聞き慣れた言葉、"免疫力"! この "自然メカニズム" が、今、改めて注目される理由について、多くを語る必要はなさそうな気がする。
今日の "タイトル" の含意を起点にして、わずかでも "免疫" に関する今日的事情を垣間見てみるならば、現代の医療/医学に占める "免疫(力)" 問題の比重の大きさが自ずから了解されるのではなかろうか。
もちろん、"免疫(力)" 問題をことさら大きく浮かび上がらせているのは、国民の二人にひとりが狙い撃ち(?)にされている "がん" 罹患率の脅威であろう。
さらにその治療法の代表格とされる "放射線治療、抗がん剤治療" のいずれもが、"免疫(力)" とは対極的な位置付けにある治療法であるばかりか、構造的に、"免疫(力)" を "犠牲" とせざるを得ない点も見過ごせない点かと思われる。
さて、下記引用サイト記事 : 免疫、健康に一役 異物を攻撃する「自然免疫」に個人差 アピタル編集部/朝日新聞/2014.01.25 は、こうした現代の重要課題となった "免疫(力)" の問題について、元来が複雑な医学知識を、実に要領良く整理し叙述していると思えた。
ただ、<免疫、健康に一役> という表題での表現は、人類が "数百万年" の歳月をかけて培ってきた "免疫メカニズム" に対しては、やや過小評価しているような気がしないでもない......。要点は以下のとおり。
<免疫力が高い・低いといった言葉で表現されるものは、『NK活性』という指標で説明できます/ 白血球の一種であるリンパ球のうち「ナチュラルキラー(NK)細胞」が主役になる「自然免疫」という仕組み/ 20歳前後に最も高くなり、その後は加齢と共に値が下がっていく/ 同じ人でも日によって値が上下する点/ 最もマイナスの影響が大きいのがストレス/ 食べ物でNK活性が上がったというデータもある/ 免疫細胞が最も多く集まる腸で、吸収されたヨーグルトの成分がNK細胞を活性化させた>
<相手を正確に見分けて適切な攻撃を加えるリンパ球/ T細胞/ 大量の外敵が体内に侵入して自然免疫では手に負えなくなると、この外敵だけ攻撃する能力を持ったT細胞が億単位まで急激に増加、一斉攻撃を開始/ T細胞は、別のリンパ球「B細胞」に情報を渡す。B細胞は外敵の動きを封じる「抗体」と呼ばれるたんぱく質を作り出す/ 麻疹(はしか)などの病気に2回以上かかりにくくなる理由だ/ 予防接種・獲得免疫>
<免疫が戦うのは「外敵」だけではない/ がん細胞/ 1日当たり新たながん細胞は約5千個もできるといわれている/ このがん細胞が「がんの芽」だ/ 増えて集まるとがんになる/ リンパ球が早い段階で、がん細胞を見つけて殺してしまうので、ほとんどの場合、がんにならずに済んでいる>
<一方で、免疫が過剰に働くことで起きる問題もある/ 何らかの理由で過剰な反応が出ると花粉症などのアレルギー症状/ また、間違って自分の体の細胞を攻撃してしまうのがリウマチなどの自己免疫疾患/ 「衛生仮説」と呼ばれる考え方 ...... 感染症が減った。病原体にさらされることが減り、獲得免疫の働く機会も減ってしまった。それが、アレルギー疾患の増えた原因 ......> とある。
"免疫" は、<健康に一役> どころではなくて、人間が生存していく上で不可欠な役割を果たしているものと考えられそうだ......。
免疫、健康に一役 異物を攻撃する「自然免疫」に個人差 アピタル編集部/朝日新聞/2014.01.25
【田之畑仁】 免疫力を高めよう――。よく耳にする言葉ですね。ウイルスなどの病原体から守り、病気を防いでくれる体の仕組みが免疫ですが、その能力を高めるって本当にできるのでしょうか? 探ってみました。
■ストレスで低下/特定の食べ物で上昇 ピークは20歳前後
「免疫力が高い・低いといった言葉で表現されるものは、『NK活性』という指標で説明できます」。順天堂大の竹田和由(かずよし)准教授(免疫学)が、そう説明する。
白血球の一種であるリンパ球のうち「ナチュラルキラー(NK)細胞」が主役になる「自然免疫」という仕組みだ。このNK細胞は、体の中の異物を「外敵だな」と見分け、最初に攻撃を仕掛ける。
早い攻撃のために外敵を詳しく見分けている訳ではなく、未知の微生物やウイルスが相手でも即座に対応する能力を持つ。しかし、どの程度正しく反応できるかどうかに個人差があるという。
その能力の差を「NK活性」という尺度で評価する。具体的には、NK細胞に特定のがん細胞を与え、4時間でそのうちの何%を殺すことが出来るのかを見ているのだ = イラスト。
この値が高ければ「免疫がよく働いている」と考えられ、風邪などの一般的な病気にかかりにくくなる傾向がある。「免疫力が高い」といわれている状態に相当する。通常40%前後の値を示す人が最も多い。また、20歳前後に最も高くなり、その後は加齢と共に値が下がっていく。
竹田さんが注目するのは、同じ人でも日によって値が上下する点だ。「最もマイナスの影響が大きいのがストレス。試験に落ちた、異性に振られたといった出来事で値が大きく変動する。人によっては20ポイントも低下することもあります」という。
食べ物でNK活性が上がったというデータもある。山形県と佐賀県の高齢者計142人が対象。特定の乳酸菌入りヨーグルトと牛乳を飲食するグループに分けて8~12週間にわたって調査。ヨーグルトを食べたグループはNK活性が上昇して風邪を引きにくくなったという。免疫細胞が最も多く集まる腸で、吸収されたヨーグルトの成分がNK細胞を活性化させたと説明できるという。......
