今や、"老いと寿命" という命ある者にとっての "宿命的問題" は、身体の "細胞の再生能力" の問題として議論されるようになったようだ。
以下のように、"老化" は、"免疫細胞/T 細胞" の "老化" = "免疫老化" によってこそ引き起こされている、という説は実感的にもリアリティを持っていそうである。
◆ 参照 当誌での "老い"、"免疫老化" 関連記事
(1) <免疫細胞こそが老いや病を引き起こす大きな要因だとする衝撃の事実!身体を守るはずの免疫細胞が逆に身体をこわしていく。/ 一つ間違えると、免疫細胞の暴走によって "サイトカイン" がところ構わず撒き散らされると身体中が免疫細胞の攻撃対象と化す→全身が老いてゆく最大の原因!/ 免疫細胞たちのリーダー "T 細胞" はなぜ暴走してしまうのか?/ "胸線" 内で、"T 細胞" のアンテナが厳しく選別され、アンテナの性能の悪いものは "T 細胞" ごと壊される。 生き残る"T 細胞" はわずか5%以下!→厳しい選別を乗り越えてはじめて、"T 細胞" は、司令塔として実戦に向かう/ ところが "胸線" :思春期を過ぎるとほとんどなくなってしまう!(宿命として維持できない)/ つまり、"胸線" が無くなって、新しいT細胞の補充が不可能になると、古くなった "T 細胞" は次第に判断力を失っていく!/ "T 細胞" は、残ったものでやりくりするしかない。 思春期以降は、細胞からの十分なケアは期待できない! これこそ細胞が私たちに強いている宿命!/ この宿命は、今、大きな転換を迎えている!/ 人工 T 細胞(←iPS細胞) 老化によって新しい "T 細胞" ができなくなったのを、iPS細胞化して再生する 無限に増やせる!/ こうしてつくられた "T 細胞" には大きなメリットがある。 異物を識別するアンテナはすでに "胸線" でチェック済みのため、すぐに実戦でつかうことができる。> ( 番組 NHKスペシャル『人体ミクロの大冒険 あなたを守る!細胞が老いと戦う』紙面要約!/当誌 2014.04.09 )
(2) <老化によって、病原体などに対する獲得免疫応答が著しく低下するとともに、過剰な炎症反応が引き起こされます。それにより慢性的な炎症状態が誘導され、最終的に加齢に伴う慢性炎症疾患(関節リウマチなどの自己免疫疾患)の発症増加につながると考えられています。この現象は、免疫老化と呼ばれ、免疫系の司令塔であるヘルパーT細胞の機能的な劣化が一因だと考えられていましたが、そのメカニズムは不明でした/ 山下教授らは、マウスでメニン(Menin)というたんぱく質が、ヘルパーT細胞の老化を制御する鍵分子として働くことを明らかにしました。......> ( "免疫細胞(T細胞)"の老化!免疫力低下ばかりかその"誤作動"が老年病などの引き金に!/当誌 2014.04.08 )
今回注目する下記引用サイト記事 : 死にゆく人の血液のなかで起きていること/WIRED/2014.05.05 - MON は、"死/寿命" は、もともと備わっていた "細胞(幹細胞)" の "減少/枯渇" によって導かれているのではないか、と解説しているのである。
<年齢とともに幹細胞のストックが減少し、枯渇して、古い組織の代替が不可能となる。これが、人間がいつか死んでしまう原因なのだろうか。/ オランダ人女性ヘンドリック・ヴァン・アンデル・シッパーは、115年以上を生きた。そして死に際し、科学のための献体に応じた/ 科学者たちが解き明かしたかったのは、ふたつの問題 このように長寿で、相対的に健康問題とは事実上無縁だった生涯の秘密がどこにあるのかということ 肉体が生命活動を止める理由を解明すること/ 年齢とともに、消耗して死んだ組織の交替や再生の能力が使い尽くされるのだ。造血幹細胞のような幹細胞の、老化した組織を補う再生能力がなくなる/ 死の少し前にこの女性に対して行われた血液分析 血液中を循環する白血球が、わずかふたつの幹細胞のみから生み出されていた 大部分は、彼女の長い生涯の間に死滅していた/ 白血球のテロメア──染色体の末端部で、その長さは細胞の老化とともに減少する──が、ほとんど分裂しない神経細胞のものよりも約17分の1だった/ 私たちヒトは、約20,000の造血幹細胞をもって生まれる どんな時でも、約1,000の幹細胞が血液の成分を作るために活動 この細胞のストックが、人生を過ごすなかで枯渇していく> とある。
