今、多彩な "iPS細胞(人工多能性幹細胞)" 研究とその成果、および実用化アプローチが目覚ましいかたちで展開している。そして、今年以降の "研究計画/目標" も目白押しとなっているようである。
それらの動向の各々から目が離せないとともに、広く全体の流れを視野に入れておくことが必要なのかもしれない。
下記引用サイト記事 : iPS治療、実用化へ歩み着実 研究進展に期待/朝日新聞/2014.01.15 - 22:29 は、最新の研究動向と、今後に予定された計画などが分かりやすく解説されている。
<京都大の山中伸弥教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は今年も、研究の進展に注目が集まりそうだ。iPS細胞からつくった実用レベルの血小板ができるほか、目の組織が世界で初めて患者に移植される。新しい治療技術の開発も成果をあげつつある/ iPS細胞による再生医療で最も実用に近いとみられているのは、けがをしたときなどに出血を止める血小板づくりだ。今春にもこの細胞をもとに人の治療に使える品質の血小板が作製される/ 理化学研究所などが昨年始めたiPS細胞の臨床研究は今年、世界初の人体への移植の段階に進む。目の難病「加齢黄斑変性症」の患者に、iPS細胞から育てた色素上皮を移す手術は夏にも実施される見通し/ iPS細胞を使った再生医療はこのほか、パーキンソン病や角膜のやけどなどを対象とした臨床研究の計画......脊髄(せきずい)損傷の患者に神経幹細胞を移植する研究を準備する慶応大も>
<iPS細胞の技術をほかの生命科学の技術と組み合わせて難しい病気に挑もうという研究も注目/ 「iPS遺伝子治療」とでも呼べそうな技術/ 遺伝子の異常が原因の患者からiPS細胞をつくり、遺伝子異常を「修正」したうえで、目的の細胞に育てて患者に戻す/ 筋ジストロフィー・遺伝性貧血の治療......>
<もう一つ注目されるのは「iPS免疫療法」と呼べそうな手法/ がん細胞やエイズウイルスに感染した細胞を攻撃する「T細胞」という免疫細胞からiPS細胞をつくり、もう一度T細胞に育てる手法/ この方法が発展すれば、がんや感染症の治療にiPS細胞を活用できる可能性があり、治療の対象となる人が大幅に増える>
<iPS細胞を実際に病気の治療に役立てるには、安全で質の高い細胞を効率よく作る技術も欠かせない/ 山中さんが所長をつとめるCiRAは、治験にも使える高品質なiPS細胞の外部機関への提供を14年度中に始める方針/ 「より安全なiPS」への試み/ 人工たんぱく質を使う大量培養システム/ より高品質とされる「ナイーブ型」と呼ばれるiPS細胞の作製>
と、まさに多面的な研究開発が現在進行形の状況にあり、実用化への歩みもまた着実だと期待されている......。
iPS治療、実用化へ歩み着実 研究進展に期待/朝日新聞/2014.01.15 - 22:29
京都大の山中伸弥教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は今年も、研究の進展に注目が集まりそうだ。iPS細胞からつくった実用レベルの血小板ができるほか、目の組織が世界で初めて患者に移植される。新しい治療技術の開発も成果をあげつつある。
■ 血小板を作製
iPS細胞による再生医療で最も実用に近いとみられているのは、けがをしたときなどに出血を止める血小板づくりだ。今春にもこの細胞をもとに人の治療に使える品質の血小板が作製される。
......
京都大の江藤浩之教授と東京大の中内啓光教授らは2011年、iPS細胞から育つ途中段階で、凍結保存もできる細胞を増やしながら培養することで、血小板を大量生産する技術を開発した。......
理化学研究所などが昨年始めたiPS細胞の臨床研究は今年、世界初の人体への移植の段階に進む。目の難病「加齢黄斑変性症」の患者に、iPS細胞から育てた色素上皮を移す手術は夏にも実施される見通し。......
iPS細胞を使った再生医療はこのほか、パーキンソン病や角膜のやけどなどを対象とした臨床研究の計画が進んでいる。
脊髄(せきずい)損傷の患者に神経幹細胞を移植する研究を準備する慶応大では、...... 安全性をより高めるための検討を続けている。 ......