竹田さんは「免疫の仕組みが遺伝子レベルで次第に明らかになってきた。人が健康に暮らすためにはどうすればいいか、根拠に基づいた方法が分かる時代になってきました」と語っている。
■予防接種、抗体を応用
私たちの体には、相手を正確に見分けて適切な攻撃を加えるリンパ球がある。「T細胞」だ。攻撃する相手によって数え切れないほどの種類に分かれ、普段はそれぞれ100個程度が血管やリンパ管を循環している。
大量の外敵が体内に侵入して自然免疫では手に負えなくなると、この外敵だけ攻撃する能力を持ったT細胞が億単位まで急激に増加、一斉攻撃を開始する。
さらにT細胞は、別のリンパ球「B細胞」に情報を渡す。B細胞は外敵の動きを封じる「抗体」と呼ばれるたんぱく質を作り出す。次に同じ外敵がやってきた時、その情報を記憶していたB細胞が素早く抗体を作り出す。麻疹(はしか)などの病気に2回以上かかりにくくなる理由だ。
この仕組みを利用したのが予防接種。毒性をなくしたり弱めたりした病原体をワクチンとして体内に取り入れることで抗体が作られ、その病気にかかりにくくなる。
外敵の侵入によって新たな防御機能が作られる<ことから、この一連の仕組みを「獲得免疫」と呼んでいる。
■過剰反応でアレルギーに
免疫が戦うのは「外敵」だけではない。人間の体には約60兆個の細胞があり、古いものから順に新しい細胞と常に入れ替わっている。ときおり遺伝子のコピーミスが起こり、その際に生まれるのが、がん細胞だ。1日当たり新たながん細胞は約5千個もできるといわれている。
このがん細胞が「がんの芽」だ。増えて集まるとがんになる。リンパ球が早い段階で、がん細胞を見つけて殺してしまうので、ほとんどの場合、がんにならずに済んでいる。
一方で、免疫が過剰に働くことで起きる問題もある。花粉やほこりなどの異物は本来、病気の原因にならないはずだが、何らかの理由で過剰な反応が出ると花粉症などのアレルギー症状になる。また、間違って自分の体の細胞を攻撃してしまうのがリウマチなどの自己免疫疾患だ。
免疫の働くバランスを巡っては「衛生仮説」と呼ばれる考え方がある。先進国では衛生環境が向上し、感染症が減った。病原体にさらされることが減り、獲得免疫の働く機会も減ってしまった。それが、アレルギー疾患の増えた原因ではないかというものだ。
「もはや不衛生な環境に戻ることは出来ません。だったら、他の方法を探るべきです」と話すのは、斉藤隆・理化学研究所統合生命医科学研究センター副センター長。......
「遺伝子解析技術の進歩で特定のT細胞が増える仕組みがわかってきました。さまざまな役割を持つT細胞をバランスよく増やすことが課題ですが、そうした効果を持つ食品や乳酸菌を探す研究も進んでいます」
(朝日新聞 2014年1月24日掲載)
現代の医療/医学に占める "免疫(力)" 問題の比重の大きさを、今一歩詳細に知りたい場合、
◆ 『現代免疫物語―花粉症や移植が教える生命の不思議 (ブルーバックス) [新書]』岸本 忠三/中嶋 彰(著)、講談社 (2007/4/20)
という新書版が、分かり易いのでお薦めしておきたい...... (2014.01.26)
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