つまり、"老いと寿命" の、その正体は、ヒトが避けることのできない "幹細胞の枯渇!" に尽きることを直視しているわけである。
ただ、医療技術の進展によって益々 "まことしやか(?)" になりつつある "代替幹細胞の注入" という "延命策(?)" についても言及している点が注意を引く。
<この研究から考えられることは、(恐らくは)年齢によって生じる幹細胞の困窮化とその後の枯渇が、若いうちに採取した幹細胞の注入によって阻止できるかもしれないということ/ もっとも、機能するとしても、これが可能なのは血液に対してのみだろう> と......。
死にゆく人の血液のなかで起きていること/WIRED/2014.05.05 - MON
年齢とともに幹細胞のストックが減少し、枯渇して、古い組織の代替が不可能となる。これが、人間がいつか死んでしまう原因なのだろうか。
TEXT BY ANNA LISA BONFRANCESCHI
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI
WIRED NEWS (ITALIA)
aging process/Shutterstock
1890年生まれのオランダ人女性ヘンドリック・ヴァン・アンデル・シッパーは、115年以上を生きた。そして死に際し、科学のための献体に応じた。彼女の体をきっかけに科学者たちが解き明かしたかったのは、ふたつの問題だ。まず、このように長寿で、相対的に健康問題とは事実上無縁だった生涯(とくに認知症、心臓・血液循環に関して。ガンについてはそう無縁ではいられなかったようだが)の秘密がどこにあるのかということ。そしてもうひとつは、肉体が生命活動を止める理由を解明することだ。
先日、この研究の結果が「Genome Research」で発表された。結果がどのようなものか見てみよう。
つまりは、こういうことだ。「New Scientist」も報じているように、年齢とともに、消耗して死んだ組織の交替や再生の能力が使い尽くされるのだ。造血幹細胞のような幹細胞の、老化した組織を補う再生能力がなくなる。
ヘンドリック・ヴァン・アンデル・シッパーに起きたのは、まさにこれだった。実際、死の少し前にこの女性に対して行われた血液分析は、血液中を循環する白血球が、わずかふたつの幹細胞のみから生み出されていたことを示している。科学者たちが指摘するように、大部分は、彼女の長い生涯の間に死滅していたのだ。
研究者たちはさらに、白血球のテロメア──染色体の末端部で、その長さは細胞の老化とともに減少する──が、ほとんど分裂しない神経細胞のものよりも約17分の1だったことも明らかにした。
この点に関して、研究のリーダー、アムステルダム自由大学医療センターのヘンヌ・ホルステーグは、「私たちヒトは、約20,000の造血幹細胞をもって生まれると考えられています。そしてどんな時でも、約1,000の幹細胞が血液の成分を作るために活動しています」と説明。さらに、この細胞のストックが、人生を過ごすなかで枯渇していくことを付け加えた。
科学者たちはまた、この100歳超の女性の血液の中において、細胞に存在する変異が、細胞の健康にとって無害だったことも発見した。これは、あたかもヘンドリックが有害な変異を回避して修復するのに非常に効果的なシステムをもっていたかのようだった。
この研究から考えられることは、(恐らくは)年齢によって生じる幹細胞の困窮化とその後の枯渇が、若いうちに採取した幹細胞の注入によって阻止できるかもしれないということだ。こうした細胞は、変異を免れているはずで、まだその後長い分裂能力を持ち、テロメアが長い──。
もっとも、機能するとしても、これが可能なのは血液に対してのみだろうというのが研究者の結論だ。
上記記事で着目されていた "幹細胞の減少/枯渇!" という "宿命的" だと見なされていた問題が、今や、"iPS細胞" による応用研究の進展に伴って、現代医学・医療技術の射程範囲に入ってきた、というのが現状なのであろうか...... (2014.05.08)
コメントする