■ 他療法と組み合わせ
iPS細胞の技術をほかの生命科学の技術と組み合わせて難しい病気に挑もうという研究も注目される。
「iPS遺伝子治療」とでも呼べそうな技術がその一つ。遺伝子の異常が原因の患者からiPS細胞をつくり、遺伝子異常を「修正」したうえで、目的の細胞に育てて患者に戻す。ほぼ無限に増やせて遺伝子の操作がしやすいiPS細胞の特徴を活用する。
京都大と広島大のチームは昨春、筋肉が衰えていく筋ジストロフィーの患者からつくったiPS細胞の遺伝子異常を修復し、筋肉に変えたところ、遺伝子が働き出したと報告した。将来、こうして修復したiPS細胞を筋肉のもとになる細胞にして患者に戻すといった治療法が考えられる。ほかの病気での試みも昨年報告された。
iPS遺伝子治療は07年、米国のチームが遺伝性貧血の治療にマウスで成功したと報告、関心が高まった。山中さんは昨年、専門誌での論考でこの報告を「iPS細胞を介した再生医療のパーフェクトモデル」と評価した。
もう一つ注目されるのは「iPS免疫療法」と呼べそうな手法だ。
がん細胞やエイズウイルスに感染した細胞を攻撃する「T細胞」という免疫細胞からiPS細胞をつくり、もう一度T細胞に育てる手法を昨年1月に理化学研究所と東大のチームがそれぞれ発表。体内では数が限られるT細胞を体外で大量につくる道が開けた。T細胞は寿命も短いが、iPS細胞を経たT細胞は生まれたばかりの元気な状態に「若返った」という。
この方法が発展すれば、がんや感染症の治療にiPS細胞を活用できる可能性があり、治療の対象となる人が大幅に増える。
■ 安全性と効率追求
iPS細胞を実際に病気の治療に役立てるには、安全で質の高い細胞を効率よく作る技術も欠かせない。
山中さんが所長をつとめるCiRAは、治験にも使える高品質なiPS細胞の外部機関への提供を14年度中に始める方針だ。移植しても拒絶反応を起こしにくいタイプの人から協力を得てつくったiPS細胞のストックを活用する。
......「より安全なiPS」への試みはいまも続く。
また京大や大阪大のチームは最近、従来の動物由来成分のかわりに人工たんぱく質を使う大量培養システムを開発した。移植用の心筋や神経をつくるには、安全な大量培養技術が前提になる。さらに海外では昨年、より高品質とされる「ナイーブ型」と呼ばれるiPS細胞の作製が報告された。
技術は着実に進歩しているが、山中さんは昨年末の朝日新聞の取材に「難病の創薬に向けた取り組みの遅れ」を指摘した。
...... 「ノックアウトマウスという遺伝子改変技術が広く普及しているように、iPS細胞を研究ツールとしてごくふつうに使ってもらえるようにしたい」と山中さんは話した。
海外では、製薬会社がiPS細胞からの心筋で>薬の毒性を調べる試みを本格的に進めているとされる。うまくいけば、副作用のチェックがより効率化し、薬の開発コストが大幅に下がる可能性がある。......(編集委員・田村建二、小宮山亮磨、阿部彰芳)
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
いずれの研究動向も "甲乙をつけ難い重要さ" を持つと思われる。が、その中であえて一つ注目するとしたならば、<がん細胞やエイズウイルスに感染した細胞を攻撃する「T細胞」という免疫細胞からiPS細胞をつくり、もう一度T細胞に育てる手法> であろうか。
"がんや感染症" の治療に奏功すると考えられている「iPS免疫療法」と呼べそうな手法 に大きな期待を寄せてみたい...... (2014.01.17)
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