても座っても "痛みが走る!" だけに、ご当人にとってはいたたまれない悩みとなる。場合によっては、"外科手術" を視野に入れる方もおられるという。
今回、下記引用サイト記事 : 膝の模擬手術、術後1年で実際の手術と同等の結果/THE WALL STREET JOURNAL/2013.12.26 - 11:11 JST に着目した動機のひとつには、まさにこの点があった。
とともに、もう一つ、これとは別に、いわゆる<プラセボ(偽薬)> という観点の問題(下記記事でも触れられているが)が興味深い点なのである。
"プラセボ(偽薬)" というのは、"病が持つ心理的側面" に対して効果的に働きかけて、相応の治癒効果を発揮するとされる "ニセ薬" のことであり、決して世に言う "詐欺" まがいではなく、一つのまともな医学的アプローチと見なされている。
下記記事は、先ずは、以下のような調査結果を掲げている。
<膝関節軟骨を損傷した患者の一部の痛みなどの症状を、模擬手術が本物の手術と同程度に緩和することが、新しい臨床試験(治験)の結果で明らかになった/ フィンランドの研究者が手術を受けた患者と(模擬手術で)手術を受けたと信じ込まされた患者の2群を調べた結果、1年経過後に両患者群の改善に著しい差異は認めなかった> と。
ここから、"早合点" して、<模擬手術> も "プラセボ(偽薬)" と同様に、"患者の心理的側面" に大きく働きかけて "治癒力" を引き出す、と考えられなくもない......。
しかし、話はそれほどシンプルではなさそうなのである。
この調査結果を巡る医療関係者たちの反応は "一様ではない" というのである。
<これが意味するところはかなり深い/ この試験は侵襲性の低い手術である半月部分切除術をめぐり物議を醸す公算が大きい/ 半月部分切除術の有効性をめぐる決定的な結論を引き出すのは困難> とあり、結局、どうなのか? については明言を避けているごとき印象が漂うのである......。
有り体に言えば、"模擬手術" の "効果アリ!" 的結果が、"結局は、何を浮かび上がらせてしまったのか!" に尽きるのではないかと推定される。
つまり、従来、"半月部分切除術の手術" は、<(その)費用は3000〜6000ドルとされ、......米国の年間医療費のうち40億ドルを占めると推定> されるほどに、"医療界(整形外科)のドル箱" 的案件(?)であったものが、実は、心理的アプローチ(=模擬手術)の結果とさほど変わらない、同程度だったということになれば、医療界が困惑するのもムリならぬことなのかもしれない......。
膝の模擬手術、術後1年で実際の手術と同等の結果/THE WALL STREET JOURNAL/2013.12.26 - 11:11 JST
膝関節軟骨を損傷した患者の一部の痛みなどの症状を、模擬手術が本物の手術と同程度に緩和することが、新しい臨床試験(治験)の結果で明らかになった。最も一般的な整形外科手術の1つをめぐり議論が白熱しそうだ。
米国で毎年70万人もの患者が、膝の上部と下部のショック吸収の役目を果たす半月板という膝の軟骨の手術を受ける。この部位が損傷すると軟骨が部分的に緩み、医師はそれが関節の動きに干渉し、痛みやこわばりを引き起こすと考えてきた。
フィンランドの研究者が手術を受けた患者と(模擬手術で)手術を受けたと信じ込まされた患者の2群を調べた結果、1年経過後に両患者群の改善に著しい差異は認めなかった。
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フィンランドの試験に関与していないブリガム・アンド・ウィメンズ病院のジェフリー・カッツ氏は「これが意味するところはかなり深い」とし「半月板の手術に比較的小さな利点があるかもしれないが、それは短期的だ」と述べた。
この試験は侵襲性の低い手術である半月部分切除術をめぐり物議を醸す公算が大きい。半月部分切除術の費用は3000〜6000ドルとされ、この試験の論文執筆者らはこの施術が米国の年間医療費のうち40億ドルを占めると推定している。
試験のサンプルサイズ(標本の大きさ)は比較的小規模の146人だが、一部の医師によると、これによって半月部分切除術の有効性をめぐる決定的な結論を引き出すのは困難だ。
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この試験の論文執筆者の1人で、ヘルシンキ大学中央病院の非常勤講師テッポ・ヤルビネン氏は、研究論文が臨床慣行を変えるかどうかは不透明だと指摘した。これまでの治験では、半月板断裂と変形性関節症の両方の患者において身体的療法は手術と同程度に有効性があるとしていたが、多くの医師はいずれにしても手術を勧告し続けている。ヤルビネン氏は、「医師には自分が知っていることと信じていることを混同する悪い傾向がある」と指摘した。
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フィンランドの試験で対象となった患者は35〜65歳で、スポーツでの傷害など具体的な外傷ではなく、経時的に徐々に発現した半月板断裂を患っていた。断裂を確認するため関節鏡検査を実施したが、医師は対照群の患者の半月板は切除しなかった。患者は局所あるいは全身麻酔で施術中は寝ていた。対照群の患者は起きていて、医師は器具を膝の外部にしっかり押しつけることで手術のふりをし、患者は手術が完了するまでの時間、手術室に置かれた。臨床試験で実薬と外見で識別不可能なプラセボ(偽薬)を患者に与えるのと同様に、模擬手術は、外科的手術の有効性を精査するのに最も厳密な方法だ。研究者は、患者が治療を受けたという心理的恩恵の調整を目指している。それが試験結果をゆがめる可能性があるためだ。
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( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
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